第一章 真夏の日常

「愛してる」なんて言葉を伝えられても、私にはその「愛」が分からない。


「家族愛」「友愛」「兄弟愛」「師弟愛」「恋愛」


普通の「幸せな家庭」に居たなら、その「愛」を素直に受け入れる事ができたのだろうか。


貴方の伝える「愛」を、私はもっと早く受け止める事ができたのだろうか。


今さら気づいても遅いのに。

今はただ、私の名前を優しく呼ぶ「あなたの声」が聞きたい。




-28年前-



突き抜けるほどの、青空がしんどい。

濃ゆい水色の空はどこまでも澄んでて、白い入道雲と青空のコントラストが眩しい。


私の名前は上原真夏(うえはら まなつ)。

今まさに青空に潰されそうになりながら、泣いている。




17年前の8月、私は産まれた。

今日みたいな「澄んだ青空のとても暑い日だった」と祖母から聞かされた。

名前の由来は言うまでもない。


何をもって「普通の家庭」と定義するのかは分からないが、祖父母に育てられた私は何も知らずに2人の愛情を一身に受けていた。


父と母の家に戻されるまでは。


何がどこで交差したのか。

何がどこで間違ったのか。

私はこの世に生を受けて良かったのだろうか。

いっそ消えてしまえば良いんじゃないのか。


そう思う度に祖父「カズさん」の笑顔と、祖母「みっちゃん」の涙が私の中に渦巻く。


それ程に深い愛情を、私は彼らから享受していた。



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