第10話
「ミラ」
ミラはやせていた。
「ふくろう、……」
話せないみたいだ。
「音二郎をつれてきてもいい?」
ミラはいやがった。どうして。
ミラのおかあさんが泣く。
「ふくろう君がいいのよ、きっと!」
ちがう!
ミラがいいのは音二郎だ!
もう一度白い梟に会って、秘密をのぞいてこなきゃだめなのか。そんなのずるすぎる。
「ミラ、じゃあ、みんなでお見舞いにくるのは?」
ミラの目がちかちかゆれる。
考えてくれているけれど、もう、ミラは何かを見て嬉しい、とか、だれかがそばいて安心する。そして、まいにち泣いている。
「ミラ、きらわれてもいいよ、でも音二郎はきらいにならないで、ミラのちかくにつれてきていい?」
ミラはいやがった。
いやがったけど、ミラの家の大きな庭の二十メートルくらい先から、音二郎と縁側のミラを見た。
しずかな音二郎はしゃべった。
「ちかづかなくていいの?」
「ミラがいやなんだって」
それだけしゃべった。
しばらく、縁側のミラとミラのおかあさんが親子をおもいきり、あじわっていた。ミラの髪をおかあさんがやさしくすいて、ミラは手も動かせなかった。
「病院にいかなくていいの?」
「もう家にいた方がいいんだって」
そのほうが家族といっしょにいられるから。
音二郎とは、同じクラスだけどはじめて喋った。
しずかなやつだから。
「音二郎、音二郎の秘密ってなに?」
「ミラにおしえるの?」
ふくろうはうなずく。
しずかな音二郎はしずかになってから、
「家の庭で、何もないところで、じいちゃんのたちのマッチとバケツの水で火遊びするんだ。でも、おとなのいるところで」
どういうことかふくろうはわかった。
「それミラに教えていい?」
「いいよ。」
音二郎は走って家の方、みんなが通るから出来上がったかたい道を走って帰って行った。
音二郎はいいやつだ、とふくろうは思った。
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