#16



「サツキにおっぱい舐められた」


「ブフォッ……!?!!」



目覚めてムクリとベットの上で起き上がったカズは開口一番そう言った。俺は吹き出した。



「は、はぁあ?な、なに急に……はぁ?何言ってんのオマエ、はぁ?はぁ?はぁ?」



バ、バレてる……!?


寝てなかったのか?俺がカズが寝てるかどうかの判断を間違ったのか?そんな馬鹿な……!



「クソ雑魚童貞のサツキが僕の ないすばでぃ に欲情して我慢出来なくなってハァハァしながら僕のおっぱい舐めた」


「は?ナニソレマジ意味わかんないんですけど?は?そのクソ雑魚童貞のサツキって誰?は?そんな人知らないんですけど?は?それに ないすばでぃ ってなに?は?そんなのどこにあるの?は?」


「ホントマジでキモかった。鼻息荒くして「カズモちゃんのおっぱい美味しいぃ!ぺろぺろぺろぺろっ!おっぱいうまっ!うまぁ!」ってめちゃくちゃ舐められた。ベロンベロンに舐められた。舐められまくった。キモすぎて鳥肌たってゾクゾクしてビクンッてなったわー」


「そんな舐めてねぇよ!?ちょっと舐めただけだわッ!」


「……ーーっていう夢を見たんだけど…………えっ?」


「あっ…………」


「夢の話だったんだけど?」


「…………」


「……サツキ?」


「スゥゥゥーー……」



や、や、や、やらかしたー……!


余計なこと言ったー!そうだよな!やっぱあの時カズ完全に寝てたし!途中からちょっとおかしいとは思ったら夢の話かよ……!



「ちょっとサツキ?今、言ったセリフもっかい言ってみて?」



起きたばかりで寝ぼけ眼だったカズの両目がカッ!と見開かれ、口元がニチャァァァと歪んだ。


とても不味い。とてもとても不味い。



「サツキ、今、「そんな舐めてねぇよ」って言ったよね?ね?ね?」


「…………」


「それでそれで「ちょっと舐めただけだ」って言ったよねぇえええ???」


「…………」


「それってつまりぃ?サツキくんわぁ?僕のおっぱい舐めたことあるって事だよねぇえ???」


「…………」


「えぇぇ?なにそれサツキくぅんっ?サツキくんわぁあ僕のおっぱい舐めちゃったのぉ?それって何時ゥう???僕そんなサツキくんにおっぱい舐められちゃった記憶とかぁ、無いんだけどぉおお!」


「…………」


「ねぇ?ねぇねぇねぇ?サツキくぅん?サツキくんはぁ、僕のっ!おっぱいを!何時っ!舐めちゃったのかなぁあ?ねぇねぇねぇ?教えて欲しいなぁ?気になるなぁ?まさかっ!まさか、とはっ?思うんだけどぉ!?まさか、僕が寝てる間に……?なんてことわぁあ!無いと思うんだけどぉお???」


「…………」


「そんなっ!そんなそんなっ……!まさかっ!まさか……ねぇえ?まさかとは思うんだけどぉ?僕が寝てる間に?無防備で抵抗できない間にぃ?僕のおっぱい勝手に舐めちゃった……なんてことはぁ???無いよねぇ???あのサツキくんが?普段から僕の事を散々バカにしてるサツキくんがぁ?僕のおっぱいの事をまな板、絶壁、大平原、無、とかって煽り散らしてバカにしてるサツキくんが?僕のおっぱいに興奮しちゃって?僕が寝てる間に勝手に舐めちゃうなんて、そんな人間として終わってる最低最悪の屑ゲス行為をするわけないよねぇえ?そうだよねぇえ?」



「うぐっ…………」


「おらおらおらおらぁあ!どうなんだよサツキぃい!黙ってないでなんとか言いなよォ!どうなのぉ?ねぇ?ねぇねぇねぇねぇねぇ?どうなの?どうなのぉ?勝手に僕のおっぱい舐めちゃったの?舐めちゃったんだろぉ!僕が寝てることをいい事に、僕のおっぱい勝手に舐めちゃったんだろっ!どうせコイツ馬鹿だからバレへんやろ!とか思って勝手に舐めちゃったんだろぉ?さっさと白状しなよぉ!ほらぁ!ほらほらほらほらぁあ!」


「ぐっ……ぐぅう……!」


「黙り?そうやって黙りしてる気?あー!はいはい!それでもいいよぉ?サツキくんが素直に白状しないなら僕は別にそれでもいいよ?ただねぇ、そうなるとねぇ、僕ねぇ、学校で言いふらしちゃうかもねぇ?寝てる間にサツキくんに勝手におっぱい舐められたって!みんなに!クラスの人、全員に!学校中の人、全員に!言いふらしちゃうかもなぁあ!」


「な…………」


「な?」


「なめ…………」


「なめ?」


「舐めました…………」


「舐めました?えぇえー!それだけじゃ僕わかんないなぁ!?何を?何時?どうして?どうやって?なんで?舐めたのかなぁ?そこ詳しく知りたいなァ!?!!ちゃんと説明してくれないなぁ!?」


「うぅ……ぐぅ……」


「ほらほらサツキ!ちゃんと説明して、ね?ね?ね?じゃないと!どうなるか!わかるよねぇえ???」



カズの二チャリ笑顔が眩しい。今すぐにでも拳を力強く握りしめ、腰を入れた渾身の一撃を顔面にぶち込んでやりたい。


やりたい……が、出来ないし、何も言い返すことも、反論することも出来なかった。





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