日露戦争編 序章1-1

"日本は辺境の農業国であり、我々と比べ遥かに遅れた後発国である。"


——これは、十九世紀における欧米列強各国の日本に対する一般の評価である。


日本など取るに足らないであろうと、当世紀特有の欧州至上主義ユーロセントリズム的偏見もおろか、工業、技術面において、総合的にも、数値的からみても、列強各国の後塵を拝する小国であった。この時代における有色人種は立場は不利であるどころか、そもそも人間として扱われたのか、というレベルまでも怪しい……といった様な時代であった。


そんな列強各国の中、それを信じて止まず、むしろ白人優位を前提とした対外政策を強く、露骨に進めていた国がいた。……ロシアである。


ロシアの成立は他の国と比べ複雑である。キエフ大公国キエフ・ルーシといった緩やかなスラヴ民族の連合体を形成していた頃を起源としている。


モンゴルによるタタールのくびきを受けた数少ないキリスト教国の一つであり、異民族の支配下にあった歴史が、欧州至上主義を補強せさせる遠因になったのも言うに越したことは無い。


そして十七世紀、かのロマノフ王朝稀代の名君ピョートル大帝がロシアを近代化の道に推し進め、エカチェリーナ帝の時代で近代国家としてのロシアが完成した。


ロシア、もといロシア帝国は列強の一員として欧州の国際情勢に関わりを持ちつつ、不凍港獲得を国是とした南下政策を強力に推し進めていた。

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