沼
踏み込んで理由を聞くのは違うかな。
私の好きなものはみんなも好き!なんてことはない。好みは千差万別で、白雪くんが好きじゃないというのも大事な意見だ。
様子は気になるけど、楽しかった時間を変な空気にもさせたくない。
「話は変わるけど、寄りたいところがあるから行ってもいいかな?」
「もちろん」
微笑みを返してくれたのでホッとする。
話題を反らせることには成功した。
「どこに行きたいの?」
「ゲームセンター!」
「ゲーセン?」
「今日の思い出にプリクラを撮って貰っても良いでしょうか?」
顔の前で手を合わせる。
人生初デートのプリクラは今日だけしか撮れない。こんなイケメンと並んで撮ることなんてこの先何十年生きても無いと思う。
「いいよ。俺にもデータちょうだい」
まだカメラの前じゃないのに、最高の表情を戴いてしまいました。
今日だけで配給過多過ぎん? めちゃくちゃ楽しんでる気がする……。
心配になってくるくらいだ。
「私にされて嫌なことがあったらちゃんと言ってね」
優しさに甘えて見境なくなりそうで怖い。
なんか白雪くんは何でも「うん」って言ってくれそうな雰囲気があるんだよなぁ。
「りっちゃんが望むことに嫌になることなんてないよ。もっと、もっと望んで欲しいくらい」
「いやいや、私をこれ以上駄目人間にしないでください」
思ったとおり!
節度をわきまえないと、沼に足を捕らえられかねない。白雪くんとの付き合いは自分を戒めることが大切なようだ。
私の心配をよそに、彼の笑みは深くなる。
「……もっと駄目になってよ。俺もそうなりたい」
その呟きを聞き逃した私は、既に捕まっていることにも、抜け出せなくなっていくことにも気付いていなかった。
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