過去よりも…

「航平さん、ちょっとご相談が……」


ストレートにプレゼントに迷っていることを伝える。初対面なのに図々しいお願いではあるが、航平さんは面倒くさがったりもせず頷きながら聞いてくれた。


「まず最初に言っておきたいのは、六花ちゃんからの贈り物なら何でも喜ぶと思うよ」

「そんな感じはしています」

「だからこそ悩むところなんだよね」


分かるよ、と笑ってくれる。


「あいつのことをよく想ってくれてお兄さんは嬉しいよ」

「本当のお兄さんみたいですね」

「そうだね。あいつの兄貴があんまり兄らしくないから、俺が3兄弟の長男みたいなものだよ。隣に住んでいた頃はよく一緒に飯も食ったし、兄貴と喧嘩したら避難しに来てたし」


懐かしむ様子はとても楽しそうだ。


「話がそれちゃったね。うーん、お兄さんこら出来るアドバイスは1つかな」


顎に手を当てながら、ちらっと白雪くんの方を見た。つられて見てみると菜乃ちゃんと何やら白熱しているようだった。あれ? 私の寝相の話をしているようなのは気のせいだよね?


「お揃いのものが喜ぶと思う。アクセサリーとか学校で使うものとか何でも良いから、ペアになるもの」

「お揃い」

「あいつは形で見えるものに安心するからさ」

「なるほど! ……ん? 安心?」


航平さんはしまったという表情だった。嘘がつけない人らしい。


「……あー、まあ、その……過去に恋愛関係でいろいろあったみたいなんだよ。六花ちゃんが聞いても嫌な気持ちになるだけだよね」


申し訳なさそうな様子が子犬のようだった。大人の男の人なのに可愛い。


「いえ! 白雪くんほどのお顔なら100や200の恋愛トラブルあると思うんで!」

「いや、さすがにそこまではないよ!」


面白い子だねーと言われた。なぜだ?


「私は恋愛初心者なんですけど、白雪くんにも同じであって欲しいなんて思っていません。過去に嫉妬してもどうにもならないし」


過去に何人の彼女がいたのかとか話題にしたこともないけど、あの顔で何もなかったなんてことは絶対にないだろう。

今の彼が「好き」と言うのが私ならそれだけでいい。


「航平さん、ありがとうございます。サプライズで何か贈ろうと思ったけど、今度のデートで一緒に選ぼうと思います。いろんな話をしながら選んで、白雪くんの好きなものを知りたい」


それもまた思い出に残るだろう、その方がいいと思った。きっと1人では出せなかった結論だ。


「何を選んだかまた教えてよ。俺もあいつが選ぶものまでは分からないから、予想を考えておく」

「はい、楽しみにしておいてくださいね」


航平さんがびっくりするものになるのか、予想どおりのものになるのか、私もわくわくしてきた!


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