第2話 百箇日
立輝が死んでから100日が経った。
今日は百箇日だ。通常は親族などのみで行うものらしいが、
小学生……いや保育園の頃からか?とても仲が良かった俺は
特別に参列させていただくことになった。
「おはよう紫稀くん。今日は来てくれてありがとね。」
立輝の母の浪川 明日香さん幼い頃からよくお世話になっていた。
「おはようございます。こちらこそ参列させていただいてありがとうございます。」
「きっと立輝も喜ぶと思うわ。
あの子ほんとに紫稀くんのこと大好きだったから……。」
明日香さんの目が潤む。
時々昔……立輝が生きていた頃のことを思い出すことがある。
家が隣で、保育園から高校まで一緒で。
偶然同じ班になった小学校の修学旅行。
班とはぐれて2人で迷子になり先生にひどく叱られたこと。
3年間ずっと同じクラスだった中学校。
喧嘩をすることもあったけどいつも先に謝ってくれた立輝。
たくさんの思い出が溢れかえってくる。
まだ立輝が死んだという実感はない。
またいつか戻ってきてくれるんじゃないか。
そんな叶いもしない淡い期待を胸にいだいている。
立輝の墓へ行くことになった。
明日香さんたちは他の親族への挨拶などがあるそうだから
俺がひとりで先に行く。
前来たときのこともはっきり覚えている。
立輝がここに埋まっている。もう会えない。死んでしまった。
そう考えていたから俺は大号泣してしまった。
たくさんの人がいるのに。
しかし恥ずかしくはなかった。不思議な気持ちだった。
墓へ行くのはその日以来だ。
墓へつくと、そこには1輪の花があった。
(なんだこの花。だれが置いたんだろうか。)
花は枯れておらず、きれいに咲いていた。
何故か1輪のみで。
明日香さんには花はあとでみんなで供えようと言われていた。
だから花はないよとも言われていた。
(なのに何故だ?通りすがりの誰かが供えてくれたのか?)
しかしこの花が供えてあるのは立輝の墓のみ。
ますます謎は深まるばかり。
そのとき、明日香さんから電話がかかってきた。
プルルルルルル…プルルルルルル…
『ーもしもし?紫稀くんお墓にたどり着けた?』
「あ、はい!たどり着けました。」
『なら良かった!あと5分くらいで着くからもう少し待っててね?』
「はい。わかりました……。」
ツ……
もう少しで明日香さんが着くらしい。
この花を見たらどうなるのだろうか。
そう一生懸命考えている間に車の音が聞こえた。
来た。
明日香さんたちが車を降りて向かってくるのを見た瞬間、
俺は咄嗟にその花を自分が持っていたバッグに入れてしまった。
第3話
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