第8話 失踪者は誰?
辰巳刑事は、まず行方不明になったという記者の所属する会社の編集長に逢うことにした。編集長はそもそも記者の失踪を友人の新聞記者に相談したこともあり、事情は分かっている。警察が来ることも分かっているし、新聞記者が辰巳刑事と昵懇なのも分かっていた。
ただ、辰巳刑事のウワサは彼から聞いてはいるが、何しろ初対面であり、しかも、部下の失踪という事件絡みのことで事情を訊かれるということで、どうしても緊張が走ってしまう。
それを思うと、何から話していいのか分からなかったが、他の人に相談してしまったことを、後悔すらしているくらいだった。
「今日は、お時間を作っていただき、申し訳ありません。山井新聞の田中記者からこちらの話を伺って訪ねてきました」
というと、編集長も分かってはいるが、すぐに緊張が顔に現れて、ソワソワしているように見えた。
「はい、東条君のことですね?」
と何とか、声のトーンを普段と変わらないようにしようと思っているせいか、これ以上でないというほどに、声が低くなり、ハスキーボイスになっているのが分かった。
そんな状態になっていることに気づいた辰巳刑事は、
――この人は、思ったよりも小心者なんだろうな――
と、すぐに彼の性格を見切っているようだった。
「はい、田中さんの話によると、ここ数か月ほど、連絡が取れていないということですが、それについて何か分かりますか?」
と、最初は、何も知らない人のように、漠然とした質問をした。
「ええ、実は我が社では、気になる記事があれば、潜入捜査のようなものをやっているんです。警察の内偵などのように、危険なことはしないですが、なるべく、相手に寄り添うような素振りを見せて油断させるというようなやり方ですね」
と編集長は言ったが、
――この人、小心者に見えるが、言葉の使い方は、かなり挑戦的なところが多いな――
と感じた。
「これは、いきなり手厳しいですな。警察も内偵やおとり捜査は、基本的には認められていませんからね」
というと、
「それは失礼しました。実は我々が潜入捜査をやっているのは、ある詐欺グループの実態を暴こうということなんです。今の詐欺というのはご存じのように、一つのところからいくつにも広がっていて、その中にいくつかのトラップもあるので、詐欺グループの実態に近づくというのは、かなりの至難な業なんです。まずは相手を安心させて、安全な中でこちらの主旨を悟られないようにするには、信頼を受けるしかないんですよ。信頼を受けるには時間が必要。東条君というのは、今までにも何度も同じような橋を渡ってきている実績があるので、ある程度安心しているんです。それに、危険を少しでも感じたら、必ず引き下がるというのがこの仕事の鉄則なんですよ。下手に睨まれると、一つのネタのために、出版社存続はおろか、自分たちの命までもが危うくなってしまう可能性がありますからね。だから、一旦潜入すると、一定期間、連絡が取れなくなるkとはしょうがないことなんです。下手に連絡を取って、怪しまれることは避けなければいけませんからね」
と編集長がいうのを聞いて。
「だから、数か月も放っておいたというわけですね?」
という辰巳刑事に。
「ええ、そうです。下手にこっちが動けば、せっかく潜入している東条君の身の危険もあるし、みすみすこちらの存在を明かすようなことになってしまいますからね。それだけは避けなければいけないんですよ」
と、編集長がいう。
「ところで、その組織のことはどこまで分かっているんですか?」
と訊かれて、
「彼らはいくつかのアジトを持っているようなんですが、連絡先に使う場所はある程度決まっていて、時間帯によって分けているようですね。ほとんどが夜なんですが、ハッキリと分かっているのが、実はこの間、ホームレスの死体が発見されたという、あの公園なんですよ」
というではないか。
「えっ?」
とさすがにこれには辰巳刑事も驚いた。
しかし、考えてみると、事件が起こっているのに不謹慎かも知れないが、そもそも元々の表に出ている事件は、ホームレス殺人事件が辰巳刑事の事件であった。
失踪者の事件は、
「本来の事件の捜査を疎かにしない程度」
という約束で、田中氏から引き受けた者だった。
旭日出版に出向いてきたのも、近くで目撃者を探すという名目で近くまできたから、そのついでに立ち寄ったもので、その話はこれからするつもりでいた。それなのに、向こうから公園の話を持ちだしてくれるというのは、手間が省けたとも言えるし、ひょっとすると、記者の失踪事件と、ホームレスが殺された事件とでは、底辺で結び付いているのかも知れない。
それを思うと、さすがにまだ、何も分かっておらず、ただ、公園という共通点があったというだけの薄い関連で、この二つの事件を結び付けるには、時期尚早である。だから、まだ捜査本部にこの話を持っていくことはできないと辰巳刑事は考えていた。
本来の事件の捜査に時間を割かなければいけないので、詳しい話を訊いている時間もない。それだけに、とりあえずこの情報だけで、その場を離れなければならなかったが、それでも、たったこれだけの情報で、
「ひょっとすると、二つの事件が一気に解決するかも知れない」
ということが分かっただけでも、成果は十分にあったと言えるだろう。
ただ、辰巳刑事は一つ確認しておく必要があった。
「詐欺事件というのは、実際に警察の方で、認識していることなんでしょうかね?」
と聞いてみた。
「ハッキリとは言えませんが、警察が内偵しているというようなことは、田中君は言っていませんでしたね。あくまでも、自分だけが潜入しているという話でした」
ということだった。
警察も暴力団絡みであったり、薬物などが絡んでいたり、海外のマフィアなどの組織と関係していたりなどの、放置できない捜査であれば、潜入捜査もあるだろうが、普通の詐欺グループくらいでは、そこまで危険を犯してまで潜入捜査をすることはないだろう。
ただ、最近は現職の刑事などの現場の知らないところで、いつの間にか、特定の悪の組織をターゲットにしたような秘密部署が設立されているというようなウワサを訊いたことがあった。
警察というところの捜査は、内偵によって、いろいろ分かってきているようになったが、相手の組織も何とか警察の目をかいくぐろうと必死になっている場合もある。
特に、同じような組織と勢力図が被っていれば、どうしても、抗争が起こらないとも限らない。
対応組織だけでなく、警察も相手にしなければいけなくなれば、組織も存続問題でかなり大変である。
下手をすれば、組織が一旦手を握り、束になって警察に襲い掛かってこないとも限らないだろう。
それを思うと、警察も警戒しないわけにはいかない。マルボーや薬品専門の部署なども存在するので、警察もそれなりに組織としての体裁は整っている。
このような三つ巴の状態において一番必要になってくるのは、情報力ではないだろうか?
組織としての根本からの力であったり、兵隊の数も重要であるが、
「いかに相手を出し抜けるかという意味では、情報戦以外の何者でもないような気がする」
と言えるのかも知れない。
どんなに結束力があり、組織の底力が強くても、相手が攻めてくる方向を見誤ってしまえば、まったく兵隊も役に立たない。
特に情報戦は、IT戦略でもある、最新の情報が分かっていなければ、まるで竹槍を使って、爆撃機を叩き落そうなどというようなもので、守らなければならないところに守りを固めず、相手に迫って突進している間に、自分の陣地に攻め込まれていて、落城の憂き目をえたのだとすれば、
「タイムマシンを使って、歴史をやりなおすことができない以上。我々にはどうすることもできない」
ということである。
警察の力というものをどこまで信じているかにもよるのだろうが、少なくとも、
「警察もバカではない」
と思いたいであろう。
さすがに、東条記者が何を探っていたのかまでは、編集長は教えてくれなかった。
これは、出版社の方では把握しているが、いくら相手が警察であっても喋らないという、出版社特有の守秘義務のようなものか、それとも、本当に知らないのかのどちらかであろうが、辰巳刑事は、いくら出版社とはいえ、自分たちの仲間が行方不明になっているのに、それを守秘義務として守ろうとするのもおかしいだろう。
最初の二週間くらいであれば、連絡がなくとも、
「調査に必要な連絡できない期間」
ということで許容範囲なのだろうが、さすがに数か月ともなると話が変わってくる。
しかも、そもそもこの話は、編集長が警察に顔のきく(と言っても、辰巳刑事だけではあるが)田中氏に話をした時点で、警察がやってくることは織り込み済みであろう、それくらいのことは何も言わずとも忖度できる田中氏だったからである。
そういうことであれば、
「出版社の守秘義務」
という考え方はあり得ないだろう。
ということになれば、編集長も、詳しいことを知らないということであろう。
詐欺集団ということだけは分かっているが、その組織がどれほどのものなのか。バックに何もいない単独の組織なのか、それとも、反社会的勢力や暴力団関係が絡んでいるのかによっても全然変わってくるだろう。
そもそも、行方不明になった東条記者という人がどれほど仕事に忠実なのか、怖い者知らずで特ダネを追いかけるタイプか、さすがに危険なところには顔を突っ込まない人なのかによって、その組織が分かってくるというものだ。
編集長がいうには、
「東条記者というのは、よくも悪くも平均的な記者なのかも知れないですね。そういう意味では無茶はしない。もし、潜入捜査のようなことをするのであれば、よほど自分でその組織の情報を集めて、それで危ないところがないとすれば、潜入するという、
「石橋を叩いて渡る」
という用心深いタイプだという。
ということは、彼が調査した中では、本当に危なくないという結論が出たのだろうか。もしそれであれば、彼の失踪はこの詐欺グループとは関係ないのかも知れない。偶然何かの事件に巻き込まれたのか、それとも別のところで、表に出てくることができなくなったことが理由にあるのかも知れない。
次に考えられるのは、詐欺グループが、よほど厳重な隠れ蓑を持っていて、その結界に引っかかってしまったと考えられなくもない。そうなると、バックに危ない組織がついている可能性もあり、それこそ、一番最悪の考え方になってしまうが、東条記者の命も風前の灯なのかも知れない。
いろいろな可能性が考えられるが、一つ言えることは、潜入捜査で取材に当たっている一人の雑誌記者が、行方不明になっているということだ。
しかも、唯一と言ってもいいくらいの情報として得られた、グループのアジトやれなく先で分かっている中に、この間殺されたホームレスの死体が発見された公園があるということだ。
これも偶然とはいえ、辰巳刑事が捜査している殺人事件に絡んできたというのは、可能性としては、二つの事件がどこかで繋がっているということは大いに考えられるのではないかということであった。
辰巳刑事は、まだこの段階で、捜査本部にこの情報を持っていく段階ではないと思っていた。
その理由の大きなところとしては、
「あまりにも情報が不確定で、殺人事件の方もまだまだ解明されていないことが多いからだ」
ということが挙げられる。
結び付ける先の殺人事件自体が、まだ不特定なので、そこに、さらに不特定で、まだ関係があると言える段階ではないこの失踪事件を結び付けるというのは、捜査で一番やってはいけない、
「先入観による捜査」
という、思い込みによる捜査になってしまわないかという懸念があるからだった。
特に門倉警部は、思い込みの捜査を嫌うところがある。
「捜査において、一番やってはいけないことは思い込みによるものだ。もちろん、ほぼ事件の全貌が見えてくれば、一気に推理することもありだとは思うが、まだまだ取捨選択が必要で、さらに、取捨選択できるだけの情報すら集まっていないところでの思い込みは、自殺行為となるのだということを意識してもらいたい」
と若い頃に門倉刑事から教えてもらった刑事のイロハだった。
捜査を続けていく中で、辰巳刑事は、河川敷から少し離れたところにホームレスがたまに集まっているという情報を得ることができた。彼らが普段はどこにいて、どこから来るのかは分からない。ただ、やってくる曜日は決まっているということだった。
辰巳刑事は、付近の捜査を受け持っていた初動捜査の序盤で聞き出すことのできなかった情報を聞き出すことができたのだが、それがどうしてなのか、他の人には誰も分からなかった。
もちろん、辰巳刑事のことなので、
「さすが辰巳刑事」
と、このことに誰も不信感を抱く者がいないほど、辰巳刑事の働きというのは、周知のことだったのだ。
辰巳刑事がまわりを説得できたのは、辰巳刑事のその顔の真剣さにまわりが委縮したからではないだろうか。辰巳刑事のような勧善懲悪な人が、ただでさえ、
「悪を許さない」
という顔でくれば、ホームレスの人もその真剣さに心を打たれたとして、それも事実だろう。
しかし、辰巳刑事はホームレスの捜査以外に、もう一人、東条記者の捜査まで行っていたので、ホームレスとしても、
「刑事さんの捜査は、一人ではないのか?」
ということだったので、どうしても真剣な気持ちに至るのも当然ではないだろうか。
辰巳刑事は、半分くらいの感覚で、そのホームレスの正体が、東条記者ではないかという思いをい出していた。
東条記者は、潜入捜査を行うについて、もちろん、変装すれば、その変装した人間になり切るところがあるらしかった。それは編集長に聞いたのだが、そのことに対しては彼はプロだったという。
もっとも、危険な仕事ではあるので、それくらい徹底できる人間でなければ、そんなこともさせられない。
そして、東条記者は、いつも一人だった。結婚しているわけでもなく、誰かと付き合っているという話も聞いたことがない。
ただ、彼だって男なので、それなりに女性関係がないわけではないようだ。ウワサになっていてもいいのだろうが、誰も口に出さないという暗黙の了解の中で、彼が付き合っていると思しき人は、何人か皆の頭の中には浮かんでいるということだった。
もちろん、辰巳刑事は最初に、捜査の前の段階として、東条記者に関わる人皆から情報を得ることにした。
十人近い男女が東条記者にかかわりがあるのだったが、そのかかわりのある人でも、その温度差は結構激しかった。
「東条さん? そういえば、最近会ってないわね」
という程度にしか見られていない人も半数近くいたのだが、残りの半数は、
「本当にどうしてしまったのか、東条さんがいないことで、寂しくて寂しくて、私は自分の体調を崩してしまいそうなくらいになりそうだわ」
というほど、東条氏に関わっている人もいたようだ。
さすがに体調を崩す人というのは、稀なのだろうが、そのほとんどが女性で、口には出さないが、東条氏とは、ただならぬ関係、いわゆる身体の関係になっていることは容易に想像がついた。
東条氏という人がどういう人なのか、編集長から聞いていたつもりだったが。自分で実際に彼とかかわりがあると言われている人たちの話を訊くと、ここまで温度差があるいうことは、
「東条氏自体が、相手によって態度を変える、カメレオンのような人だったのか、それとも、無意識の行動であって、彼が多重人格ではないかと思える。相手によって態度が変わるというのは、多重人格がそれぞれの人に出ているからなのではないだろうか?」
と考えられるのだった。
辰巳刑事が考えるに、普通であれば、前者のような人を想像するのだろうが、東条氏というのは、編集長の話では、
「いつも一人でいるような人だった」
と仕事上の上司からそのように見られているのだから、本当に人を騙す素質を無意識に身につけているのだとすれば、後者の可能性もまったく否定できなくなってしまう。
しかも、辰巳刑事は刑事という仕事をしていると、結構多重人格者というのを今までにも何人も見てきた。話だけを聴いていると、
「彼のような多重人格者というのが、結構いるのではないか?」
と思えるのも無理のない考え方であった。
「一体、どう考えればいいのか少し分からない気がしていたが、どちらにしても、この二つであることに絞ってもいいような気がしていた。
辰巳刑事は、そういう前提条件を持って捜査に当たっていた。ホームレスの捜査のついでに東条氏の行方を聴いているようにまわりからは見えるが、実際に事情を訊かれた人としては、
「この人は、ホームレスの話よりも、もう一人の情報を得たいという気持ちを持っているんだ」
と考えていたが。それは同時に。
「何か、この人は危険なことに足を突っ込んでいるかのように思えるんだけどな」
という思いを与えていたようだ。
だから、今まで誰も引き出せなかった人の情報を、辰巳刑事は難なく得ることができたのだが、その裏事情を知っている人は誰もいなかった。
そのように隠しながら捜査をしていたのであるし、そうやって捜査をする方が、事情を訊いている人が自分に対してどのような意識を持ってくれるのかということを分かっているかのようだった。
だが、捜査を続けていく中で、たまに、
「捜査の妨げになる何かが暗躍しているような気がして仕方がない」
という気になっていたのだ。
それがどこから来る懸念なのか分からなかったが、
「気のせいだったのかな?」
といつも最後には感じさせるのが、あまりにも最初から最後まで漠然とした感覚だったからだ。
最初は漠然としていても、それが次第に形になってきて、最後には、最初から意識していたかのような気持ちにさせることで、何かの情報を途中で得たとしても、それはあたかも最初からあったかのように思うところが、他の刑事とは違って、
「人によっては、短所に見えたり、あるいは長所に見えたりするところで、さすがに紙一重と言われる長所と短所だと言えることではないか?」
と思うのだった。
ただ、この感覚を辰巳刑事は自分では、短所だと思っていた。そして短所だと思っていることは、意外と意識の中で幅広い感覚を持っていた。
幅広く感じるのは、まわりに広がる光の輪のようなものに見えるからで、それこそ漠然としたものでしかないということを表していた。
辰巳刑事を見ている人たちは、まわりの刑事たちと、一般市民とではその見え方にも温度差があるようだった。
まわりの刑事は、辰巳刑事という存在を一種の目標のようにとらえてはいるが、どちらかというと、
「遠い存在」
という意識が強く、自分たちには近づけないオーラを感じていたようだ、
しかし、逆に街の人にとっては、
「いつでも自分たちに寄り添ってくれるような刑事さん」
という意識が強かった。
元々刑事というと、存在自体に嫌気がさすもので、
「自分たちとは住む世界がまったく違う」
と、いう思いを、自分たちだけではなく、警察からも思われていると感じているので、余計に警察に非協力的な人が多かったりする。
しかし、辰巳刑事にはそんな思いは感じない。それだけ、
「庶民的に見える刑事」
ということが辰巳刑事の真骨頂なのであろう。
そんな辰巳刑事に、新しい情報を与えてくれたのが、やはり市民だった。
普通の刑事であれば、一人で違う人も一緒に捜査していると思うと、却ってその刑事に不信感を抱くというものだが、辰巳刑事は庶民が抱いていた警察へのイメージをたった一人で覆すことができるほどの人物である。
そんな中、区の中での、
「影の長」
と言われている人物からあのホームレスが誰であるかということを、ある程度特定しているかのように言われた。
「辰巳刑事だから話すのであって、これは、よほどの確証が得られなければ、捜査本部で名前を出すことは控えていただきたいと思っているのだが、どうですかな?」
と言われ、辰巳刑事もこの人のいうことには一目置いているので、
「分かりました」
と答えた。
「その人物というのは、京極という男で、出版社の記者だということなのだが、この人物はあまりまわりの人から好かれているという人物ではないらしい。この男はカメラマン兼スカウトで、女の子の写真を撮って、そこから、タレントやグラビアアイドルのような原石を発掘するというそんな商売をしている人だというんだ。どちらかというと、あまり好かれる人物ではなく、胡散臭いと思われている人のようですね」
と聞かされた。
なるほど、この人の情報であれば、ある程度の確証がなければ、捜査本部に進言するのも難しいだろう。
しかし、辰巳刑事はこの話には信憑性があるような気がした。
彼には、編集長から頼まれたもう一つの仕事があったが、どうも形態は違うようだが、何となく、そのウラが被っているかのようなカメラマン兼スカウトの存在は、あながち結び付かないものではなかったからだ。
この違いを考えると、どこまでが信じられることなのか、またしても、疑心暗鬼に陥るそうになる自分を感じていた辰巳刑事であった。
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