第3話 王子の死

 人間には天国が必要だ。そう思っている。そうでなくてはいけない。俺は真っ白く輝く処をひたすら落ち続けていた。


『君も死んじゃったの?』


 俺の隣にこの間弔った少年がいる。一緒にどこかへと堕ちていく。


「そうみたいだな」


『残念だね。でも君には感謝が言いたかったんだ。ありがとう。僕の最後を見送ってくれて』


「べつに構わないさ。君も俺と一緒ってことはこのまま天国に行くってことかな?」


 このまま安らかなところへ行けるならかまわない。もう疲れた。あの世界は汚れてる。生きていくことが罰そのものだった。罪を犯す前に罰が先にあった。だから俺たちは罪を犯さざるを得なかった。悪さはさんざんやった。でも避けられない罪を重ねても重ねても誰の笑顔も見れない最後だった。もういいだろう。十分だ。


『ごめんね。君は天国にはいけないんだ。だって君は優しすぎるから。あの世界に君は必要なんだ』


 少年はそう言って、俺の胸を押した。すると今まで堕ちていたはずの体が浮き始める。少年と俺の間に距離が空く。俺はとっさに手を伸ばした。だけどその手はもう届かない。


「待ってくれ!俺も…!」


 少年は手を振る。それはさようならの合図。彼と俺が出会うことは二度とない。そして浮いていった俺の体は闇に飲まれてしまった。


















Vinicius:the Monomyth



























 闇の中をフラフラと歩いていた。


「俺は…俺は…」


 どこに向かって歩いていいのかわからなかった。


『大丈夫。ママがそばにいるからね』


 暗闇のせいで解らなかったけど、俺の右手をママが握っている。そうだ。大丈夫だ。だってママが俺のそばにいるんだ!もう何も怖くなんかない!


『駄目よ。誰かに手をひかれることを待っては駄目。お母さんはあなたが自分の足でちゃんと歩けるってわかってるんだから』


 お母さんが俺の左手を優しく握る感触を覚えた。俺はその手に励まされて支えられて一人で立てるようになったんだ。


『あらあらあたくしは困ってしまいましたわ!一人の子に二人も母がいるはずなんてないのですもの!なら間違っているのは子供の方!ここに剣を!二人の母のために子を真っ二つにしてあげましょう!!』


『やめてください!そんな恐ろしいこと!この子は私の子!私の子に違いありません!私ははっきりと覚えております!ええ!腹を裂く痛み!それは愛を揺るぎなくする証!私はその痛みを覚えております!だから私が母なのです!!この子を二つにするというのならばこの私も二つにしてください!この子を産んだ痛みに比べればこの身を引き裂かれることなど大したものではありません!』


 ママの両手が俺を抱きしめる。俺と共に斬られてくれるという。そうか。ママは俺を誰よりも深く愛してるんだ!


『その子を斬るなんてやめてください。その子が着られるくらいならば私は母であることを辞めます。だからどうかおやめください。その子を斬らないで。代わりに私が斬られてもいい。だからその子を斬るのはやめて』


 お母さんの手が俺から離れた。俺は安心してしまった。これで斬られることはないのだから。でも。でもお母さんは俺の代わりに斬られてしまう。そんなの嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。


「ああ…お母さん…!ごめんね!ごめんねぇ!俺…駄目だったよ…お母さんが守ってくれた命なのに…幸せを失ったままなのに死んじゃったんだ…ああっ!!」


 全身を包んでいた暖かさはどこかへと消えていった。そうだ俺は死んでしまった。奪われたまま、譲られたまま、何もできずに。


『でも何もできないことを受け入れていたのではないですか?』


「違う。何もしたくなかったんだ。何かをすれば、何かが変わる。そうしたらもう一緒に入られない。俺はキーファーたちとずっと一緒にいたかったから、何もしたくなかったんだよぅ」


『そうです。人は何かを成せば孤独になります。それは死よりもなお残酷。あまりにも辛く惨い。王子のままではきっとその荒野に耐えることは出来ないのです』


 誰かの声だけが甘く冷たく響く。


『だから転生・・しましょう。夢を成せば孤独!人の子にはその重さに耐えられない!だからあなたは転生・・するのです!!』


「そっか。生き返れるわけじゃないんだな。生まれ変わることしかできないんだ」


『そうです!あたくしはのぞみ祝います!王子の死を!あたくしはのぞみ呪います!!王の誕生を!!』


 そして闇は眩しく崩れていく。俺は目を瞑る。そして再び目を開けたときには死んだはずのコックピットに座っていた。


『はっぴーばーすでぃとぅーゆー』


 その声と共にコックピットに明かりが灯る。さらに周囲の風景がモニターに映し出される。爆炎に包まれたハンガーは今にも崩れそうになっている。他に安置されていた機体たちはすでにこの場を離れたようだ。


『はっぴーばーすでえぃいゆあまじぇすてぃ!!』


「わかってる。もう何も成さないことはできないんだ」


 俺は操縦桿を握り、機体に向かって囁く。


「蘇れ、ディオニューソス」


 そして機体は立ち上がりはじめる。周囲の爆炎はさらに激しさを増していく。ハンガーは崩れ去った。だけど俺のディオニューソスは爆炎の中で傷一つつかずに堂々と立っていたんだ。















Chapter1









『Calling』









次回予告!!


あたくしの推し王さまことヴィニシウスさまはディオニューソスを起動させこの世にご降臨遊ばれましたわ!


ですがまだ危機は去っておりません!先に目覚めた四機の人型機動兵器プーパ・エクテスは起動しないはずのディオニューソスを見て、ヴィニシウスさまの生存を察し再殺を目論見ます!


愛憎入り乱れる戦場は王者の格を人々に鮮やかに魅せつけます!ですがそんな晴れの舞台を邪魔する巨大な影が横浜に襲来!いったいその正体は?!


果たして我らが王は何を成し、何を成さぬのか。それを共に見届けようではありませんか!!



次回「はじめてのかいじゅう♡」



って!?タイトルでネタバレですか?!

フォローして星★を投げて待っていやがれですわ!!






***作者のひとり言***



好きやねん。ロボットアニメが…。

好きやねん。次回予告が…。




次回こそやっと

かいじゅーvsろぼっとぅ!だ!楽しみだぜ!!




(*´Д`)なんかこう久しぶりに上等な中二病スメルが香ばしくて書いていて楽しかったです。



ではまた。


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