第22話 子供を作る方法

ケープに着いたアリト達は街の統括モネの屋敷を訪問していた。

話は本題であるザミヤからの手紙、ではなくミラが産まれた頃の話に……

国王ユーグは四つの街の統括を任命したという。

さらにモネは妊娠してる事が分かったのだった。


             ーー


そして現在……


三人の話題はモネの妊娠について。

ミラは驚くと共にお祝いの言葉を言った。


「おめでとうございます!」


「ありがとう~」


「でも、モネさんの力が半分だなんてどういう事なんですか?」

「もしかして病気があるとか……?」


「あはは、違うわよ」

「もしかして子供を作る方法を知らない?」


「し、知らないです……」


「あら、そうだったの」

「ミラちゃんにも、その時が来るかもしれないから伝えておくわね」


「は、はい!」

「よろしくお願いします!」


ササッ


モネは紙に絵を書いて説明をする。


「儀式みたいなものなんだけど、特殊な人形を使うの」

「まず相手と向かい合い、おでこを合わせて、二人の体の前で人形を持ち、魔力を注ぐ」

「そしてその人形に魔力が満たされると煌びやかに光り、空へ昇華されていく」

「そこから数か月後に妊娠してるのが分かるのよ」


「そ、そうだったんですね!」

「でもそれって男女じゃなくても出来そうですよね?」


「女性同士でも可能よ、子供は女性が持っている子宮に宿るからね」

「残念ながら男性同士の場合だと成功例が無いのだけど……最近では女性の希望者が現れた場合の代理出産が可能と噂されているわ」


「そんな事になっているんですね~」

「それで妊娠と力が無くなる関係というのは……?」


「それは人形の満たされる魔力量が決まっていないからなの」

「時には、全ての魔力を注いで亡くなる人もいてね……」

「さらにこの儀式で使用する魔力は根源から失う、つまり自分の魔力総量を犠牲にするの」


「魔力の器そのものを失って人形に注ぐ……」


「それにこれだけは覚えておいて、妊娠とは必ず成功するものではないの」

「だから親には感謝しなくちゃね」


「……そうですね」

(パパ、ママありがとう)


ミラはしばらく真剣な表情のままでいた。


……




「さっ!真面目な話はこのくらいにして、そろそろあなた達の用を聞こうかしら」


「あぁ、これを」

ササッ

アリトはザミヤの手紙を渡す。


ペラ……

……


モネは真剣な面持ちで手紙を読んだ。


「……そんな事が」


「何が書かれていたんだ?」


「“魔物の主が現れる、森の主はそこのアリトが討伐済み、討伐はそいつに任せて良い”」


「…」

(はぁ?)


「アリトって、あなたよね」

チラッ

モネはアリトを見る。


「あぁ」


「……なるほど」

(師匠が認める人って事は強いのよね)

「では私からもあなたに依頼をさせてもらうわ」

「ケープの近くに現れる渓谷の主を討伐してきてほしいの」


「……」

(森の主とは偶然出会ったから倒したが…)

「魔物の主を討伐する理由とはなんなんだ?」


「普通の魔物は出現する近辺が行動範囲になっているんだけど、魔物の主にはその行動範囲が無く、いずれ人の街や村へ侵入して縄張りを増やす特徴があるの」

「過去に魔物の主の侵入で崩壊した村がいくつもあったわ」

「だからそれを食い止める必要があるの」


「いずれとは、どのくらいだ?」


「出現から最短で三か月よ」


「……」

(タイムリミットは三か月って事か)

「統括達は名ばかりで戦わないのか?」


「痛い所を突くわね、でもその通りなの」

「私達が魔物の主と戦ったのは30年も前……それに9人態勢でやっとだったの」

「30年経った今のわたくし達では主には敵わないわ」


「……」

(トップの冒険者が複数人で魔物の主と互角だったという事か)


「それに、魔物の主が現れるとされている周期は約50年間隔」

「でも前回の主を倒してから30年ほどしか経っていない今、名を馳せた冒険者は現れていない」

「だからザミヤ様もあなたを指名した」

「改めて依頼の件どうかしら?」


「アリト、あなたじゃないと…」


「……」

「分かった」

ミラの後押しで依頼を受けるアリト。


話は本題のザミヤの手紙へ、そこには魔物の主の出現を知らせる内容が、さらにアリトは渓谷の主の討伐依頼をされたのだった。

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