第3話 孤独に差し伸べてくる手

横山が優しかった。

俺はそんな横山のサポートを得てからそのまま雨が止んだので家に帰る事にした。

それから玄関に向かう。

すると横山が俺を見てくる。


「山形くん」

「.....何だ?」

「今日は.....来てくれて有難う」

「.....寧ろ俺の方が世話になった。.....今日は有難うな」


俺はそう言いながら横山を見る。

横山はそんな俺に対して、怪我.....傷んでない?大丈夫?、と聞いてくる。

そんな言葉に、ああ、と返事をする。

それから俺は横山に笑みを浮かべながら、世話になった、と言う。

そして立ち去ろうとした時。


「待って」

「.....?」

「これ持って行って。傘と.....」

「.....これは何だ?」


これは里芋の煮っ転がしとか卵焼きとか入ってる。

家に持って帰って。

明日まで持つから。

だから、と赤くなりながら横山は俺を見上げる。

俺はその姿にビクッとしながら赤面した。


「.....ここまでしなくても良いのに」

「君の事が心配だから」

「いや.....俺の事を心配してくれるのは有難い。だけど.....お前もいっぱいいっぱいだろうに.....感謝だ」

「私は確かにいっぱいだけど。.....でも私は.....君程じゃないから」

「.....俺程じゃないって.....」


私は君ほど絶望の人生じゃない。

その.....私は虐待とか受けてないから.....だから。

私は貴方と分かち合いたい.....って私は何を言っているんだろうね。

と言いながら横山は苦笑する。

俺はその姿を見ながら柔和になる。


「.....そうなんだな」

「うん.....だから君をサポートさせてほしい」

「.....横山。一つ言うが俺はあくまで不良だ。.....だからこそ俺はお前とは.....」

「知ってる。.....うん。.....だ、だけど」


言いながら俺に歩み出して来る横山。

それから俺を見上げてくる。

な、何だ?

俺は目をパチクリしながら横山を見る。

横山は俺を見上げたまま赤面してから横を向く。


「私は貴方が心配です。クラスメイトとして」

「.....クラスメイト.....か。.....有難うな。それでもこんな俺を気に掛けてくれて」

「うん。.....明日も学校に来てね」

「.....ああ」


そして俺はそのまま帰宅する。

それから.....真っ暗な部屋を見渡す。

親父に虐待されて俺は性格まで歪んだ。

だけどその分.....愛情を注いでいるつもりだったのだが。

でも裏切られてしまった。


「.....衝撃的だな」


そんな事を呟きながら俺は周りを見渡す。

脱ぎ散らかされた汚い部屋にゴミが少しだけ散乱している。

俺はその光景を見ながら少しだけ眉を顰める。

そうか。

俺は疲れているんだな、って思える光景だ。


「.....愛情を注いでもこんな感じじゃあな」


思いながら俺はまた改めて周りを見渡す。

因みにだが親父から逃げて。

というか母親が俺をそのまま逃してから俺はこの場所で静かに暮らしている。


この場所は親族の爺ちゃん婆ちゃん名義だ。

保証人はその人達からなる。

お金とかも2人がくれている。


母親は.....気持ちが消失している。

俺を支える事が出来ないぐらいに、である。


「.....」


俺は机の上に先程頂いた料理を置きながら。

そのまま冷蔵庫と呼べるのか分からないが.....冷蔵庫に物品を几帳面に入れる。

中が汚いから、であるが。

そして俺はスマホを弄ったが。

途中で投げ出してしまった。


「.....チッ。.....何もかもを思い出す感じだ」


そんな事を呟きながら天井を見上げる。

ウレタンの様な天井を。

それから俺は窓を開けて外を見る。

今日は何だか知らないが暗く見えると思ったのだが。

だけど明るい感じがする。


「.....これは何でかな」


どうも何でか分からない。

明るく見えるのが、であるが。

俺は見渡しながら顎に手を添える。

それから.....窓を閉めたりしてシャワーを浴びて翌日になる。



学校に登校する。

県立水野高校。

俺の通っている高校の名前であるが。

教室行くと.....俺は怖がられる。

何故なら俺の目が厳ついから、である。


「な、なあ。今日はいつにも増してアイツ怒ってね?」

「それな.....確かに怒っているよな?」

「まあ確かに.....」


教室中がその様な話をしている。

因みに俺だが殺人をしたとかそんな事が噂になっている。

勿論、明確に嘘ではあるのだが。

だけどまあ仕方がない。

何故なら俺は不良であるから。


「.....」


そんな事を思いながら居ると唯一俺に声を掛けてくる女子が居た。

それは横山である。

おはよう、と言いながら朝から元気だ。

何だコイツは?

いきなり.....だな。


「.....おはよう。横山」

「うん。おはよう」

「.....珍しいな。声を掛けてくるなんて」

「そうだね。.....今までは.....周りに言われて声を掛けなかったけど。君の本性が分かったからね」


横山はニコニコしながら俺を見る。

俺はその姿に、そうか、と言いながら教科書を出す。

その様な感じに周りが、何で横山さんが?、という感じになる。

そんな言葉を聞きながら、あの。横山。俺に声を掛けるのは有難いが、と言うが。

横山は、気にしない、と真っ先に言ってくる。


「.....あ。後で渡したいものがあるから」

「.....渡したいもの?」

「後でのお楽しみ」


そして、じゃあちょっと委員の仕事をするね、と手を大きく振ってから去って行く横山.....。

何だ渡したいものって。

もしかしてこれまでの治療の費用とか?

思いながら俺は考え込んだ。

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