第2話 探索
「ひとまずはこの学校のマップを書こう。迷子になってはピースを拾っても戻ってこれない…」
「俺達は在校生だぞ?そんなのいるのか?」
「でも、暗いですし…明かりは外からしかないので零さんの言う通り迷子になる、可能性は高い、かと。」
「安全に越したことはないわ、それに零さんはデスゲーム作品を何個か読んでいる人よ。素人の私達より詳しい零さんに任せましょう。」
私達は多目的室にて作戦会議をしていた。
この学校の地図そして安置が何処なのかなど集合場所を決めていた。
私は多目的室の教卓に入っていた紙を取り出して地図を書き始める。
「よし!出来た。」
「安全地帯は多目的室と…」
「放送室、そして隣の2−Cね。」
「『KMP』を集め終われば放送室に居るザカリーさんに会いに行けばいいんですよね?」
「そうね。」
「んで、『KMP』?ってやつは何処にあるんだよ。一つは廊下にあるのは分かるが…」
「でも、何処の廊下なんでしょうか。」
ここは四階建てでその中の何処かの廊下…分からない。
「……二階の階段前…」
「「「「え?」」」」
皆がその言葉に驚く。
言葉を発したのは久野歌楽だった。彼女は無口で今まで一言も話さなかった。
「歌楽さん…何故そうだと思ったの?」
「ここに移動する時、後ろを向いたら映像で見た明かりがあった。それと映像は暗かったけど薄く階段が映ってた。」
「流石…でござるな。」
歌楽の目の良さに驚いておるのは相模刃間だった。
彼がござるという語尾なのは昔から受け継がれてきたものだと言っていた。
「それで、どうやって『KMP』を探すのでござるか?」
「一人は…駄目ね。何かあったら不安だわ。」
「なら、二人組を作ればいいんじゃないの?」
提案をするのは三倉世瑠だった。
「なら早速作りましょう。」
咲良の言葉でクラスの皆は二人組を作り始めた。
「零ちゃん!一緒に行こうよ。」
私に声をかけたのは志島美香だった。美香は私の幼馴染みだ。
「ごめん美香、実は歌楽さんから誘われてて…」
「そっかぁ。なら分かったよ!拓哉!一緒に組もう!」
「いいぜ!」
ぴったり二人組を組めた私達は別の問題に当たっていた。
二人組を作ったは良いものの、皆は死にたくないと言い殆どの人がこの多目的室で待つことになっていたのだ。
死ぬのが怖い…か。身勝手な様な気はしたが、仕方無いと思った、私達は今生きているんだ。死ぬのが怖いなんて当然の事なのだから。
『KMP』を集めるために動くのは四組だけだった。
「一つの階に一組ね…そんなんで探索が出来るのだろうか…」
出来る訳がない。そう思いながらも階層の担当を決めた。
「四階は零さんと歌楽さんにお願いしても良いかしら。」
「問題無いよ。」
「…分かった。」
四階か……遠いな。一番危ないのは四階、そんなものを託された私は少し胃が痛くなった。
「三階は私と刃間さんでも良いかしら。」
「我は問題無いでござるよ。」
三階は雛井咲良と相模刃間…ここは問題無さそうだ。何かあれば刃間さんが持ってる竹刀で何とかなるだろう。
「二階は美香さんと拓哉さんね。」
「分かったぜ。」
「任せて!」
二階なら…あの二人でも問題は無いだろう。安置に一番近いのだから。
「それで一階は美鈴さんと世瑠さん。宜しくね。」
「任せて、ください。」
「任せろい!」
美鈴さんが居るなら、適切な判断が出来るはずだ。
そう思いながら、担当が決まっていった。
「じゃあ各自地図は持ったわね。探索を始めるわよ!」
咲良の言葉で私達は動き始めた。
支給されるのは私が書いた地図だ。
「…四階か何気に初めてね。」
「当然じゃないの…?」
「そう…なのだけども。」
話したことの無い人と二人きりなんて、何か緊張するな。
そう思いながらも歌楽と階段を登り終えた
「ここには放送室がある。安置はそこだけ…」
「そう…ね。」
「ん?どうかした?」
「い、いえ。歌楽さんって案外喋る人なのね…学校だと喋ってる感じしなかったから。」
「相手と話が通じないだけ…話すことはできる。」
「そう。」
何故こんなにも居心地が悪いのだろうか…
歩いていると、歌楽は突然私の前に出て質問をしてきた。
「零さん…貴方は司会者である、彼女の事を知っている…又は既視感がある……そうでしょ?」
「…それは何故?」
「貴方は私と話す時、私を良く知らないから相手を傷付けない言葉は何かと探ってる……でも、あの司会者の時だけは探らず、戸惑わなかった。それは既視感があったから、知っていたから…違うかしら?」
「……えぇ、そうね。私は彼女に既視感を覚えたわでも、私は彼女を知らない…」
「だから『KMP』を探すのよ。それに私だって彼女には覚えがある…きちんとは覚えていないけど、貴方と話していてとても楽しそうにしていたわ。」
「私が彼女と?」
「ええ…、これがホントかは分からないわ。」
「…そっか。」
歌楽はザカリーを知っている…それはザカリーと関係が深かったからなのかは分からないけど、彼女が私と話していて楽しそうだった…それは私が彼女と親しい関係ということだ。
そう思った瞬間、心が少し軽くなった。私は彼女を知っているという確信を持てたから。
「で、結構廊下を歩いたはずよね…」
「その筈だけど…」
「じゃあ、何で私達は『KMP』が見つかってないのよ!」
「…零さん、貴方って不運なの?」
「そう言う問題じゃないでしょ!」
廊下を歩き初めて約二十分は経ったはずなのに、『KMP』どころか騎士すら見かけない…一体どういう事なの?
ゲームでもこんなに見つからない事無いわよ、それに光っていて暗い廊下なら見つかるはずなのに…
他の皆は見つかっているのかな…もしかして四階にはないとか?そんな理不尽ってありなのか?
「もう少し歩いてみましょう、見つかるかも知れないし。」
「一周は絶対したって…何故だ。」
「教室とかにあるのかしら?」
「良くそんなに呑気に居られるね。」
「零さん、私だって焦ってるわよ。一周はしているはずなのに騎士も見当たらない…何か隠してるとかしか言いようがないもの。」
「そっか。」
私と歌楽は再び、長い廊下を歩くことにした…
騎士のカケラ 柏陽シャル @black_person
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