第9話 セガの誤算の連続 その3

 サターン失敗から今度のセガは多くを学んだ。コストがなるだけかからない、そしてハイスペックなハードじゃないと逆鞘になる。セガはPOWERVRを徹底的に調べ尽くした。当時、NECと組んで自社のバーチャファイター2やバーチャロンの移植を行った。


 パソコンのプログラムがどのように出来ているか調べ尽くした。当時、3Dゲームの最高峰はパソコンだった。これを調べて同じような仕様の3Dハードを作れば成功する。video logic社のPOWERVR2を使いCPUに日立のSH4を採用した。CPUこそ日立だがPOWERVR2の前進であるPOWERVRはパソコンに供給されていたグラフィックカードだった。奇しくもこのPOWERVRはNECがPCFXに採用しようとして、コストなど様々な要因から搭載を見送ったハードだった。


 サターンと違って仕様が単純なGPUで演算するタイプで考証300万ポリゴンと言われた。当時アーケードのモデル3が100万ポリゴンなので三倍である。ただ、実際はそんな単純な話ではなく、セガラリー2などで砂煙が簡易化されていたりなど、色々と揶揄されることになるが、それでも初めてモデル3と同等の映像を家庭用に出すことができたハードだった。


 カプコンの岡本氏が早い段階からドリームキャストの互換基盤であるNaomi参入を決めたり立ち上げ時は成功するように見えた。


 そして満を辞して新聞に全面広告を打つ。セガは終わったのかと言う広告からの二日に渡る大型広告だった。コマーシャルではセガってダサいよな、と言う自虐コマーシャルを出した。


 これでセガを周知させることに成功するが、このコマーシャルは悪手だったと今は思う。当時のサターンが逆鞘だったと知っていたユーザーは少なく、日本市場ではプレステに負けたとは言え、失敗したと思っていた人は少なかった。


 サターンではドラクエ、FFと言った大型タイトルこそは出なかったが、エニックスも参入しており、失敗したと思っていたユーザーは意外にも少なかったのだ。


 それにプラスしてソニーはプレステ2の仕様を公開した。DVDを搭載した新型ハードエモーションエンジンは極めて性能が高く、ライバルのセガのハードが霞むくらいカタログスペックが高かった。


 実はドリームキャストからps2発売まで一年半も掛かっており、当初29,800円。半年後には19,800円に値下げとドリームキャストは値段も安かったこともあり、勝てる見込みはあったと思う。


 それにプラスして当時無料でプロバイダーを提供しており、ドリームキャストでネットを初めた人も多かった。


 ドリームキャスト失敗には諸説あるが、アーケードゲームの力が以前ほど強くはなくなっていたこと、プレイステーション2の発売を煽ったせいで買い控えたユーザーが多かったこと、当時親会社のCRIが水面下でパチスロメーカーサミーとの提携を画策しており、セガがそれを阻止しようと焦っていたこと。


 ドリームキャストは結局早々に退場してしまいセガとサミーの合併が決まってしまうわけだが、ドリームキャストは今まで歪みあっていたアーケードチームが本気で開発をしており、名作となったタイトルも実は多かった。 


 コスト高を招いたが当時注目されたシェンムー。ホラーアクションのハウスオブザデッド、当時アーケードで人気のあったサンバでアミーゴ。家庭用からはソニックの3Dアクションなど名作がたくさん登場した。


 失敗したのは目立つタイトルを誘致できなかったこと、セガは負けたのかのコマーシャルが結局、セガってだせえよなと印象づけてしまったこと。うまくプレステ2発売を煽られて買い控えが起こったこと。


 アーケードゲームから家庭用中心への過渡期でアーケードゲームが力を失いつつあったこともある。


 結局、プレステ2はDVD人気も相まって売れまくりセガはひっそりとゲームハード業界から去ることになった。


 それから先はセガとサミーの合併劇で嫌がった開発チームがナムコに合併話を持っていき、社内での対立が起こったこと。


 パチスロメーカーを毛嫌いした開発者の多くが離脱したことなどで、一気にセガの力は失われていくことになった。

 

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