第3話 夢と現実の狭間

あれから家に帰り、夜も更けているというのに美智と遊んだ。

人はいつ亡くなってもおかしくないのだろうが、考えられない。


博美、美智がいない世界など想像すらできない。

彼らは経験したのだ。

置いて行かれる、それはどんなに過酷であろうか。

様々な思いを寄せているうちにあれから1か月が経った。

またも携帯電話が主張の激しい生き物のように鳴り出した。


「政春元気か?この前はありがとう」

電話の主はもちろん辻だ。

「何の役にも立てなくてすまない」

「それより聞いてくれ!逢いたい人に逢えたんだ!」


死んだ者に逢う。それはどういう意味なのか。

「あそこのBARでだ。全てが繋がっている」

辻は興奮気味だ。

「夢じゃないのかよ?」

「違う。俺は確かに彼女に逢った」

そっくりそのまま信用できない。

辻は何をもって「逢った」と言うのだろう。

「ここのBARは、あの世と繋がっている」

辻は若干小声になった。続ける。

「マスターもそこで奥さんと逢っている」

まるで夢物語だ。

辻もマスターも頭がおかしくなったのかとさえ思った。

「お前もまたあのBARに行こう。マスターも奥さんを紹介したがっていた」

「わかった。近いうちに時間を見つけて行くよ」

辻も忙しい中で電話してくれたようで、すぐに切断音に変わった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る