第4話 一緒に食べる幸せ
朋美ちゃんとパンケーキのお店にきた。スタンプカードが埋まるくらいには来てるおすすめのお店で、デートできてみたかったし、朋美ちゃんにもぜひ食べてもらいたかったんだよね。じーっと見られたのも食べさせてもらったのも照れるけど、でも美味しいって言ってもらえてうれしい。って、別に私はこのお店と一切関係ないただのお客なんだけどね。
「さっきはごめんね。食べてくれてありがとう」
「どういたしまして。私としてはいろんな味をいっぱい食べられるの嬉しいから全然気にしないでー。ふふ。えへへ。楽しかったー。朋美ちゃんも楽しんでくれた?」
パンケーキを食べ終わり、食後のドリンクを飲みながらちょっとまったりする。この後のことは決めていない。普段ならこの後腹ごなしに歩いてから三時のおやつに向いていくけど、朋美ちゃんの様子を見るに無理そうだし、このままお話して決めよう。
美味しいと言ってくれたし、喜んでくれたと思うけど言葉でも聞きたくてつい確認してしまう私に、朋美ちゃんはにこっと爽やかな笑顔で応えてくれる。
「うん。恵のおすすめだけあって美味しかったし、それに、口を開けて待ってる恵、ひな鳥みたいで可愛かったよ」
「う……て、照れるなぁ。えへへ。その、私、恵ちゃんにそんな風に思ってもらってるって知らなかったから」
朋美ちゃん、やっぱり普通にしてたらカッコいい系なんだよね。その顔で可愛い可愛い言われると、ちょっと本気で私ってかわいいんじゃないかと勘違いしちゃいそう。いやまあ、恋人だし? そう思ってくれてるってのはほんとなのかもだけど。えへへ。
「そう? よく言われるでしょ?」
「言われないよぉ。もう、もう。そんなに褒めても、なにもでないんだからね」
「んふふ。でも笑顔になってくれてるよね、その笑顔が見れるならずっと褒めちゃうかも。可愛いよ。さっきも言ったけど、恵が美味しそうに食べるとこ、好き。可愛いし美味しいものいっぱい食べさせたくなっちゃう」
「ひゃー。も、もー!」
顔が熱くて火がでちゃいそう。そんなに、そんなに言ってくれるなんて! 気持ち疑ってたわけじゃないけど、もー! 嬉しすぎてなんか、変になっちゃう!
「じゃあ私も言うけど、朋美ちゃんは綺麗でびしっとしててカッコいいけど、時々可愛いとこが好きっ」
「え、可愛い、かな? 照れる」
「そう言うとこもだし、さっきもコーヒー一口めで熱くてあちちってなって恥ずかしそうにしてたのもすごく可愛かったよ。ギャップ萌え!」
「そ……そう、なんだ。あの、ちょっと、恥ずかしいから、そろそろやめよっか」
嬉しくってたまらないのでお返しに思うまま好きなところを伝える。普通にしてていきなりこんなことは言えないけど、褒められた嬉しさでそのまま言ってしまった。
自分から言ってきたのに私が言うと恥ずかしがっちゃう朋美ちゃんは、だからそういうところが本当に可愛くて好き! でも我に返られちゃうと私もすっごく恥ずかしい! だってまだお店の中だし! 隣のテーブル席のお姉さんたちが笑ってこっち見てるの聞こえてたんじゃないって言って!
「そ、そだね……えへへ。でも、朋美ちゃんの思ってること知れてよかった。まだ全然お互いのこと知らないから、どうしてオーケーしてくれたのか、ちょっと不安なとこもあったし」
少なくとも今は朋美ちゃんがほんとに私と同じくらい思ってくれてるのがわかったし、恥ずかしいけどこういうのって大事だよね。私の言葉に朋美ちゃんは恥ずかしさをごまかす様にコーヒーを飲みながらもうなずいてくれた。
「そうだね。うん。私も、気持ち知れてよかった」
「うん。これからもいっぱいお話しようね」
ちょっとすれ違っちゃったり勘違いすることもあるかもだけど、ちゃんと話し合えば誤解もとけるもんね。まあ、これからはもうちょっと二人っきりの時にしたほうがいいけど。
とりあえず恥ずかしいから飲み終わったところでお店をあとにする。この後はとりあえずカラオケに行くことに決めた。
「カラオケのあとはどこか、恵おすすめのお店とかでいいよ、ケーキとかなんでも」
「ほんと? でもさっきもあんまり食べてなかったのに大丈夫なの?」
「時間あけたら大丈夫」
にこっと笑って言ってくれた。よかった。そうだよね、三時のおやつは別腹だもんね。ということで思いつくあれこれ、お昼がパンケーキだったから、和系の抹茶パフェの美味しいお店に行くことにした。お団子も美味しいんだよね。
朋美ちゃんも和系も好きと言ってくれたので決まりだ。よかったよかった。
「でも、朋美ちゃんってほんとに小食なんだね。いつもお昼少ないけど、半分しか食べられないとは思わなかったよ。あ、もちろん全然、いくらでも食べられるけどね?」
「うーん……あの、今更って思うかもなんだけど、その、変に思わないでほしいんだけどさ」
「ん? え、どうかしたの?」
なんだが大げさな前置きに、もしかして、病気で食事制限とか? と変な汗がでてきたのを感じながら朋美ちゃんに顔をよせて聞き逃さないようにする。
「うん、その、甘いものそんなに得意じゃないんだよね」
「えっ!? え、じゃあパンケーキ無理してた? ご、ごめん、私朋美ちゃんの好み何も聞かずにお店決めちゃって」
「待った待った。変に思わないでって。嫌いじゃないよ、パンケーキも好きだし、美味しかった。和菓子も好き。でも量が食べれないっていうか。ご飯はまだ少なめ一人前食べられるし、ケーキも一つならなんとか美味しいと思う範囲で食べられるよ」
な、なんとか!? ケーキひとつをなんとか食べられる!? え、私なんかケーキ三つめはカロリー的に悩むけどお腹的には三個でも四個でも食べたいってなるのに、なんとかぎり食べられる上限が一個ってこと!?
と、衝撃を受けている場合じゃない。そこは本題じゃない。いや、でも、はー。痩せてる人って、そういう、人間としての作りが違うのか。
「……」
「あの、だから別に、無理はしてないし楽しんではいるんだけど、言ったら気を遣わせるかなって思って、黙っててごめん。でもさっきの話の流れで、やっぱり正直に言っておいたほうがいいかと思って」
「あ、ううん。全然。話してくれてありがとう。私こそ、甘いものは誰でも無限に食べられるものだって思って、お店勝手に決めてごめんね」
あまりに私の常識と違うことを言われて驚いたけど、そうか、そういう人も、この世にいるんだね。あまりにびっくりするあまり無言になって気を使わせてしまった。
甘いものが嫌いじゃないのはよかったけど、それはそれとして好みきかなかったのはそれと関係なくアウトだよね。友達だったらちゃんとするのに、恋人ってなって舞い上がりすぎてたよね。そこは反省。
「いや、だから……私は、恵の好きなお店で好きなもの食べてほしいんだ。そういう恵が好きだし、量が食べられないだけで甘いもの自体は美味しいって思ってる。今日も、本当は生クリームに苦手意識あったけど、思ったより美味しくていっぱい食べられたよ」
半分でいっぱい食べられた……。う、うん。でもわかった! 朋美ちゃんの主張は、だから私に甘いものに関して遠慮しないでってことだよね。
「うん、わかった。じゃあこれから、朋美ちゃんもいっぱい美味しいって思ってもらえるように、たくさんお店紹介するし、食べきれないのは全部私が食べるね!」
と元気よく宣言したことで朋美ちゃんはにっこり微笑んでくれた。よかったー! 嫌いなわけじゃなくて。もちろん無理に食べさせたいわけじゃないけど、美味しいものは共有したほうがもっと美味しいもんね! 量が食べられないなんて全然問題じゃないしね。
こうして分かり合えた私たちはいっぱいいっぱいデートするのだった。ただ、体重が増えてしまったことだけは予定外だけど。
おしまい。
いっぱい食べる君が好き 川木 @kspan
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