第5話

「ねえ、ふくろう」

「なに」

「ふくろうも吐く、ってクラスメイトに言われたら傷ついたでしょ」

「とうぜん」

じぶんは具合の悪い時だけに吐くのに森百合先生ってば、クラスメイトの名前の由来を調べましょう、意味を調べましょう、なんて作文の宿題を出した。一年生の時にやればいいのに。そしたらみんな忘れるだろうなあ。

じぶんのなまえがふくろうな理由。

それは、ぼくのお父さんが都会でふくろうカフェをやっていたからだ。お客さんとしてきたお母さんが求人広告を見て二人でふくろうカフェをして。時期が来たらふくろうたちはいい場所に引き取ってもらったり、残りはこの森が素晴らしいおとうさんの実家で鳥小屋を作って面倒を見ようとしていたけれど、餌の調達に田舎は難儀する、と考えて。結局仲間のお店になんとか分散した。おかあさんはふくろうたちと一緒にいけないことをすごく悲しんだ。それに悲しみは一つじゃなかった。引っ越してきてから自分が生まれて三人家族になった。

「ふくろう、梟ってさ、どう言う鳥かいろいろ調べた?」

「あんまり。だって、おとうさんおかあさんがふくろうカフェで出会ったからだし。作文でも書いたじゃん」

「ふくろう、梟ってね、いい鳥なんだよ、って、止まるの」

「いない。」

「えー。いなくなっちゃったの?」

「でも、」

ペリットだけが残されている。

「わああ、骨の集合体、ネズミの背中辺りかな、あと、もしかして梟、小鳥も食べる?羽ない?」

ふわふわとしたものも確かに見える。

「よくそんな見られるな」

「だって、本物を見る時はみんなはじめてはこうなっちゃうよ」

もういいけど、とミラは森の入り口へ戻ろうとして、

「そういえば神様、って、その梟、白かったの?だとしたらすごいじゃん!」

なんとなく、最初は大丈夫だったペリットにだんだん苦手意識が芽生えて、ふくろうは

「茶色もあったよ」

と、色が変化したことは言わなかった。

ミラと一緒に森の入り口、家の近くを目指す。

なんとなく、苔や木の根はびこる森を器用に歩くミラの後ろ姿を見ながら、ふくろうは、

ミラと結婚したらどうなるんだろう、と考えた。

古いいいなずけ、とかそういう風習はない。この村みたいな田舎から出ていくのも入ってくるのも自由。だけど、ちかくにいる女の子とこの先どうなるか、考えてみたことがない男子なんているのかな。

でも、いろんな人がいて、いろんな愛や気持ちがあるから、少しずつ、じぶんたちは学校が教えてくれるから。だいじょうぶなんだろうな。

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