第3話 莢蒾

「紫稀くーん!まずはお墓の掃除をしましょう。」


お墓の掃除などを行い、今日の法事は終わった。

明日香さんたちにあの花のことが気づかれる様子もなく……。


「きっと立輝も喜んでいるわ。ありがとう。紫稀くん。」


「いえ、こちらこそ。では、また……。」


花を無断で持ち帰ってしまった。

罪悪感が俺を支配している。


俺はその花について調べることにした。

画像検索という便利なものを使えばすぐにでてくるだろう。


(あっこれだ。)


ガマズミ……?初めて聞く名前の花だった。

日本や中国、東アジアなどに幅広く分布しているらしい。

白い花と赤い実が特徴だそうだ。

中国名は莢蒾きょうめい……。

なんか不思議な名前だな。

そんなことを考えながら、俺はガマズミについて書かれたサイトを読んでいた。


まあきっと誰かが気まぐれで置いただけだろう。

こんな花なんかに深い意味を見出すほうが時間の無駄だ。

そう思った俺はこの花をゴミ箱に捨てた。


『ピコン』


スマホの通知音が鳴った。

そこには、立輝の彼女(元カノというべきなのかもしれない)から

メッセージが届いていた。


『たーくん、どうだった?』


そんなこと俺に言われても。

立輝が亡くなってから定期的に天野からメッセージが来る。

なぜだろうか。俺と話したって俺は立輝ではないし、

もう彼に会うことはできないというのに。

ましてやどうだったなんて言われても。

立輝の墓に得たいのしれない花があったから持って帰ったなんて

言えるわけないじゃないか。


僕は適当に返事をして、早々に寝ることにした。


第4話 「

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

春に君の墓へ行く 花山院 青藍 @seiran_ai

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ