第21話 ケープとモネ

アリトが討伐した魔物の正体は森の主“テノボア”。

過去にテノボアを討伐していたザミヤは疑問に思う事が……

それは森の主となるまでの年月と生態の異変である。

そしてザミヤはアリトにある依頼をしたのだった。


          ーー


そして現在……


アリト達は新たな街を目指しチルストラップから北西方向へ空飛ぶ布団に乗りながら移動していた。

道中……


ヒュ~



「あっ!また昔の話聞きそびれた~」


「そんな重要な事か?」


「重要というか~過去の話って、なんだか気にならない?」

「私は王都での生活しか知らなかったから、私の知らない世界ってどんなものかなって」

「例えば、ザミヤさんとシロエさんがどういう世界を見て来たかとか……2人にどんな困難があって、どうやって乗り越えて来たかとか?」


「……」

(賢者は歴史に学ぶ、か)

「ザミヤの手紙を渡す人にでも昔の話を聞いてみるか」


「そうしましょ!」


ヒュ~


……



チルストラップを出発してから数時間過ぎた頃、目的の街に到着した。

空飛ぶ布団をしまい街の中を歩いている二人。



スタスタ……



「ここがザミヤさんの依頼した街“ケープ”ね」


「あぁ……」

(正しくは手紙を渡す人物が居る街)

「ここは海産物を中心とした出店が多いみたいだな」


「しょうがないな~」


「ん?」


「アリトが新しい街の出店が気になっているようだし~」

「依頼の前にお腹を満たしておきましょうか~」

ぐぅ~


「……」

(腹鳴ってるぞ)


スタスタスタ……



……



様々な出店を周り、1時間程過ぎた。

そして満腹になったアリト達は目的の人物を探す。



スタスタ……


「アリト、あそこが目的地じゃない⁉」


「だろうな」


2人が見たのは街の中心にそびえたつ建物。



スタスタ……


建物の入り口へ辿り着くと警備人に話しかけられる。


「ここは街の統括であるモネ様のお屋敷です」

「ご用件は何でしょうか?」


「頼まれた物を渡しに来たんですけど」


「依頼主はどちら様ですか?」


「ザミヤさんです」


「っ!早急に対応します!少々お待ち下さい!」

タッタッタッ……


警備は足早に屋敷の奥へ消えていく。



「物凄い勢いで走っていったね」


「そうだな」


「ザミヤさんって実は凄い人だったり?」


「さぁな」


……

タッタッタ。


「お待たせ致しました」

「ご案内します」


……


アリト達が案内されたのは統括の部屋。

部屋へ入ると正面には統括のデスク、その手前にはテーブルと四脚のイスがある。

左の壁には本棚があり、様々な資料がまとめられている様だ。


「こんにちは」

「わたくしがモネです」


デスクに座るのはケープの統括“モネ”。

身長160センチほどの青髪でポニーテールの女性。



「こんにちは!」

「私はミラ、こっちがアリトです」

「はじめまして」


「まぁ!久しぶりね、ミラちゃん」


「え⁉」

「ザミヤさん、それにシロエさんと同じく、モネさんも私の事を?」


「あなたが産まれた頃以来かしらね~」

「お二方に昔話でもしてもらったのかしら?」


「実は聞きそびれてしまったんですよー……」

「その頃の話を一つ聞かせてくれますか?」


「今回来てもらった件も気になるんだけど……」

「座って懐かしい話でもしましょうか」



ガタンガタン。


三人がイスに座る。



「さて、何が聞きたい?」


「私が産まれた頃の話が聞きたいです!」


「あれはー国王のユーグ様が街の長として統括を指名した頃だったわね、その四名がザミヤ様、わたくし、わたくしの弟、そしてリュー様の奥様」

「今まで王国周辺の四つの街を前国王は一人で管理していたのだけど、現国王のユーグ様が統括を指名して負担を軽くしたの」


「そんな事が…って、ザミヤさんも統括の一人だったんですね⁉」


「そうよ~」


「それに“様”付けをしているのは…?」


「ザミヤ“様”たちは私達姉弟の師匠なの」

「戦闘を直々に教えて頂いてたわ」


「師匠⁉」

「やっぱり凄い人だったんですね!」


「えぇそうよ」


「それで何故その四名が統括に?」


「当時の冒険者の中で戦闘能力がトップだったからだと思うわ」


「えぇー!モネさんって強い冒険者の一人なんですね!」


「あはは……当時はね」


「当時?」


「実は、今のわたくしの力は半分程度しか使えないの……」


「どうしてですか?」


「……お腹に子供が居るのよ」


「え⁉」



チルストラップから北西方向にある新しい街ケープに着いたアリト達は街の統括モネの屋敷に居た、そしてモネの力が半分になった理由を話されたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る