第2話
小学三年生。
八才の森ふくろうは、たくさんの森さんたちの中で育った。隣の家も森さん。通学路の途中の農家の人も森さん。担任の先生は森百合先生。
山の中に、一輪の白く大きな、背の高い百合の花を見つけたとき。
この百合は百合先生だから傷つけてはいけないと感じた。百合先生は結婚している。何歳かは知らないし、誰も気にした事がない。
気になるのはクラスメイトのなかで誕生日がいつでだれがもう九歳で、だれがこれからなのか。
クラスメイト。
メイトってなんだろう。
ふくろう君たちは「このクラス!」という言い方をする。
ふくろうにはヒミツがあった。しかし、それは、あまりにかなしいらしいので、おはなしにのぼることはない。
だから、ぼくたちわたしたちのふくろう君がその身をもって生き抜くしかないのだ。
クラスメイトたちはみんな可愛い名前が多い。
苗字はやっぱり森が多くて山田という苗字とどっちが多いか楽しみにしている。これから先、転校生が来て、珍しい名前とかだったらそれだけで盛り上がる。氷の教室みたいなのをちぢめて、氷室とか。難しい響きだけれど和菓子の道明寺とか、書こうと思えば書けるんじゃないか、という苗字たち募集中だ。結ぶに城で、結城なんて書けない漢字のカッコいい人も世の中にいるらしい。マンガで流行った名前とかほんとうにその名前の人がいるから学校やネットでは発言、自分が言うことばには気をつけましょう、という先生たちのことばがこの間全校集会で体育館であった。
ふくろうも、じつは、じぶんのなまえがきらいかもしれない。タカとか、強そうな鳥の名前を組み合わせても良かったはずなのに、ふくろうのなまえは森ふくろう。
ふくろうは学校から帰ってランドセルを置いて宿題を終わらせると、ぜったいに自分の家の周りの森へ、クラスメイトと遊びに行く。
ふくろう、いざ森のなかへ。
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