11事件は続く・・・話

「や、やめろ。やめえてくれーーーー!!!!!!!!!!」


男は走りながら叫ぶ。


「な、何で、何で俺なんだーーーー!!!!!!!!!!」


転び、尻をつき、後ずさる。


「や、や、や、やめてくれーーーーーーーー!!!!!!!!!!」


月の光に照らされ、不気味に光るナイフは、男の胸に突き刺さる。


血は、男とナイフを赤く染めた・・・。




「ほ、本当に探すんですか?」

許嫁が僕に聞いてくる。

「僕は王子だから、この国を守らないといけない。だから,殺人鬼を俺が捕まえるんだ。」

「俺?」

「あ、いや、ぼ、僕が。」

どんどん王子っぽくなっている。

「と、とりあえず行くよ。」

「執事さんたちに聞かなくて大丈夫なの?」

「た、たぶん・・・。後で謝ればいいから、もう行こう!」

「は〜い。」

少年と少女は変装して、お城を抜け出し街に向かった。


街はふだんよりどこか暗く、人通りも少ない。

ここ数日間の殺人事件のせいなのか。


俺は自分を取り戻すため、許嫁を連れ、殺人鬼を捕まえようとしている。

捕まえること自体に何か意味があるのか自分でもよく分からないが、直感的に、今は行動するのみだ。


「君たち、早く帰りなさい。」


行く先々で、大人たちに言われる。

怖さもあるが、


  『試練を終わらせるために、俺は。』  『この国を平和にするために、僕は。』


 必ず解決する。



夕暮れ。


「もう帰りましょうよ。城の人々も心配しているでしょうし・・・。」

許嫁が言う。

「そう・・だな。」

この日は何の成果もなく、城に戻った。



夜。



夢の中、一人の女性が話しかけてくる。


ー ふふふ。今回は君でも手こずっているようね。 ー


優しい声がささやく。


ー これまでの報酬として、いいことを教えてあげる。 ー


 これまで?・・・・・・・・・・そうか、今は試練中だ。


ー 前回も言った通り、物語や歴史には色々な見方がある。そこがポイント。ー


 ふむ?僕にはなんのことか一切分からない。


ー それと、少年よ。 ー


僕?に向かって話しかけてくる。


ー 君は自分の過去を思い出せるのかな?きっとそこに君たちの答えがあるよ。 ー


 過去? 君たち?


ー 健闘を祈るわ・・・ ー


体がどんどん重くなる。


「・・・。・・・。」


誰かに呼ばれている。


「・・子!王子!」


目を開けると、隣に、僕の手を握る許嫁がいた。

「うなされていたけど大丈夫?」

あれは・・夢、か。

「うん、だ、大丈夫。」

そう言って立ち上がり、部屋を出た。


僕の過去?

過去、と言われても・・・・・・・!!!!!


      思い出せない。


お父様とお母様の間に生まれて、それから・・・・

昨日、一昨日の記憶はある。

なのに、1年前の記憶とかになると一切思い出せない。

なぜ?


しばらく考えたが、答えは出なかった。

だから、とりあえず殺人鬼を捕まえるために、またこっそり、二人で外に出た。


城の外壁を辿って歩いていると、痩せこけた女性が一人いた。

「だ、大丈夫・・ですか?」

僕は心配して話しかける。

驚いたように彼女は僕を見る。

「あ、はい。大丈夫です、王子・・様。」

なぜ、この女、俺の正体を。

いや、そんなことより問題は違う。

女性は所々黒ずんで汚れた絹の服を着ており、見るに耐えない。

ただ、痩せこけているが、まじかで見れば美しいその女性は、許嫁の方を指差してこう言った。


          「あ、あの人が・・・殺人犯です!」

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