ボクはかしこいのでしっています〜兄さんは「テンセイシャ」〜
手毬 猫
プロローグ
「兄さん、おけいこをつけてください!」
「おっ、いいぞー! ネージュは真面目だなぁ!」
オレはペルル・アメティスト、魔術の名家と名高いアメティスト家の長男だ。
アメティスト家の人間は紫色の瞳と魔術の才能を持って生まれる。……基本的には、だけど。
察した人もいるかもだけど、オレには魔術の才能がない。目だって灰色だ。瞳の色は魔術の得意属性と強く紐づいていて、灰色はどの属性にも属さない。今まで灰色の目を持った生物が生まれる事態は世界で何件かあったみたいだけど、そのどれもが魔術の才能を持ち合わせていなかったらしい。
よりによって魔術の名家でそんな人間が生まれたなんてバレたら赤っ恥だ。だからオレは人目につかないところでこっそりと育てられてきた。捨てられなかったのは誰かに見られたら……というもしものせいだろう。
ついでに言うと、「持たない者は存在しない」と言われる「スキル」という物があるのだが、それも雑魚スキルである。雑魚スキルと言っても平民なら持っている人は結構いるんだけど、華々しさや豪華さがあったり、戦闘に役立つスキルを求められる貴族からすると……ってやつだ。貴族で持ってるやつは多分ほとんどいないんじゃないかな。
でも、オレはそんな事気にしちゃいない。なぜかって? 弟が可愛いからだ! オレの弟であるネージュ・アメティストは紫の目と魔術の才能を持って生まれた。しかも丸くてくりくりとした目と艶のある黒髪で顔立ちもとても整っている。同じ黒髪でもオレとは大違いだ。でもネージュはそんなオレを蔑んだりしないどころか、オレのことを兄として慕ってくれる! そんな可愛い弟を嫌う奴がどこにいる? いや、いるはずがない!!
しかもオレが作った髪を結ぶ用のリボンを大切に使ってくれる! 生産者としてこれ以上嬉しい事はない!
あと、オレには魔術の才能はないけど体術や剣術の才能はあるみたいでな、よくネージュに稽古をせがまれるんだ。もちろん断る理由なんてあるはずがないから毎回引き受けてるぜ!
稽古は実戦形式で、まずすごーく手加減したオレに勝てたら次はもうちょっとだけ手加減せずにして、それに勝てたらまた……って感じなんだけど日々ネージュの成長を感じられてすごーく楽しいぜ!
…………? なんだろう、あっちが眩しい……。ちょっと行ってみようかな、もし危ないならネージュに近寄らないように言わないと……ってうわぁ!?
――「では、転生処理を開始します……」
――「転生処理が完了しました。では、さようなら。……あっ、私のミスは誰にも言わないでくださいねー!?」
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