第8話

「しゃべるぞ」

梟が言った。

しゃべるたびにふしぎな色合いの変化を見せて、白くなる。

「『しゃべるぞ』、って覚えさせた人だれ。どっから逃げてきたの」

「ちがう、会話ができるぞ」

「……。うわあっ」

こころが通じ合ってる!

梟ってインコみたいにしゃべるかとおもった!

「わたしはなあ、梟ではない」

羽をすこしも動かさず、顔もまっすぐこちらを見るばかり。

「わたしはなあ、なぞをごしょもうだ」

「もうしゃべんないで、こわっ」

ふくろうは、いつもの森家の森からにげた。


つぎのひ。

「しゃべるぞ」

はじめからやりなおしだった。


「梟、おそったりしてこない?」

「わたしは梟ではない」

「白いの、茶色いの、どっち」

「わたしは、この森の土と風の使い。茶と白をもつものなり」

「……つまり、土が茶色で風は白い、ゲームの組み分けみたいなもの?」

「わけへだてなし。わたしはわたしなり」

「土と風はぞくせいがいっしょで、きゅうしょがないってこと?」

「わたしにはわからぬ。なにゆえ、土と風に、……ああ、土は、風が吹き過ぎればすなぼこりとなって身を打つ。ゆえに、おぬしのきゅうしょ。」

「いや、おれ砂にまけないし」

ふくろうは砂の怖さも土と風の化身のおそろしさもしらない。

「もう帰っていい?かあさんがたいへんなんだよ」

「おぬしの母、どうした。聞く」

「いいよ、たぶんきょうもたべまくってるから」

「かのうせい、かしょくしょう?」

木の棒を持ち、家へいきかけたふくろうが止まり、振り向く。

「なんの、かのうせい?」

「しょくもつを、たべすぎるかのうせい。心労、かかわることあり」

「しんろう?」

「しんぱい、よっきゅう、おさなきころのしょくもつのなさ、いろいろ。ちがうかもしれぬ」

「ちがうのかよ!ようするに心配からご飯食べまくるってことか?」

そうなの?おかあさん。

「しかし、ちがう。」

「なんで。」

「わたしは、土と風の化身」

「きいたよ、それ」

「おぬし、きいてみるとよい、が、きかないほうがまだよいかもしれぬ」

どっち?

森の中、他の動物達はいない。うっそうとしげるというよりは、きれいな林が立ち並んでいる壮麗さだ。そこに、からだを真っ白にと変えた梟が!

「なぞ!なぞ!おぬしの家のなぞは!もう見抜いた!」

つばさをおおきく広げ、緑と白のコントラストの中、黒いクチバシがカッカッと音を立てる。

「な、なに」

木の棒をなかば手放してふくろう君はしりもちをつく。

「おぬしの家には、幸福をよぶなにかがくる。これ以上は言えぬ。よって、おぬしがわたしになり、確かめろ」

森の中、音のしないつばさをゆらめかせながら、白い梟はまぼろしをおもわせるように、ふくろう君にせまる。

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