12生きることは・・・話
意味が分からず、戸惑う。
「ど、どういうことですか・・・?」
許嫁も戸惑う。
「え、あ、いや。す、すいません。」
女性はそう言い、走り去って行った。
何がなんだか分からず、ぼう然としてしまった。
あの後、その出来事がずっと頭を占領し気にかかっていたが、殺人鬼探しは続けた。
夕方
「きゃああああーーーーーーーー!!!!!!!」
女性の悲鳴が聞こえた。
駆けつけると、血溜まりの中に一人の女性が倒れていた。
さっきの女性だった。
古びた服を着ており、お腹から大量の血が出ていた。
しかし、先程とは違い、見るからに美しくきれいになっていた。
「王子!まだ息をしています。」
許嫁が言った。
「そうか。」
すぐに衛兵を呼び、その女性を手当てするために城に運ばせた。
「ここは・・・。」
ベットで寝ていた女性が意識を取戻し、横に座っていた僕に聞いてきた。
「ここは、王城の中です。あなたが誰かに刺されて倒れていたので。」
「そうですか。」
え!驚かないの?何でだ?
「それより」
俺が質問する前に女性が口を開く。
「私は今まで若い女性を殺してきました。」
・・・は?
「でも、殺人鬼はもう一人います。あいつは魔女です。男性だったり、子供を殺していたのはあいつです。」
ちょっ、話が早い。
「魔女の狙いは私とあなたです。魔女は私達の血を欲しがっているのです。」
話が見えてこない。
「あなたは何も覚えてない。何もわかってない。」
そう言って立ち上がる女性。
先程縫ったばかりの痛々しい縫合跡は、完全に消えていた。
「頑張って私を救ってください。」
そう言って、女性は自分の手の甲にナイフを刺した。
「ど、どうして!?」
その続きを言う前に、突然、女性はその血まみれの手を俺の口の中に入れた。
俺の喉に彼女の血の、鉄の味が流れ込む。
次の瞬間、頭に大量の情報が流れ込んできた。
そのまま、俺は意識をなくした。
ー ここは?
海辺の砂浜。そこで俺は立っていた。
ー いったい?
目の前には、ずぶ濡れの少年とそれを抱きかかえる女性がいた。
「もう大丈夫だから。安心してね。」
そう言って、息をしていない少年に自分の血を与える女性。
「これは、だめなこと。でも、あなたなら、私を救ってくれるはずだから。」
優しく頬にキスをする女性。
「私を見つけてね。」
ー これは。
ー 僕の記憶なんだ。
俺の隣に立つ少年が言う。
ー 僕は一回死んで、この人に助けられたんだ。
そう言うと、少年はうつむく。
場面は変わった。
空は暗く、濁ったように見える海の砂浜。
先程と同じところに女性はいた。
彼女と話をする人もいた。
「私を救ってくれて、ありがとう。でも、本当にいいの?」
「ええ、私たちの血は特別だから。」
「ありがとう。」
「ただし、もう普通には戻れないのよ。」
「わかっているわ。」
「他の人にもあげられないのよ。」
「大丈夫。」
「約束は守るように。」
「ええ。」
ニッコリと笑い、女性は助けた相手に笑いかける。
上半身が人の少女は、海へと帰っていった。
ー あれは・・・人魚なのか?
場面がまた変わる。
「よくも約束を破ったわね。」
「ち、違うの。仕方なかったの。」
二人の女性が言い争う。
「仕方なくはないわ。私はこんな姿となり、魔に落ちてしまった。あなたは私との約束を破り、数百人の人を生き返らせた。この罪は重い。覚悟しなさい。」
「ど、どうして・・・・・・・・・・・・・・。」
頭の中がぐるぐると回る。
あなたのせいよ。あなたの、あなたの、あなたの・・・・・・・・・・・・・・・・。
「はっ・・・。」
「だ、大丈夫ですか?」
床でうずくまる僕の顔を覗き込む許嫁。
そうか。そういうことか。
僕は飛び起き、女性の後を追った。
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