祝報に変えて

あきかん

 

 もし仮に、人を殺す選択を君がしたのなら

 僕は君に嫉妬するだろうな


 もし仮に、その選択を後悔している君を見たとして

 僕は君にかける言葉を持っていない


 もし仮に、君が自殺を選んだとしても

 どうせ僕は何も心は動かずに

 君のことを忘れていく


 もし仮に、君の歩む足が止まったとしても

 僕は君のために足を止めはしない


 もし仮に、僕の前から君が消えたとして

 僕が最後に忘れるのは君の小説の事だ


 もし仮に、君から声をかけられたとして

 僕に構うなと言ってしまいそうだ


 小説で救われるのは

 一瞬で

 少し耐えられるだけ

 それが続くわけでは無い 

 

 僕が歩いた道中に

 幸せが転がっていたかもしれないが

 それに気づかず進んできた


 人生には時に人を殺す選択を迫られる

 僕はそれから目が合わせられない


 あの選択をした君は

 間違い無く僕より先を歩んでいる


 どうせ碌でも無い人間だ

 僕も君も

 優しくはなれない


 君と選んだ本の中に

 強くなければ優しくなれない

 と、あったんだ


 断言する

 いずれ挫折する

 あの選択をしたから君が

 強くなったわけでは無いのだから


 羨ましい

 ただ羨ましい

 妬ましい

 勇気を無くした僕にはもう出来ない事だから


 記憶から消されることを僕は望む

 できれば声から忘れて欲しい


 晴れた日も

 雨が降っていても

 変わらず

 外で街を眺める

 傘もささずに


 もし仮に

 僕を雨宿りに

 使うとして

 濡れることは

 覚悟して欲しい


 僕は君に

 サヨナラを言う

 練習はしない

 別れる時は

 会えないのだから


 おめでとう

 ではない

 これからだよ

 も違う

 ただ少し

 寂しい気がしている


 振り返らないで

 過去は置いて

 僕もそこに捨て去って

 先へと進んで欲しい

 転ぶことがあるとしても 

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祝報に変えて あきかん @Gomibako

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