第4話 違うよ

俺は全てにおいて孤独だ。

その中で俺を助けてくれたのが鍋島だった。

だが.....その鍋島にも裏切られ。

俺には正直言ってもう希望は残って無いと思っていた。

のだが。


「ねえねえ」

「.....?.....横山。どうした」

「休み時間.....時間無いけど何処に行くの?」

「.....ああ。ちょっと飲み物をな」

「そうなんだね。じゃあ私も行こうかな」


横山沙羅。

俺に何故か話し掛けてくる女子。

より正確に言えば横山はクラス委員。

俺とは.....天地の差がある。

だが何故か不良の俺に話し掛けてくる。


「.....一緒に.....俺と一緒に動くのはマズイ。俺なんかと.....」

「そんな事ない」

「.....だが」

「私は気にしない」


言いながら俺を真っ直ぐに見てから笑顔になる。

それから俺の背中を押してくる。

さあ。行こう、という感じで、であるが。

俺はその事に慌てたが。

そのまま結局、横山は自販機まで付いて来た。


「私、何にしようかな」

「.....」


俺はその姿を見ながらブラックコーヒーを買う。

すると横山は、あ。それ買うの?、と聞いてくる。

その言葉に、ああ。そうだな、と返事をする。

そんな返事に横山は、そっか.....うん、とニコニコで笑顔になる。


「私はブラックは飲めないなー。でも甘いコーヒーなら」

「.....横山」

「うん?」

「.....何で俺なんかに関わる?.....俺は.....お前の側に居たら絶望にしかならない。.....不幸にしてしまう」


そんな言葉に小銭を入れた手が止まる。

それから俺を見てくる。

先程とは違って悲しげな顔で、何でそんな事を言うの?、と。

俺はその顔に、いや。.....だって.....、と言うが。


「私はそんな事は無いって言ったよね。.....私は君と居て楽しい。.....言ったら悪いけど彼女さんが居なくなってもっと君に接しやすくなったって思う」

「.....!.....横山.....」

「私は.....一緒に居る事で学べる事がある」

「.....俺はそんなに良い奴か?」


周りが認めてないだけ。

貴方も個性。

私も個性。

だったら個性は無くしちゃダメ、と俺をジッと見る。

そして笑みを浮かべた。


「私は貴方を助けたいんだ」

「.....有難い事だが。.....俺は.....」

「あれを言えばこれを言う。.....もー!!!!!卑屈すぎるよ!」


いきなり俺の下で頬を膨らませる。

それから見上げてきた。

そして頬に手を伸ばしてくる感じを見せる。

俺はその姿を驚きながら見てくる。


「私は.....楽しいから.....明るく行こう。明るい君が良いよ」

「.....横山」

「だから気力出して。ね?」

「.....」


満面の笑顔の横山。

俺はその姿を見ながら苦笑する。

それからブラックコーヒーを飲んだ。

そして横山を見る。


「.....横山。お前は身長何センチだ?」

「私?私は160センチ」

「.....俺は175センチだ。.....結構差があるな」

「そだね。.....えへへ」


また笑顔を浮かべる横山。

そしてニコッとしながら甘いコーヒーを買った。

それから飲み始める。

俺はその姿を見ながら、甘いのが好きなのか、と聞くと横山は、うん、と頷きながらペットボトルを見る。


「甘いのが好きだよ」

「そうなんだな」

「.....恋もきっと甘いだろうから」

「.....そ.....そうか.....しかしビターだぞ。現実は」

「分かる。.....君を見ているからね」


だけど.....、と言いながら俺に縋って来る横山。

な、何をしている。

思いながら俺は横山を見ていると。

横山は柔和になって俺を見上げてくる。


「ビターだろうけどね。全てがビターって訳じゃ無いと思うから」


言いながら横山は離れる。

それから俺を改めて見上げてから、じゃあ帰ろうか、と言い出す。

俺はその姿に、あ、ああ、と返事をしながらそのまま帰宅する。

何だったのだろうか。


「あ。今日の事は内緒にお願い」

「.....え?あ、ああ。お互いの保身の為にもな。大切だ」

「違うよ」

「え?」


横山は唇に指を添えながらそう返事をする。

それから階段を登って行く。

俺達はそのまま教室に戻って来た。

因みに教室では.....俺が横山をカツアゲしたという感じになっている。

変わらずだな、と思ったのだが。


「ん?違うよ。.....私が彼を誘って飲み物を買いに行ったの。社会知識を学ぶ為に」


そんな感じで嘘を話した。

周りは、へ?、という感じになる。

何でそんな嘘を吐く。


思いながら俺はビックリしながら横山を見る。

横山は俺の視線に気が付いた様な感じで俺に赤くなって手を振りながらニコニコと笑顔になった。


「.....?」


俺は意味も分からず横山に視線だけで返事をしつつ。

それからブラックコーヒーを飲んだのだが.....誰か中身をすり替えたか?

かなり甘く感じるんだが。

どうなっている。

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