第24話 新魔法アクアソード

魔物図鑑で魔物の主の情報を見たアリト達はモネの屋敷を後にしたのだった。


               ーー


そして現在……


モネの屋敷を出たアリト達は宿屋でその日を過ごした。

そして翌朝ケープから南方向へ、空飛ぶ布団で数時間進み渓谷のある場所へ辿り着いた。

そこはインペラが現れるとされる正面の渓谷ルート、山の中へ行ける山道ルートの二つの入り口がある場所だ。



「ここが渓谷の入り口ね!」

「進める方向が二つあるけど……あら?」

「正面の入り口には“統括の許可ある者以外立ち入り禁止”と書かれている」


「普通の冒険者の侵入は危ないからな」

(冒険者をインペラに会わせない為にモネが動いたのか)


「確かに…二級の魔物は強い冒険者が数人で討伐出来るんだものね」


「だが、インペラの討伐は急がなくてもいいだろう」


「え?」


「ミラの特訓をするぞ」


「あっ⁉」

「ち、ちゃんと覚えていたのね!」


「あぁ」

(そっちが忘れていたか)


スタスタ……


アリト達は山道ルートへ進む。

だが道と言える道は無く、ただ悪路が続いている。



ジャリジャリ……

スタ……

スタスタ……


「こんな足場が悪いと戦闘どころじゃないわね……」


そんな山を進み数十分歩いていると地面に傾斜は無くなり始める。



「景色がただの森になってきた!」


「この辺でやるか」


「新しい技はどんなかな~」

「そういえば、前に教えてくれた“子供の覇者戯アクアメガホン”」

「どうしてあんな名前にしたの?」


「あぁあれか、メガホンから発想しただけだからな」


「メガホン?」


「子供の頃、風呂で使わなかったか?」

「湯舟の水をメガホンで発射するあれ」


「なにそれ……」


「まぁいい、今回は普通だ」

「まず手の周りに水魔法を生成する」


シュー…シュン!


アリトは魔法で生成した水を剣の形状に変化させる。


「おぉー」


「このままだと攻撃にならないから、これを……」

(ウォータージェットのイメージで)


シュー…ウィーン……


刃の部分に水の流れを作り、流れを高速にする。


「これなら木を切るくらいは余裕だ」

ブンッ!

バタン!


アリトは一本の木を両断する。


「えぇ⁉」

「水がこんな威力に⁉」


「あぁ、水の力は凄いんだ」


「私もやってみる!」


シュー…シュン!

シュー…ウィーン……


「剣の形で…流れを作って…」


ブンッ!

バタン!


ミラは魔法を発動させ、一本の木を両断した。


「……」

(一度見ただけで出来るのか、それに威力も十分)


「出来たわ!」


「あぁ」

「それはアクアソード」

「近接用の魔法だ」


「アクアソード……カッコイイわね」


「んっ、近くに魔物の気配があるな」


「私が狩る!」


スタスタ……



二人が進むと数メートル先に魔物の姿があった。


ワォー!


「狼か?」


「図鑑に載っていたのを見たわ、あれは五級魔物デルス」


「倒せるか?」


「群れで現れなければ余裕よ」

「先手は取らせてもらうわ」

シュー……バン!


プス!


ミラの放ったバレットはデルスの胴体にヒットするが、致命的なダメージを与えられない。


「え、貫通していないの?」

「……っ⁉」


ミラに気付いたデルスは突っ込んでくる。


ダダダッダダダッ!


「バレットを当てれば!」


シューバン!

シューバン!


「あの速さだと当たらない……」


木々の間を蛇行して迫るデルスにバレットを当てられないミラ。

そしてデルスは距離3メートルまで接近。


「もう使う必要があるのね」

シュー…シュン!

シュー…ウィーン……


ダダッダダッダッ!


ブンッ!

……


ドサッ


ミラは飛び掛かってきたデルスの首を切断する。


「倒せた⁉」


「…」

(体の動きも良いし、魔法の威力も高い…)

「ちょっと前に冒険者になった強さじゃないな」


「それって褒めてるのー?」

「でもたしか、王族は普通の人より魔力の質や成長度が良いってパパに話をされたのよね」


「なるほど…魔力の質は威力に関係していて、成長度は魔力総量の伸び方に関係しているのか」

(つまり威力バフと経験値増加バフを持っているって事だな)


「ん~よく分からないけど、そうみたい?」

「それよりこの魔法は相当疲れるわね……」


「火力が高い分消耗は激しい」

「まぁ魔力総量を増やすしかないな」


「これなら剣の武器を買って魔法と併用した方が良いんじゃない?」


「物は壊れるし、常に持ち歩くのは邪魔だろ」


「なるほどね……」

「って、アリトは刀持ってるじゃない」


「……まだ狩りを続けるぞ」


「あっ話逸らした」


スタスタ……



こうして新しい魔法を覚えたミラは、その後もデルスを相手に特訓をしたのだった。

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