4.答えは・・・話
答えにはたどり着いたが、何がおかしいかもう一度考える。
過去の記憶のピースたちを、もう一度、はめ直していく。
『 これからは、毎日が最高の日々さ。 』
違う。これは俺の発言。その前だ。
『 あの晩は私の中で人生最高の日でした。 』
おかしい。
あのとき分からなかったが、今なら分かる。
あのとき、俺はおかしかった。
だから、判断を間違えたんだ。
『あの晩』と言っていたが、三日三晩舞踏会があり、どの晩もシンデレラはいた。
『あの晩』も何も、毎晩シンデレラはいたはずなのだ。
俺は、目の前にいる「偽シンデレラ」をまじまじと見る。
言い訳を言って部屋を出て、執事の元へと向かう。
執事は急ぎ足の俺を見て驚く。
「ど、どうされたんですか?」
「今日の結婚式、明日に延期してくれ」
「……え!きゅ、急に言われましても」
「適当に理由を付けとくんだ!」
「ど、どうしてですか?」
本当のことを言うべきか迷ったが、適当に誤魔化して自室へと足早に向かった。
所々におかしいところがあった。
目を突かれる。
これはグリム版にある話だ。
ただ、ここはまだいい。
問題は、次の首吊り。
あの時、偽は泣いた。しかし、グリム版では継母たちの末路をシンデレラが笑う、というラストで終わる。
他のパターンに、首吊りが無い以上、グリムの物語通りになるはず。
さらに、名前。
シンデレラは、名前ではなく日本名では『灰かぶり姫』という言わば通称だ。
一説に、『エラ』という名前があるらしいが、だとしても本名はシンデレラではない。
本人だったら、自分の名前を知っているはず。
他にも、「父は死んだ」と言っていたが、たぶん嘘だ。
シンデレラの家にたどり着いた時、家の中にいた人は俺抜きで7人。
偽、継母、義姉二人、二人の衛兵、そして老人。
そうだ。この老人が父親に当たるはず。
これはあくまでグリム童話に沿った話だ。
神は言った。 『 自ずと理解すると 』
こうも言った。 『 物語を変えるな 』
つまり、俺の試練は物語の結末を修正する。
本物のシンデレラと王子が結婚する、その物語に直す。
部屋についた俺は着替える。
なるたけ一般的で市民風の服。
こっそり馬に乗り、シンデレラの家に向かう。
馬を走らせながら考え続けた。
しかし、偽はなぜグリムの話通りに合わせなかったのか。
父死亡、魔法使い、目潰しと首吊りがない世界。
すべて、映画版、または、絵本版の話に似ている。
設定を間違えたのか? まさか同じ転生者? まず、なぜこんなことが起きているんだ?
神の試練だからか? まったくわからない。
シンデレラの家に着いた。
よく見ると、別室のようなものがあった。
あそこにいるのかも。
王子らしく堂々と扉を開け、中に入る。室内には、老人がいた。
「だ、誰だ…、お、王子様!!!い、今から私も娘の結婚式に向かう所でした」
やはり父親だったか・・・。
「すまんな、忘れ物をして」
そう言って、急いで階段を駆け上る。
別室に入るが誰もいない。人がいた形跡もない。
おかしい?
窓から小屋が見える。・・・!
まさか、シンデレラが掃除していたと言われるあの小屋か。
すぐに外に出て小屋に駆け込む。
周りを探すが誰もいない。
じゃあ、どこにいるんだ?
すると、煙の匂いがしてきた。
入り口で火が燃えている。
急いですぐに外に出て、あたりを見回す。
遠くの方にシンデレラ・・・いや、偽者がいた。
追おうとしたが、そのまま姿を消した。
どこだ、どこにいるんだ?
思い出せ、平凡な俺。
これまで蓄えた知識から…。
小屋じゃない、家でもない。
関係ないところか? どこだ。
それより、さっきは魔法のように消えたが・・・
?
魔法? 魔法使い?
グリムではたしか苗木を植えて、それが育って・・・その木に止まった白い鳥が・・・!!!
空を見る。
まばらだが、白い鳥たちが、あるところにいっせいに向かっているように見える。
そこにいるということか!
俺は急いで馬に乗ってその先に駆け出した。
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