欲張りになっていく

もうすぐ白雪くんとの交際は1ヶ月を迎える。自室のカレンダーを見つめて私は唸っていた。


“記念日のデート楽しみだね”


とろけそうな笑顔を思い出して、頬が熱くなる。1ヶ月かけてあの顔に馴れるどころか、ドキドキすることが増えたと自覚している。この心境の変化が擽ったい。


先日のお宅訪問の時は様子がおかしかったけど、あの後は普通に勉強をして帰った。

いつか理由を話してくれたらいいなと思っている。


“りっちゃん、好き”

“今日も可愛い、大好き”


あの日から明らかに「好き」と言葉にされることが増えた。

あんなイケメンに好意を寄せられて悪い気がする女の子はいるのだろうか?

すっかり絆されてるね、なんて友達に笑われてしまった。


白雪くんは基本的に私に甘いんだと思う。優しいなと思う行動は多いし、とてもよく見てくれていると思う。

少しでも困っていたらすぐに気付くし、助けてくれる。面倒くさそうな様子はおくびにも出さないので、いい人過ぎて心配にもなる。


“りっちゃん”


呼ばれることにも慣れた名前。もっと呼んで欲しいと思う。あの笑顔で、あの優しい声で……。


「私も好きって言ってみたい……」


彼がどんな顔を見せてくれるのか、そればかり最近考えている。

記念日のデートで伝えようと思う。まだ小さく芽生えた気持ちでも良いのなら……。


「あとは何をプレゼントするか、だよなぁ」


友達に記念日には何か贈るべきだとアドバイスされたけど、決めかねてずっと悩んでいる。

白雪くんの好みとか知らないんだよね。何が欲しいんだろう?


“お願いしたいことがあるんだけど、いいかな?”


アプリを開き、白雪くんへのメッセージを入力する。

彼を知るために、私はある作戦を考えていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る