第9話 巧妙なQRコード
業療法士の夢が費えた刹那だった。
頚椎骨折、脳挫傷、脳細胞粉砕、即死だった・・・。
「何で身投げをしたんだろう? でも、来月には結婚式だって、俺にスピーチ頼むなんて言うから準備してたんだけどね・・・。」
作業療法士長嶋茂(ながしましげる)享年23。
死の因果は不明で、県警も死因は自殺と断定。
原因は不明で迷宮入りかと、思われた。
が、キープアウトのパッキングテープを遠巻きに現場検証を涙が枯れた瞳でマジマジと見詰めまた新たな悲しみに暮れる御園陶子(みそのとうこ)は新たなエビデンスを提出する為に県警に接近していた。
長島茂の婚約者御薗陶子は茂が生前通信利用していたラインとメッセンジャーアプリケーションを2件とも提出した。
「初めまして私は、バージニア州リッチモンド出身ののキャンベラ医師です。
米軍と一緒にエチオピアで行動していますが、彼らはコロナウィルスへの防御策を知っていますからここはとても安全です。
そして新たな任務が発生して、ここには長い間、滞在していないのでラインアプリケーションは持ってますか?」
「私と友達に成りたいならQRコードを送信して下さい。
これは私のQRコードです。貴方の行に追加してください。」
当たり障りの無い文章だったか、こちらからQRコードを送信しようならスマートホンを機種変更しない限り一生着き纏われる恐れがある。
幸い茂は、QRコードを未送信のままだったから賢明な判断だと評価された。
県警から評価されたと聞いても陶子の心根は変わらなかった。
増してやその怒りは増幅されて行った!
キャンベラの顔や容姿を観てみたい。それが県警への答えだった。
結婚を間近に控えての婚約者、茂の裏切りは陶子を如何ほどのランクに置いていたか・・・。
「たかが知れてるわ。」寂しい眼をして顔を伏せた身動ぎ一つもせず、こう呟いた陶子の気持ちを察するに余りある。
しかし女のプライドをズタズタに引き裂いたリッチモンドの女は誰?どうせみすぼらしい身分の女で外人特有の豊満な身体を見せ付けて茂を誘い蓄えを奪い取った! に、違いない。
「日本に来て貴方と結婚し、医院を持つわ。貴方はそこの院長となって辣腕を奮って下さい。」「それでタリバンから押収した箱の中身を保管する為に貴方に送る。赤十字の女がイギリスから来て貴方の住所を持ち帰りました。」
「そして箱に現金を詰めています。合計300万ドル。」
日本円にして約3億円だったが、大量のドル紙幣がジュラルミンのトランクケースに詰まっている画像があった。
「ロックを掛けシリアルナンバーを打ち込んだ。」
厳重にロックをしたケースの画像が、誰が見ても本物だと思うに違いないと、陶子は思っていた。
「ロックを開けるにはシリアルナンバーは重要です。」
「ロンドンからフランスへ運びそこから税関を経由し、船を出します。」
事務的に手馴れた文章だった。
きっと幾人かの男性を罠に嵌めたのだろう。
陶子は人のラインを覗き見する癖など無かった。
所謂これは茂の為の復讐! 及び私の復讐でも有る。
肉食系女子の片鱗を見せていた。
負けない! 自分にそう言って聞かせた。
キャンベラの嘘を暴く!
「私はもうすぐしたら米軍を退役します。その後は日本に来て貴方に投資します。
私はリハビリ病院を建て貴方を院長に擁立します。
私の国では夫をたて、夫に尽くす事は当たり前です。私が日本に来たら私の手料理をご馳走しますからどうぞ食べて下さい。そして私はあなたと一緒に寝起きをしますからどうぞ愛して下さい。私は貴方を心から愛しています。
キャンベラは痛恨の
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