#9
クリスマスの1件から数日がたった。もうすぐ今年も終わりだ。
本日も当然のようにカズは来ていて、我が物顔で俺の部屋に入り浸っていた。今は俺のベッドを占領してゴロゴロと寝っ転がりながらマンガを読んでいる。
「サツキー、これの次の巻とってよー」
「自分でとれや」
「いいから取れよー」
「すぐそこだろ」
「サツキの方が近いじゃん!とってとって!」
「あー……はいはい。分かった分かった」
文句を言いつつも、結局、カズが読んでいた漫画の次の巻をとってやった。
「もうグダグダ言ってないで、最初っからそうやってとっとけばいいんだよ!まったくこれだからサツキは……」
「イラッ……!」
「あとサツキ。ついでにガムも頂戴」
「……ほら」
ガムもとってやった。青リンゴ味の奴である。
それを受けとるとカズはムクリと上半身を起こしてくっちゃくっちゃとガムを噛み始めた。コイツ、微妙に口開いて物を食べるからくっちゃくっちゃ五月蝿い。治すように言ってるが治る傾向は今のところない。
俺もガムを食べ始めた。
「んっ……」
キスした。味はやっぱり青リンゴ味。
1度、触れてから離れると、カズはベッドの上で仰向けに寝そべる。俺はカズの小さい身体に覆いかぶさって上からキスを落として行った。
何度もそれを繰り返していたら、カズはべーっとまだ噛んでいたガムを舌の上に乗せて差し出してくる。
噛みかけのガムを口で吸い取り、自分もまだ噛んでいたガムと合わせて混ぜて噛み締めて味わう。味はもう殆ど無くなってはいた。
「あーっ」
エサを待つ雛鳥のように口を開けて待つカズの口に自分の口を被せて、混ざって少し大きくなったガムをカズの口内へと受け渡した。
口を離すとカズはくっちゃくっちゃとガムを噛む。
「もう味しないじゃん。ティッシュとってよ」
ティッシュを取ってやるとカズはぺいっとティッシュにガムを吐き出した。
カズの両腕が首に絡みついてきて、それからカズはオレの唇をペロペロと舐め始めた。
「こっちはまだ味するかも……?」
呟きながらも唇を舐め続けるカズ。一頻り舐めたあと、唇を押し当てて来て、俺の口内にカズの舌が入ってきた。
ぬるりと柔らかい感触が俺の口の中をまさぐっていく。歯をなぞったり、舌を包むように舐めましたり、まるで遊んでいるようである。
「ぷはっ……。やっぱり……こっちはまだ味する気がするわー」
遊ばせていた舌を抜いて、そんなことを呟く。混ざった唾液が箸を作って途切れる。カズの口元はヨダレでベタベタになっていた。
「どれどれ……」
ベタベタになっているカズの口元を綺麗にするように舐めたが、お互いの口元はさらに汚れていく。
「ちょっとわかんないな」
言いながら今度は俺の方から口を押し付け、舌を差し込む。カズの口の中を舐めまわし、溜まっていく唾液を吸い出し、飲み込んだ。
確かにまだ青リンゴの味はする気がするが、それよりもここ数日で味わってきたカズの味の方が強かった。
「これさぁー。別の味のガム噛んだら、やっぱり別の味になるかな?」
「まぁ、そりゃ、なるんじゃないか?」
「ふーん」
それからカズはウチに来る時は、毎回決まってガムやら、後は飴とか、チョコなんかも買ってから来るようになった。
毎回、最初は少しだけ違う味がする。
だが、最後は結局いつも同じ味になっていく。
それに気がついているのか、気がついていないのかは分からないが、必ず何かしらを持ってきた。
まぁ、おそらくは”理由”作りの為っていうのもあるのだろうなとは思う。
「サツキ、ワサビ買ってきたー!」
「おい待て、そのワサビ単品どうする気だテメェ」
「直飲みして?」
「すると思います?」
「折角買ってきたんだから直飲みしろよ!オラー!」
「するか!バカがッ!」
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