第19話 ミラ、初めての報酬
メルの母親ガーベラの家に居たアリトとミラ。
彼女は亡き夫の話をして、薬草採取はメルが依頼をしたと分かる。
アリトが代わりに薬を完成させ、無事に病が治った。
そしてアリトとミラはギルドのある街、チルストラップに戻ったのだった。
ーー
そして現在……
アリト達は宿屋の部屋に居た。
キラーン。
バフ!
アリトはお互いにファブをかけ、ミラはベッドに飛び込んだ。
「わっ!綺麗にしてくれてありがとう」
「あぁ」
「ふぅ、疲れたわね~」
「……ねぇアリト」
「ん?」
「なんで、メルちゃんにお守りを渡す時“ありがとう”って言ってたの?」
「声に出てたのか……」
ーー
「これはなあに?」
「お守りだ」
(ありがとう)
「ウフフ…良かったわね、メルちゃん」
ーー
メルにお守りを渡した時アリトの心の声は漏れていた。
「何かを貰った気がしたからだ」
(ありがとうを伝えなければいけないと感じたな…)
「何って?」
「……心の強さかな」
「心の、強さ?」
「また私の分からない事を言ってるのね…」
…
「私はもっと戦闘で強くならないとなぁ」
「戦闘では魔法も自身の動きも良かったと思うが?」
「あのウサギ程度ならねっ」
「やっぱりあの大蛇…あんなのを前にしたら……」
「まぁ弱肉強食の世界だから仕方ないだろう」
「またそんな時が来たら俺が戦う」
「むーっ」
「じゃあまた私を鍛えてよ」
「…」
「パン買ってくる」
「あっ!話逸らした!」
「って、私も行くー!」
……
こうしてアリト達は腹を満たし、次の日を迎えたのだった。
……
次の日…
「そうだったんですかー⁉」
そんな大きな声を出したのはミラだった。場所はギルドの受付奥の部屋。
そしてソファーにはアリトとミラが座り、テーブルを挟んでもう片方にはザミヤとシロエが座っていた。
この状況になる数十分前……
アリトとミラはギルドへ依頼の報告をしていた。
受付にて……
「一週間ぶりね、ミラちゃんにアリトさん」
「シロエさん!」
「あぁ」
受付を担当していたのは冒険者たちの華、シロエだった。
「シロエさん、私たち初めての依頼を達成してきたんです」
「これを……」
ペラ。
ミラは依頼の紙を提出した。
「そうなのね、おめでとう」
…
バタンッ!
シロエは依頼の紙にハンコを押した。
「シロエさんそれは?」
「依頼の紙にギルド専用のハンコを押すと色が変わるの」
「虚偽の報告する人が居ると困るから緑が達成、赤が未達成、青が無効などがあるのよ」
「ミラちゃんの依頼の紙は緑色になったわ、依頼達成ね」
「へぇ~そういう風になってるんですね」
「じゃあこれが報酬の100ルフェンね」
「100…?」
ガクッ
初めての依頼の報酬を期待していたミラは安さのあまり肩を落とす。
「まぁメルのお小遣いから出したのだろう」
「そうよね、しょうがないか…あはは」
「報酬は別で稼げるからな」
「この依頼はミラの戦闘を見る為に受けていただけだ」
「そうなの?」
「シロエ、この街に質屋はあるのか?」
「無いですが…このギルドでも魔物の買取は出来ますよ」
「なるほど」
「じゃあ頼む」
「はい、では隣の建物に買取場があります」
「私と向かいましょう」
スタスタ……
ギルドの隣の建物へ移動すると、そこは王都にあった“質屋”の様な場所だった。
そして三人はある部屋に居た。
「ここは討伐した魔物を出現させる部屋です」
「じゃあミラちゃん、手をかざしてみてね」
「は、はい!」
ファ~
……
シュー
ボボン!
ミラが部屋の中心へ向けて手をかざすと微細な魔力が部屋中に流れ、討伐した魔物が現れた。
「私が倒した魔物!しかも倒した時の状態なんですね」
「そうよ、もし買取で稼ぐ場合は討伐の仕方を工夫したりする必要があるの」
「
「えへへ…」
現れたのはミッシュラビット42体。
「この魔物は、十級魔物で42体だから4,200ルフェン」
「アリトが言ってた別の稼ぎ方はこれの事ね」
「あぁ」
「ねぇシロエさん、42体って多い方⁉」
「んー多く…ないかな、あはは…」
「シュン……」
「まぁ、まだこれからよっ」
シロエは落ち込むミラを慰める。
「それに買取総数ランキングっていうものがあるんだけど、少し前に王都で最多記録が更新されたらしいわよ」
「そんなものあるんですね~」
「ランキングを掲載して買取産業を盛り上げる為なんだけどね」
「ミラちゃんもその記録を更新出来るよう頑張ってみたら?」
「ちなみに最高記録っていくつなんですか?」
「たしか…675体だったかしら?」
「675体⁉」
「で、でもその記録って何日もかければ…」
「いいえ、討伐された魔物が討伐者の武器などに保管されて三日以上経ってしまうとダメなの」
「加工屋が手を加える時に何故か状態が悪く、肉や皮が出来ず廃棄になってしまって……」
「だから三日以内に持って来られないと記録として残らないわ」
「じゃあその記録は三日以内に…?」
「いや、一日よ」
「普通の冒険者でもその数をこなすのは無理ね」
「だけど記録更新された時は魔物の氾濫が起きた日で……」
「氾濫…⁉」
「少し前…氾濫…675……あっ」
チラッ
ミラはアリトを見る。
「おう」
「“おう”じゃない!」
「思い出した!アリトだったわ!」
「まぁ、アリトさんがそうだったのですね!」
「そうだな」
「アリト…やっぱりまた特訓してよね」
ムスッ
ミラは悔しがる。
「……」
(また何か考えておくか)
「それで、アリトさんの買取は…?」
「あぁあるぞ、一体だけだけどな」
ファ~
…
シュー
ドスーン!
アリトが刀を部屋の中心へ向けると、討伐した魔物が現れた…のだが。
「これは……」
「アリトさんとミラちゃんはちょっと付いて来てくれる……?」
こうしてアリトとミラはザミヤが待つ、例の部屋へ連れて行かれる事になったのだった。
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