デスゲームの始まり

第1話 面影

 見渡すと何時もの教室、だが何かが違った。

手は縛られ、周りには倒れているクラスの皆…一体何が起こったと言うの。




 「おや?起きたんだね。」

「……。」

私は目の前に居る少女を睨む。彼女が誰かは分からないでも、銀髪でショートの彼女を見ると何故か既視感を覚えた…何処かで見たような、大切な何かを忘れているような感じがした。


彼女が君が一番早かったねと言いその言葉に懐かしさを感じた、私は目の前にいる貴方を知らない筈なのに。


 「ここは何処なの。」

「ん?ここは君達が何時も楽しく騒いで、時には静かに板書をする所…教室だよ?それも君達のクラス2−Cなのに忘れてしまったのかい?」

「それは知ってるわ。でも、違うのよ私達が居た場所と違う。外も赤いしそれに貴方の周りにいる騎士達は何なの?」


 外は夕焼けとは言えないほど赤かった。そして彼女の周りには騎士達が居て、起きて暴れるクラスメイトを抑えていた。

泣きじゃくる者にはハンカチを渡している騎士も居た。まるで意識があり、中に人が入ってるような感じがした。


 「あぁ、そうだなぁ。詳しく言うとここは僕が創った仮想世界、皆に会えなくて寂しかったから創ったの。」

「はぁ!?意味わかんねぇよ。俺達はお前のことなんか知らねえし!」


 声を荒げるのは荒野拓哉あらのたくやだった。名の通り荒々しく傲慢、でも時には優しい一面もある良いやつだ。


 それにしても、創ったっていうのは、一体どういう事なの。彼女は何かの能力者なのだろうか。


 「拓哉君のことは無視をしといて、僕の周りにいる騎士達は僕のトモダチだよ。それと僕は能力者じゃないよ。」

彼女はニコリと笑みを浮かべる…。心を読まれていた?



 「さてさて!お話はここまで!クラスの皆も起きたみたいだし、本題に入ろうか。」


彼女が手を叩くと、教室の電気が消えた。その瞬間テレビに映像が映し出された。

映像には廊下にピースが落ちている映像だった。

そのピースは光っていて暗い廊下を照らしていた。


「これは『KMP』と言って大事なカケラさ、皆にはこれを集めて貰いたいんだ。」

「集める…?」

「集めるだけなら簡単じゃねぇか。」

「うんうん。」

クラスメイト達はほっとしていた。


 「チッチッチ、残念。ただ集めるだけじゃないよ。それじゃ面白みが無いからね。これを集めている間に、僕の騎士達が廊下に移動する。そして騎士達は『KMP』を大事にしているからそれを集める者達を許しはしない。」

「どういうことだよ。」

「……集めている間に、追いかけられるって事なの…?」


私は疑問の目で彼女を見ると彼女は嬉しそうに笑う。

れいちゃんその通り!流石、僕のオトモダチだね。これを集めている間、騎士達に追われることになる。だから気を付けて集めるんだよ。どこかに隠れるのも良し、逆に戦うのも良し全ては君達の選択次第。」

クラスメイト達が『死』を確定したような顔になっているのを見て彼女は嬉しそうに微笑んだ。


 「そもそも、『KMP』ってなんですか?何かの略なのは分かるのですが。」

室長の雛井咲良ひないさくらが質問をする。


「『KMP』ってのは、言わば記憶さ。元々君達には僕のことを思い出して欲しいから記憶のカケラである『KMP』を探すように頼んだんだよ。僕は皆が大好きだからね。」


「勝手な事を言いやがるぜ。」

「『KMP』を集めてどうするの。記憶を取り戻してどうするのよ。」

「『KMP』を全部集め終わったら僕の所においで、僕が質問をするからそれに全問答えれたら君達をここから出してあげる。もちろん、集めなくてもいいよ?ただ、ずっとここで暮らすことになるけどね。」


ずっとここで暮らす…か。死にはしないけどこちらに利益は少ない、私達にとってここは集める選択をするしかない。


「…その話、乗るわ。」

「はぁ!?何でだよ!集めなくても良いなら集める必要はねえじゃねえか!」

「集めずにいてずっとここで暮らすのは嫌なのよ、お母さんやお父さん達に合わずにいるのは嫌…ここまで生きてこれたのはあの人達のお陰なのに…。ここでモタモタして恩返しが出来ないのは生きるのより苦しい。」


「でも、生きてなきゃ意味ないだろ!生きてねえのに恩返しなんて出来る訳がない!」

「そうかも知れないけど。集めなかったら会えないのよ。それに、私は彼女の事を思い出したい。彼女が何者なのか。私達にとって彼女はどんな人だったのか気になるの。」

「…それはそうだが。」

私の言葉に反論が出来ないのか拓哉は俯向く。



 そんな議論をしている間に私は気になったことがあった。

「皆、あそこの机を見て。」

私は一つの机を指差す。その机には花瓶が置いてあり、額縁があった。


 机の前に立つと額縁には彼女そっくりの写真が飾られてあった。

「彼女…もう死んでるんですか…?」

「嫌だなぁ。僕はまだ死んでないよ。ここの学校の皆が僕のことを忘れて死んだことにしているだけさ。」


咲良の言葉に彼女は困ったような顔をしていた。

 花瓶には花が添えられていた。


「花に詳しい人っている?」

「それなら美鈴みすずちゃんが詳しいはずだよ。」

「え?わ、私!?」

 沢野美鈴さわのみすず、美化委員の副委員長で花が大好きな彼女なら分かるかも知れない。


 「この花はジニアって、言います…ジニアの花言葉は、『不在の友を思う』『注意を怠るな』です。」

「不在の友を思う…か。」

(やはり、友達と関係しているのだろうか。彼女があそこまで友達という言葉に縛りついているのは何かしら理由があるはずだ。)


 「ほらほら、そんな所で道草を食ってないで、『KMP』を探しに行きなよ。」

彼女は私等を急かし始めた。急いでいては騎士達に殺される確率が高くなる…今は落ち着かなくては…


「おい、零!早く行くぞ!」

「ちょっと待って拓哉…。」

「あぁ?なんだ、まだあいつに話すことがあるのかよ。」


「えぇ…」

「おや?僕に質問かな。何でも聞いていいよ。」

「なら遠慮なく、貴方は私達に何を求めてるの?」

「そうだねえ。僕はただ君達に僕の事を思い出して欲しい、ただそれだけなんだ…」

彼女は少し、寂しそうな顔をしていた。


「他にはあるかな?」

「後一つだけ…貴方の名前は?」

「名前…か。本当の名前は教えてあげられないけど一先は『ザカリー』とでも呼んでくれ。」

「分かったわ」


 質問をし終えた私達は隣の多目的室に移動し作戦会議をし始める事にした。















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