第4話 野宿
玄関を開ければ、まず妻が出迎え続いて娘が「おつかれ様」と笑顔で労を労ってくれるのが日常だ。だが背広もシャツも汚れて酒臭く、おまけに顔が腫れている。開口一番「あなた!? 一体どうしたの?」と言われるに決まっている。「ちょっと若者に絡まれて金を取られただけだよ」それだけなら笑って終ることだ。
だが今回は明らかに違う。その後に続く言葉を言い出せないだろう。
家のローンがたっぷり残っている。子供達は高校生と大学生。この学費とローンはどうすれば良いのだ。
これからの生活だってある。今の真田にはどうする事も出来ない。
「なぁに新しい仕事を探すから心配するなと」そう言える訳がない。
まったく働くあてがない。ましや五十歳では聞こえが悪い。そんな事を考えると家路に足を向けられなかった。ビジネスホテルに泊まるにも金を取られたばかりだ。考えれば警察にも届けなかった。取られ殴られ損だ。警察に届けて色々と聞かれるだろう。
「はい、リストラに合い自棄酒を飲み泥酔している処を襲われました」
そんな事を見っとも無くて言えない。余計に惨めになるだけだった。
結局、駅近くの公園で野宿した。季節は五月、少し夜は肌寒いが我慢すれば一夜を過ごせる。野宿はしたが、やはり一睡も出来ずに朝を迎えた。
時刻は朝七時過ぎ、普段なら今頃は家で朝食を食べている時間だ。
つづく
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