第6話 ラクビー部の先輩

 結局は妻に電話出来なかった。またメールが入った。また家族からだろうと気が重くなる。だが違った。佐竹となっていた。真田はピンと来た。その送り主は佐竹先輩であった。普段はメールじゃなく直接電話をするのに、今日に限ってなんだろうと思った。

 内容は「すぐ連絡をくれ」それだけだ。

 真田は大学時代の先輩でもあり、今は同じ会社に勤め部署は違うが営業二課の課長である。佐竹は課長五十二歳であり、彼とは大学のラグビー部でも二年間一緒だった。会社でも仕事帰りに良く飲む、酒飲み仲間でもあった。それは今でも続いている。真田は続いて佐竹の携帯に電話を入れた。

 真田が、おはよう御座いますと言い終わらぬ内に、馬鹿野郎と怒鳴られた。


「お前なぁ、なんで俺にすぐに相談しないんだ」

「先輩……知っていたのですか?」

「当たり前だ。いま何処に居るんだ。家に電話したが帰って来てないと奥さんが心配して居たぞ。家族の心配は分かるが一人で悩んでも解決しないぞ。まぁいい、今夜会おう。分かったな」

 どうも佐竹を前にすると、大学時代の先輩後輩に戻ってしまう。

 ラグビー部では先輩後輩は絶対だったから、今も、つい頭が上がらないが、それだけに面倒見もいい良き先輩である。

 佐竹は既に全部お見通しのようだ。佐竹は大学時代ラガーとしてその名は知れ渡っていた。その一流ラガーの勢いで人生を猛進している。次期営業部長の噂があり、言わばエリートコースを進む男だ。


つづく

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