凸凹姉妹と本の中(仮)

@shota_1218

第1話

 冷房の寒さで目を覚まし机上のパソコンの時刻を確認すると午前三時。

 お昼ご飯を出前して食べたところまでは記憶がある。膝の上にある小説を読んでいたのも覚えている。いったい僕はいつから寝ていたのか……


 ガチャッと玄関のドアが開いた音が聞こえ階段を下りた。同居人の博人ひろとが帰宅した。


「ただいま、サキ」

「おかえり、ヒロ」

「今起きたの?」

「うん。僕いつから寝てた?」

「わかんないけど、俺がバイト行くとき声を掛けた時にはもう寝てたね」

「じゃあ、五時くらい?」

「大体そのぐらい。大丈夫? 頭痛い?」

「うん。ちょっとね」

「あんまり無茶したらダメだよ? 俺たちもう若くないんだから」


 何を言うか、つい数か月前まで高校生をしていたギリギリ十代だ。まだまだ若いと思うが、実際問題高校生の時は何ともなかった徹夜読書が最近はかなりきつくなってきた。徹夜はできるが次の日まで体力が持たずに今回みたく昼過ぎに撃沈してしまう。


「ご飯食べた?」

 僕が聞くと博人は「ごめん。賄い食べてきちゃった」と手を洗いながら答えた。

「そっか。じゃあ今日もカップラーメンだなぁ」

「ほんとごめん。今日火曜なの忘れてたんだ。ほら! 夏休みって講義とかないし曜日感覚なくなるだろ?」

「言ってることは分かる。じゃあ今度何か奢ってね」

 そう言って僕は水を入れたやかんをコンロに乗せた。

 湯が沸くのを携帯をいじりながら待っていると——「あ、そういえば来週の金曜空いてる?」博人が聞いてきた。

「なんで?」

「先輩がさ、別荘に遊びに来ないかって。それでせっかくなら同居人の子も連れて来て欲しいってさ」

「いいよ。遠慮しとく。迷惑になりそうだし」

「頼むよ。先輩俺しか誘ってないみたいだし、話聞くと先輩の妹ちゃんもいるから俺一人だと心細いんだよ~」

「抱き着くな、暑苦しい!」

 すがる風に見せて抱き着いてきた博人を剥がし、沸いたお湯をカップに注ぎテレビの前の机に置いた時だ。博人の携帯が鳴った。

「ヒロ。電話」

「おう、さんきゅ」

 博人に携帯を渡しテレビを見て三分を繋ごうとするがこの時間のテレビは僕には合わないみたいだ。とてつもなく面白くない。


「……はい、はい。オッケーです。はい、失礼します」

「誰?」

「先輩」

「あー。別荘の?」

「そう。大丈夫だって!」

「何が?」

 セットしてあった携帯のタイマーが三分をけたたましく知らす。

「同居人も行くそうです。って伝えたら、待ってますって」

 まただ、博人は勝手に僕のスケジュールを埋めていく。中学から一緒だがこの性格は今まで何回注意しても一切治らなかった。

「そう」

「あれ、今回は何も言わないの?」

「うん。別にそれがヒロだからもうしょうがないかなって。受け入れた」

「そうなの?」

「うん。金曜でしょ。何時?」

「五時出発」

「早っ。なんでそんな……」

「別荘かなり遠いの。それで、電車の本数も少ないから」

「わかった。今日疲れたでしょ? 歯磨いて寝な」

 正直家でゆっくりとしたいが、せっかく誘ってくれたんだ。何より博人の先輩にはもう行くと居てしまった。仕方なく久しぶりに日の下に出るとしよう。

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