第2話 可愛い朋美ちゃんが好き
朋美ちゃんのことは前から気になっていた。いつもぴんと糸のはったように姿勢がよくて、細身で格好良くて、凛とした綺麗な人だった。最初からそんな風に思って好感度は高かったのだけど、ある日、コーヒーを間違ってブラックを買ってしまったと苦そうに舌をだしている顔が可愛くて、そういう表情もできるんだ。もっと見たいなって思ってから気づいたら目で追っていて、いつのまにか恋になっていた。
挨拶もするし軽い雑談くらいはする仲だったけど、本当に受けてもらえるとは思ってなかった。でも告白するくらいのきっかけでもって、友達にならないと私じゃあ土俵にもあがれないから、思い切って告白をした。
そしたらなんと受けてもらえた。恋人になれた。その事実に私は舞い上がってしまった。お昼を一緒に食べて、放課後寄り道しながら途中まで一緒に帰る。そんな友達ともするようなたわいないことの一つ一つがすごく楽しかった。
だけどそのまま調子に乗ってした週末のデートのお誘いは断られてしまった。どこか気まずそうなその表情に察するものがあって、私は土日で覚悟を決めて朋美ちゃんにお別れを切り出した。
「私……ちゃんと、好きだよ?」
だけど朋美ちゃんから帰ってきたのは、そんなとっておきに可愛らしいお顔と言葉だった。いや、好き。ふられてあきらめる覚悟してたけど、改めて恋に落ちる可愛さ。きゅんきゅんしてたまらない。
ここまで至近距離になるのも初めてだけど、近くで見るとまつげながーい。すご。切れ長の瞳かっこいい。素敵。見れば見るほどお顔がいい。こんな綺麗な顔をしていて表情が可愛いってもはやずるい。
それでも信じきれなくてついつい再確認しちゃったけど、朋美ちゃんは本当だって言ってくれた。そこまで言ってもらえてはじめて本当だったんだって実感できた。ついニコニコと笑顔になって抑えられない。
「誤解させたならごめんね。その、こういうの初めてだし、なれてなくて」
そんな私に、朋美ちゃんは私の手を握ってそう言ってくれた。色づいた頬が愛らしく、可愛らしさがより際立ってしまう。ああ、可愛すぎる!
思わず口からこぼれてしまったけど、それすら朋美ちゃんはひろって私のほうが可愛いとまで言ってくれた。
正直、それほど接点があったわけでもなく、どうして恋人になってくれたのか謎だった。だからこそ、私の告白を断り切れずに無理をさせたのではと思ったのだけど、都合のいい妄想かもしれないけど、もしかして、私と同じように前から私のことを憎からず思ってくれていた、のかな?
私はちょっと太ってるし、見目がいいわけではない。もちろんその分清潔感には気をつかってるし、駄目って程ではないと思うけど、見目で好かれるタイプではない。軽く話したりはするし、その時に私も好印象だったし好意的に接してはいたけど、別にそれで恋愛感情を持ってもらえるかって言われると?
考えても私とどうして恋人になってくれたのかわからないけど、でもまあ、いっか。朋美ちゃんが私のことを好きっていうのは事実なんだもんね、……だよね? 昨日と一昨日どっちも断られたのは私の考えすぎで普通に用事があったんだよね?
「あの、じゃあ、ってわけじゃないんだけど、今度の週末、デート、してくれる? というかデート断られたから無理させちゃったのかな? と思ったんだけど」
「え? あー、そういう。ごめんね。本当に、ただ予定があっただけで。えっと。じゃあ、デート、しようか」
「あ、うん! え、ほんとにいいの?」
「うん。大丈夫、一回断ったせいで不安にさせちゃったし、好きなお店に付き合うよ」
「やったぁ!」
やったぁ! なーんだ、私の杞憂だったんだ! よかったー!
こうして週末の二日は浮かれモードから突き落とされて落ち込んでいた私だけど、今度こそハッピーな恋人ライフを楽しむのだった。
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