第12話 23主催ツーリングその6

23「あのな、80キロは80キロやねん。言うてる意味わかる?」

私「分かるような分からんような…」

23「…分かってないな」

私「んー、分かりません」

23「80キロで走るバイクをコントロールするのに、場所や状況は関係ないねん。どんなところでも80キロは80キロとしてコントロールせなあかんねん。それがたとえ高速道路でも、渋滞する下道のすり抜けであっても、今みたいな初めて走る峠道でも、おんなじや」

私「…」

23「お前がさっきの峠道を怖いと感じたのは、あの速度で走るバイクと自分をコントロールできてなかったからや。まぁでも怖いと感じるだけでもえらいと思うぞ。自分がコントロールできてないことを気づきもせん奴のほうが多いからな。」

23「快適に流れる高速道路で出す80キロも、渋滞のど真ん中をすり抜ける80キロもやってることは同じや。普通の感覚やとすり抜けの方が危ないと思うよな。じゃあ何が違う?」

私「……危険に対する時間的な余裕ですか?」

23「当たりとも言えるし、はずれとも言える」

私「?…分かりません…」

23「簡単や。どっちのシチュエーションでも目潰って走れるか?」

私「そんなん怖くてでけませんよ!」

23「やろなあ。俺もよーせんわ(笑)どっちのシチュエーションでも目潰って走ったらいずれ事故るよな。確実に。時間に差があるだけや。」

23「事故はな、迫ってくる危険に目を瞑ってるやつが喰らうねん。忘れんな。仕事でもそうやからな。」

「そこに不運とかないから。道の上での生死は運では決まらん。どんなに傍から見てアホな運転に見えても、そいつが危険に対してちゃんと目を開けてたら事故にならん。逆にどんなにお上品な運転してても、目潰ってたらアウト。最悪一発退場やな。この世から。」



正直言い返したい気持ちも少しはあったが、23のキャリアを考えると説得力がありすぎた。23はその20年以上のバイク便キャリアの中で一度も事故を起こしていないのだ(違反もしていないとの噂だったが、後でご本人が否定された)。

私は23主催のこのツーリングで、公道における安全運転とはなんなのか、深く深く考え出すのだった

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