第8話 絶望のダイビング
「戻る処は同じ鞘」
医療センターの4階病室のバルコニーは誰一人立ち入る人影が無く、そこは無用の長物と、化していた。
4階ともなると、ベランダ側の窓をガラガラと、開けると強風が断続的に身体を殴られる様な感覚があった・・・。
徐にフェンスに足を掛けよじ登る。
強風が身体を包み空中へ誘う様な感覚、一瞬笑った!
フワッと身体が浮いたかと思うと、一気に垂直に堕ちて行った! 落下の衝撃音は、病棟のパティオの芝生が吸収していた。
作業療法士の夢が費えた刹那だった。
頚椎骨折、脳挫傷、脳細胞粉砕、即死だった・・・。
「何で身投げをしたんだろう? でも、来月には結婚式だって、俺にスピーチ頼むなんて言うから準備してたんだけどね・・・。」
作業療法士長嶋茂(ながしましげる)享年23。
死の因果は不明で、県警も死因は自殺と断定。
原因は不明で迷宮入りかと、思われた。
が、キープアウトのパッキングテープを遠巻きに現場検証を涙が枯れた瞳でマジマジと見詰めまた新たな悲しみに暮れる御園陶子(みそのとうこ)は新たなエビデンスを提出する為に県警に接近していた。
長島茂の婚約者御薗陶子は茂が生前通信利用していたラインとメッセンジャーアプリケーションを2件とも提出した。
「初めまして私は、バージニア州リッチモンド出身ののキャンベラ医師です。
米軍と一緒にエチオピアで行動していますが、彼らはコロナウィルスへの防御策を知っていますからここはとても安全です。
そして新たな任務が発生して、ここには長い間、滞在していないのでラインアプリケーションは持ってますか?」
「私と友達に成りたいならQRコードを送信して下さい。
これは私のQRコードです。貴方の行に追加してください。」
当たり障りの無い文章だったか、こちらからQRコードを送信しようならスマートホンを機種変更しない限り一生着き纏われる恐れがある。
幸い茂は、QRコードを未送信のままだったから賢明な判断だと評価された。
県警から評価されたと聞いても陶子の心根は変わらなかった。
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