#2



どうも久保皐月です。


バカにつける薬はありませんので、泥にでも浸してやりましょう。泥に浸したところでバカが治るわけではありませんが、大変気分がスカッとします。オススメです。


カズの顔面を泥に浸した翌日、朝。


いつものカズとの待ち合わせ場所に向かうと、いつもは時間ギリギリまで姿を表さないカズが珍しく先に到着していて待っていた。



「これでもくらえ!」



投擲される泥団子。俺はそれをひょいっと避けた。



「ちょっと!避けないでよ!」


「バカがっ!テメェの行動なんてお見通しなんだよ!そんなもん当たるか!」



昨日の復讐とばかりにカズが泥団子を片手に、それを俺にぶつけようと先に来て、スタバっていたというところだ。バカの単純な行動が予想できないわけはなく、俺は見事に投げられた泥団子を避けてみせた。



「たくっ……しょーもないことしてないで学校行くぞ」


「クッソォ……覚えてろよサツキぃ……!」



そして何事も無かったかのように2人で登校した。





◇◇◇




「サツキー!帰ろー!」



放課後。カズが来た。



「今日こそさっさと帰ってゲームしよ!サツキん家ね!」


「まぁ……いいんだけどさぁ。カズ、俺たちこれでも受験生だぞ?勉強しなくていいのか?」


「サツキさぁ。僕が授業以外で勉強とかすると思うの?」


「しないでしょうね」


「その踊りっ!」



えっへんと無い胸を張って偉そうにするカズ。何も偉いところは無い。


部活をやっていたカズではあるが、夏の大会を最後に引退している。それからは水を得た魚の如く毎日遊び呆けていた。受験?知らん。勉強?なにそれ美味しいの?である。



「オマエが受験落ちようが何しようが知ったこっちゃ無いけど、俺はオマエの巻き添えで受験落ちるの嫌なんですけど?」



そして俺は遊び呆けるカズに毎回付き合わされている。勉強しようとは思うが……如何せん、あまりにもカズがうるさすぎる。



「丁度いいじゃん」


「丁度いい?何が?」


「サツキ高校落ちるじゃん?そしたら指差して笑って煽れるじゃん?「不合格wwwダッサァwww」って!大丈夫安心してよサツキ!ちゃんと高校落ちたら僕が笑ってあげるからさ!むしろ落っこちてね!」


「多分、俺が落ちてたらカズも高校落ちてんだよなぁ」


「はぁ?僕が高校落ちるわけないじゃん?勉強とかしなくても高校受験とか余裕でしょ?あれって確か志願書に名前書けばいいだけだよね高校受験って?テスト出来なくても合格できるって聞いたけど?」


「オマエのその自信はどっから湧いてくんだよ……まぁ、確かに名前書いとけば入れる高校はあるらしいけど……」



でもそれは余っ程におバカな高校か、あとはお金積んだらとかそんな所だと思うんだけども。



「カズ、高校どこ行くか決めたのか?」


「決めてるけど?」



決めてないと即答すると思ってたが意外にも既に決めてるらしい。



「サツキと同じ高校」


「お、おう……」



たまにカズはこういうとこある。



「同じ高校行くのはいいんだけど、そもそも俺まだ志望校決めてないし、だいたい名前書いただけで行けるバカ高には行かないけど?」


「うっわ……準備わるぅ。それになんで名前書いただけで行ける高校行かないの?ソレ、ちゃんと僕が入れる高校なんだよね?勉強しないと入れないとこには僕行かないけど?」


「なんでオマエに合わせにゃならんのか」


「当たり前でしょ!僕とサツキは同じ高校行くんだから!ホントしっかりしてよ?ちゃんと僕に丁度いい高校選んでね?まったく先が思いやられるなぁ……そんなんだからサツキはダメなんだよ!この雑魚!」


「あー……もー……!オマエはツッコミが必要な発言しかしねぇなぁ……!」



何はともあれ……。


カズは高校受験に関しての諸々全て俺に丸投げするようである。俺はテメェの保護者じゃねーんだぞ。


しかし、ほったらかす訳には行かない。というかカズをほったらかしたら、今度は何を仕出かすかがわからない。何かとんでもない事をやらかして、そして俺がそれの尻拭いをすることになるだろう。それならば、現状の言うことを聞いていた方が被害は少ない。長年連れ添ってきた経験則。




後日。



カズと一緒に行ける高校を見繕う。


名前を書いただけで入れるバカ高には流石にあまり行きたくは無かったので、カズの学力でギリギリ入れそうな高校を探した。高校探しはめちゃくちゃ難航したが、なんとか妥協案となる高校を見つける。



「ーーつーわけで、志望校は○○高校にしようと思う」


「りょ」


「軽っ。なんか質問とか無いのかオマエ。どんな高校なんだとか」


「え?サツキが選んだ高校でしょ?なら大丈夫じゃん。僕もその高校でいいよ」


「たくっ……オマエって奴は……なら○○高校で決まりな?あとから変えるとか無しな?」


「うん。わかった」


「よし。それじゃ受験勉強しようか」


「はぁああ!?それは聞いてないんだけど!なんで勉強するの!?勉強しなくてもいいとこにしてって言ったじゃん!」


「ほっとくと遊び呆けるからなオマエ。安心しろ。ちょっと勉強すればギリ行けそうな所にはした。だからちょっと勉強すれば合格できる……はず」


「えー!ヤダー!ちょっとでも勉強したくないっ!やっぱり選び直して!○○高校行かない!別のところにして!」


「今さっき変更無しって言ったろ。ダメだ。決定だ。勉強しろ」


「クッソォ騙したなサツキ!このバカ!アホ!ザコ!バカ!」


「一緒の高校行くんだろ?」


「行くけどぉ……」


「ならちょっと、ちょっとだけだからな?勉強しような?」


「うぅ……」



カズは恨みがマシそうに俺を睨みつけつつも、それからちょっとだけ勉強するようになるのであった。











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