#8
本当はするつもりは無く、なんやかんやで結局しないで帰宅することになるだろうと思っていたのに、結局なんか流れでキスしてしまった後の帰り道。
「いやー!キスとか言っても全然大したこと無かったわー!なんかほら肌と肌が触るだけ?って感じだよねー!やっぱなんか握手とかそこら辺と変わんなかったよねー!アメリカ人が挨拶感覚でしてるのもよく分かったわー!」
「そうだなー!なんか全然大したこと無かったなー!肌と肌が触れるだけでなんか別に特別な意味とかそんなん全然無かったし!挨拶!挨拶みたいなもんだよなーやっぱなー!」
「もっかいしよ」
「しょうがねぇな」
帰り道。さっきからこんなノリでいちいち立ち止まってキスしていた。いやほら挨拶だって挨拶。こんばんわこんばんわ。
何回したのかって?知らんがな。
ちょっと理由はさっぱりまったく分からないが、家に帰るまでクソほど時間がかかった。ナンデダロウ。
久保家。ウチは片親で父親しかいない。そしてその父親もあまり家に帰っては来ず、基本的に俺はいつも家に1人だ。とは言ってもだいたいカズが入り浸っているが。
クリスマス・イヴで、本日、カズはウチにお泊まりする予定だった。クリスマスだし朝まで徹夜でゲームしようぜーといった感じだ。
リビングのソファーに2人で並んで腰かける。とりあえずテレビをつけた。金曜ロードショーがやっていた。見たことがないアメリカのアクション映画がやっていた。これから決戦に望む主人公が恋人との別れを惜しんでいる。曰く戦いに行けば恐らくもう戻ってはこれず、これが最後の別れになるだろう云々。
ラブシーンが始まった。めちゃくちゃ濃厚なキスしとる。
「うっわぁ……めちゃくちゃ貪ってるじゃん!」
「そうだな」
「でもこれって映画だよね?ってことは演技だよね?」
「確かに演技だろうな」
「実際はこの2人、付き合ってたり結婚してる訳じゃないよね?」
「多分そうなんじゃないか?知らんけど」
「ふーん……」
「真似してみるか?」
「まぁ……別にいいけど?」
映画のシーンを真似してキスしてみた。
両手でカズの頭を押さえつけて、押し付けるように口を当てる。カズの両腕は俺の首へと絡みついて、カズもまた口を押し付けてきた。はむはむじゅるじゅると濃厚な奴。息をするのも忘れてがっついた。
「はぁ……はぁ……サツキ……がっつき過ぎでしょ……」
「そうかぁ?映画のはもっと凄い気がするけど?」
「そう?ならいっか……」
息を整えて濃厚キス再開。
映画のラブシーンはとっくに終わっている。映画の主人公はラスボスとの激しい戦闘シーンを演じていた。
「これさぁ……」
「なんだ?」
「やっぱ舌とかも入ってたのかな?」
「入ってただろうな」
「そっか」
口を半開きにしてべーっとカズが舌を出してきた。
その舌を自分の舌で下から掬い上げるように絡める。
ぴちゃぴちゃと音を立てながら、お互いの舌を絡ませあって遊んで、それからまた唇を重ねる。カズの口内に舌を這わせて隈なく味わっていく。
口を貪りあって、舌を絡ませて、やかましいほどの水音を出し続けた。
金曜ロードショーはとっくに終わっていて、テレビはニュース番組を垂れ流している。なんか最後主人公が奇跡の生還を果たしたようなシーンが流れたような気がしたが、まったく見てはいなかった。
日付けは変わって12月25日、クリスマス。サンタは来ないし、そもそもサンタを信じるような歳でもなかった。
翌朝。
ソファーの上で目を覚ます。仰向けに寝る俺の上にはカズの小さい身体が乗っかっていた。そんなに重くはない、寧ろ軽い。スヤスヤと安らかな寝息をたてているカズ。寝顔は……まぁ……いつものようなウザさも、やかましさも無いな。
どうやらキスしっぱなしで2人揃って寝落ちしたようだ。
ふぅ……昨日の事は極力思い出さないでおこう……。
カズが起きる様子はまだ無い。
さて、カズが起きる前に、この朝の生理現象が収まるか、どうか。それが問題だった。
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