第14話
ミラの葬儀が終わって、最初の学校登校日。先生は暑いだろうに黒い服を着ていた。
「みなさん、もうお別れが言えた人もいるだろうけれど、小林ミラちゃんが亡くなりました。死んでしまった、ということを、丁寧な言い方で亡くなった、と言います。それでも、あえて、先生は、思います。ミラちゃんが死んで悲しい。もう、ミラちゃんのおもしろい作文が読めません。ミラちゃんのドッジボールをする姿を、みられません。こんなことがあっていいのかな、って先生は思います」
森百合先生は、泣いていた。
信じられないような、でも、何人かがいっしょに泣いている。すずもたおも、音二郎でさえ、悲しそうだ。
「元気な姿を思い出すたびに、病気で頑張って耐えていた姿も思い出して、いろんなきもちになります。どっちのミラちゃんをおもえばいいのかな、って、でも、どっちもミラちゃんでした。これが、あのミラちゃの姿が、ミラちゃんの、一生でした!
どうか、みんなで覚えていましょう……」
そこから先は、みんなが泣き止むまで森百合先生は待ってくれてみんなして今日はミラちゃんに会いに行こうと決めました。朝礼と国語の時間は、そうしてすぎた。
(ミラがもしこの光景を見たら……)
その後の算数も給食も、掃除も、帰りの会も、森百合先生へ聞きたいことが、あって。
みんながミラの、小林家へ急ぐ中、先生は日誌をまとめて、いっしょに行こうとしていたところをつかまえた。
「森百合先生」
「森先生でも百合先生でもいいんだよ、ふくろう君」
大きく息を吸った。
「ミラが亡くなったのに、泣けません」
先生が無表情に、こちらをみる。
でも、すぐに
「思い出を、声に出していけば、自然と気持ちが込み上げてきて、涙がでるの。朝の先生は、そうだった。ほんとうに、心の底からこういう気持ちだった。嘘じゃない。涙も、嘘じゃない……」
そう答える先生の顔は叱られている子供のようだった。やがて、いつものニコニコ顔が消えて、また無表情になってしまう。
「さあ、ふくろう君、ミラちゃんに、お線香を供えに行こう。お手紙を書いてもいいし」
「先生」
「なに」
「そのお手紙、どうしてミラへの心配の言葉がなかったんですか。他の子とあそんだとか、ミラが行けない場所に行ったとか、そんなのばっかり!」
森百合先生の目が見開かれる。
「先生は、ミラのこと、心配したり、すこしでも長くいたい、っておもったことありましたか?!」
ふくろうはランドセルをつかみ、
「それじゃあ、線香あげ行くので!」
と右手を振って喪服の先生と、教室を後にした。
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