#13
パイナップルキス後もプールで遊ぶのだが、ちょっと雰囲気が変わってしまった。
映画の名探偵あれれーのとあるシーンの真似とかしてみた。
そのとあるシーンとは主人公のあれれーが水中で溺れかけて、もうダメかという時にヒロインのLANねぇちゃんが口移しであれれーに空気を注入し事なきを得るシーンである。
いやもうただの水中キスシーン。
プールに潜りカズと2人でそのままシーンを実際に再現してみた。
「うへぇ……プールの味しかしないんだけど……クソまずぅ……」
「空気じゃなくて舌入れてくるからだろ……」
「つい癖で」
空気を入れるところで舌を差し入れてきたカズ。俺もそれに反応してついつい舌を返してしまった。結果、お互いにプールの水を飲む羽目になった。
水中キスは微妙。あまりやらない方がいいと思った。何度も検証してみた経験談である。
「そろそろプール上がって 弥市 行くかー」
「んだねー」
『弥市』スパリ内にある温泉だ。江戸の湯屋をモチーフにした情緒溢れる世界最大級の巨大露天風呂である。
プールで遊んだ締めはやはり弥市。これに入らずしてスパリは語れない。
プールで遊び、弥市に入って締め、あとはゲーセンでメダルゲームをしたり、イベントステージでフラダンスを眺めてダラダラ過ごすのがスパリの楽しみ方。異論は認める。楽しみ方は人それぞれ。
というわけでプールから上がって弥市に向かった。
弥市は温泉なので当然ながら男湯と女湯に分かれているのだが……。
「オマエ……なんでこっち来てんの?」
カズが男湯に入った俺に着いてきた。
「人少ないからワンチャン」
「何がワンチャンだ。人少ないって言っても居ないわけじゃないぞ」
閑散としているが、他の利用客がまったく居ない訳では無い。
いくらカズが見た目が少年みたいだからとはいえ、悔しいことに生物学的にはメスである。
胸は有るか無いかと言えば、全く存在していないが、如何せん、男性にはあって、女性にはない股間から生えているものが生えていない。
流石にバレる。
いやまて……腰にタオル巻いておけばワンチャン……?
だからワンチャンってなんやねん。
「男湯って1回入ってみたかったんだよねー!」
「それは流石に不味いだろ。さっさと戻って女湯行けや」
「いいじゃんいいじゃん!一緒に温泉入ろ!」
「オマエなぁ……」
俺の静止を無視して、カズは我が物顔で先を行く。勝手も知らぬ男湯を実に堂々と闊歩するアホ。あー……うん……それだけ堂々としてたら疑われることは無いでしょうね。ええ。
よくよく考えてみれば、カズが男湯に入ってもオレに被害があるかと言えば、特に無い。カズがただ恥ずかしい思いをするだけだ。
面倒だし、好きにさせよう。そうしよう。
ちなみにだが、俺がカズと一緒に温泉に入るのをちょっと期待している訳じゃない。
◇◇◇
「これでいけるでしょ!」
水着を脱いで裸となったカズは腰にタオルを巻いて秘所を隠して、腕を組んで胸を隠していた。
腰に巻いたタオルがこんもりしていないのでやはりカズには付いていないのが分かった。まぁ、遠目に見れば分からないから他の客に近寄らなければいいか。
「オマエそれずっと腕組みしてる気か?」
「そうだけど?流石に胸見られるの恥ずいし」
「見られて恥ずかしいような代物が無いだろ」
「カッチーン……!そういうサツキはさぁ……!腰にタオル巻いてるけどぉ……?温泉でタオル巻いてんのマナー違反じゃない?それともなに?もしかしてその下は見られて恥ずかしいもんなのぉ?」
「タオル巻いてるオマエがそれを言うか?」
「いや僕はタオル外したらバレるじゃん。えっ?サツキは僕にタオル外して欲しいの?僕のそんな見たいの?」
「そういうわけじゃないけど……!」
「この変態スケベ!」
「男湯で堂々としてるオマエが言うな!」
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