#3
中3の二学期を終えて冬休みに入った。
「ふっゆやっすみー!クリスマスー!大晦日ー!お正月ー!遊び倒してやんよ!」
鬱陶しい程にバカ(カズ)のテンションが上がっていた。奴の脳内は冬休みの様々なイベントに思いを馳せてお花畑になっていた。
「遊んでばっかないで少しは受験勉強するぞ」
「なんで冬休みに勉強なんかしなきゃなんないんだよ!冬「休み」だよ?休みって入ってるじゃん!当然勉強も休みでしょ?やるわけないよね?だいたい中学生最後の冬休みだよ?それなのに勉強するとか頭おかしいんじゃないの?もうすぐ高校受験なのに冬休み遊ばないでいつ遊ぶの?遊べるの今しかないじゃん!」
「普通、みんな高校受験の為に冬休み試験勉強しんだよ。普通はな」
「だいたいサツキさー!毎回毎回勉強勉強うっさいんだけど?サツキは何?僕の保護者かなんなの?違うでしょ?」
「そりゃそうだけど。オマエにそれを言われると物凄く腹立つな。殴っていい?」
日頃、周りからカズの保護者扱いをされている俺。こんなヤツの保護者なんぞ真っ平御免ではあるが、それを本人に言われると釈然としない。普通に腹立つ。
「おらぁッ!」
「いでっ……!?」
殴りたいと思ったら何故か俺がカズに殴られていた。えっ、なに?どういことなの。
「殴られ前に殴る!ヤラれる前にヤルのが僕のポリシー!おらっおらっ!」
訳の分からないことを口にしつつカズの追撃。何か知らんがポカポカと殴ってくるんですけどコイツ。
貧弱なバカにいくら殴られようと、対して痛くは無いがストレスが急上昇していく。なんで俺殴られてるの?意味不明。
「ヤラれたらヤリ返す!それが俺のポリシー!」
「うわぁ……!?ちょぉっ!何すんだよ!はーなーせーよーっ!」
「うるせぇ!ポカポカ、ポカポカ殴りやがって!なんでまだ何もしてないのに俺は殴られてるんですかねぇ!?」
カズを捕獲。羽交い締めにして動きを封じると、俺から逃げようとジタバタと暴れるが絶対に逃がさん。
「サツキが殴るって言うからでしょ!だから殴られる前に殴ったの!」
「オマエの思考回路どうなってんだよ!せめて殴られてから殴り返してこいや!」
「何事も先行有利ゲーだよ!先に好き勝手した方が強いってだいたい決まってるじゃん!」
先にやったもん勝ちってカードゲームじゃないんだから……。
とりあえず殴られた仕返しに関節をキメて締め上げた。殴りはしない。跡が残ったら面倒だからな。
「ギブゥ……!ぎぶぅううう……!じまっでるぅうっ……!じまっでるがらぁぁ……!」
「これからは無闇矢鱈に人を殴んなよ?わかったなバカがっ!」
◇◇◇
久保家。皐月の部屋。カズが居る。
勉強ヤリたくないヤリたくないと連呼しているカズではあるが、高校受験に備えて少しだけ勉強するようになった。1週間に1日だけ、それも1時間ぐらいではあるが。
それでもまぁ、かなり大きな進歩だと言っても過言では無い。
「僕に勉強させやがって……サツキ、ユルサナイ……呪ってやる……!」
「どんだけ勉強したくないんだよオマエ……」
「んで今日の勉強したご褒美なに?」
「なんで毎回ご褒美を用意せにゃならんのか」
「当たり前じゃん。僕はサツキと同じ高校に行ってあげるためにヤリたくないもない勉強してあげてるんだよ?それもこれもサツキの為にやってあげてるんだからね?えっ、なにそんなことも、わかってなかったの?無いわー。ホント無いわー。このクズ!」
「同じ高校行くって言い出したのカズだろ」
「なんだよ!だったらサツキは僕と違う高校行くつもりだったのかよ!違うよねぇ!?同じ高校行って、一緒に高校生活満喫するって言ってたじゃん!」
そんな発言は一度もしていない。一度もしてはいないが……!高校に上がってもカズとはこれからも一緒に居るんだろうな、とは思っていたが。思っていたが……!それをすんなり認めてしまうのは癪に障るのである。
「ほらぁ!僕はサツキの為に頑張って上げてるんだから、その僕を労うのは当然だよねぇ?あーあー、勉強しすぎて肩こったわー。バッキバキだわー。おらっ!サツキ!さっさとマッサージしろよ!」
「コイツ……あー、わかった……。マッサージすればいいんだな?それなら思う存分マッサージしてやるわボケカスっ!」
「むぎゃっ……!?」
立ち上がりカズの首根っこを掴んでベットへと放り投げた。カエルが潰れたような声を出すカズ。
ベットの上でひっくり返ったカズの足を確保しそれをホールド。丁度、足の裏が上を向くようにする。
そしてカズの足裏を親指で思いっきり押した。グリグリとねじ込むように親指をめり込ませる。
「いだだだだだだだだだっ!?!!」
「カス様ご所望のマッサージ……ーー足つぼマッサージになりますぅー!」
「ちょぉおお!?!まじっ……!マジでいだい!いだい!いだい!いだいーーーっ!?」
「おー、大変凝り固まっておりますねー!これは当店オススメスーパーハードコースのスペシャルマッサージをご堪能していただきましょう!」
「おぉー!?おぉぉぉおおーっ!?じぬっ!いだすぎでじぬぅうう!!!」
「そのまま死ねやバカがっ!オラッ!オラっ!」
「いぎぃいいいい!もうむりぃいいい!はなせぇえええっ!」
力の限り暴れられたが、それを力で持って押さえつけてしばらくの間、足ツボマッサージを続けた。
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