第13話 試験は、さくっとクリア⁉


順調に滑り出した魔法の特訓。

ミラは初日で水の弾丸アクアバレットを習得する。

そして応用技も習得する為、特訓を7日繰り返すのだった。


           ーー


「よし、今日で応用技を完全にマスターするわよ~」


特訓をして7日目になった頃、ミラは陽気だった。

アリトは、そんなミラの機嫌より服装が気になってしまう。


「本当にその格好で良かったのか?」


「えぇ、アリトが作ってくれたこのジャージ…?とスニーカー…?」

「動きやすくなったし、体も冷えないし、最高よ~」


「そうか」

(お気に召したようで何よりだ)


ミラは着ていた膝丈のドレスとヒールの靴を鬱陶うっとうしく感じていた。

この街の服屋で買い物をしたのだが、スカートばかりだったという。

アリトに相談すると、服と靴を魔法で分解し作り変えてくれたのだ。



「アリトは何でも出来るのね!」


「何でもじゃないさ」

「それより今日、試験受けるんだろう?」


「えぇ、そうね」

「けどもう技は完璧に近いわっ」

「アリト、見てて」


「あぁ」


ミラは5メートル先にある、複数のかかしを見た。

そして…


水の銃弾アクアマック!」


シュー…


バババババンッ!


カンッカンッカンッ


魔法は3体のかかしに命中し貫通した。

さらに


子供の覇者戯アクアメガホン!」


シュルルル…


バァーーン…!


バキッ!


続けて放った魔法は1本のかかしを、へし折った。


「どうどう?アリトー?」

ミラは誇らしげな顔で聞いてくる。


「完璧だな」


「やったぁ~!」


「あっ」

(忘れていた、これを話しておかないと)

「そうだ、実は…」


「ん?」


何かを思い出したアリトはミラにある事を告げた。


「それ本当なの⁈」

ミラは驚いた様子でアリトに聞き返す。


「そうだ」


「魔法を発動させる時の詠唱とポーズは関係ないって……」


なんと魔法は、ただ突っ立って想像するだけでも発動できるものだったらしい。


「すまん」

(魔法といったら、魔法詠唱とポーズはセットだと……)


「あはは…魔法を教えてくれたんだもの、別にいいわっ」


「そうか」

「一応、イメージだけで出来るか、やってみてくれ」


「えぇ…」

「…」


シュー…


バババババンッ!


カンッカンッカンッ


「……」

(出来たな)


「……」

(出来たわね)

「……」


シュルルル…


バァーーン…!


バキッ!


「……」

コクッ


両者は真顔で目を合わせ、同時にうなずいた。


「試験受けにいくか…」


「えぇそうね…」


スタスタスタ…


変な空気になった2人はギルドへ向かう。



「それじゃあ試験開始だ!」

「そこの的を狙って魔法を打ってみ……」


「…」


シュルルル…


バァーーン…!


バキッ!


ギルドの試験場でザミヤに試験を見てもらっていたミラ。

そして、ミラは魔法で7メートル先の的をへし折る。


「おいおい…やるな、嬢ちゃん」

「その威力、初心者とは思えないくらいだ!」

(王族の力があるのは知っているが、あの魔法は一体……)

「1週間でこんな成長するとはな!」

ザミヤは嬉しそうな顔で喋る。


「特訓したもん!」

「ねっ?アリト」


「あ、あぁ」


訓練場の事を無かったかの様な顔で対話するミラとアリト。


「そうか、じゃあ、改めて2人共合格だな」

「嬢ちゃんには10級、アリトには4級を」


「えー?アリトだけずる~い!」

ミラは頬を膨らましてそう言う。


「まぁ今後の活躍次第で追いつける」

「その為には、依頼をたくさんこなす事だな」


「はい…」

シュン…


「カードは受付嬢の“シロエ”から貰ってくれ」


「…シロエさんね、分かりました!」

「アリト、行こう!」


「あぁ」


スタスタスタ…


ミラとアリトは建物と隣接している野外の試験場から建物の中に入り、受付へと向かう。



スタスタ。



受付窓口に着くと従業員の女性が話しかけて来た。


「こんにちは、どのようなご用件で?」


「シロエさんからギルドカードを受け取るように言われた、私はミラと…」


「アリトだ」


「分かりました」

「今、シロエを呼びますね」


「はい!」


従業員の女性が受付の奥へと消えていく。


タッタッ


タッタ。

少し経つと別の女性が現れた。


「2人の事はザミヤから聞いています」

「私がシロエです」


そう言ってお辞儀をするのは受付嬢“シロエ”。

身長は160㎝近くあり、ワンレンロングの黒髪が特徴的だ。


「うわぁ~シロエさん、とても綺麗ですね!」


「あら、ありがとう」


大人の色気を浴びたミラはギルドカードの事を忘れ、シロエに釘付けの様だ。


「それで…カードを渡すのだったわね」


「はっ…!そうでした、つい見惚れて…」


「あはは、それじゃあ、これとこれね」

2人は名前と等級が書かれたカードを手渡された。

「ミラちゃんは10級、アリトさんは4級のカードになります」


「シロエさん…?今、私をちゃん付けで…」


「あ、ごめんなさい。つい昔みたいに……」


「え⁈シロエさんも私の事知っているの?」


「えぇ、そうね」

「実は、あっ……」

「2人の後ろ…混んできちゃったから、話はまた今度ね」


シロエが受付に来た途端、2人の後ろには行列が出来てしまった。

彼女は冒険者達にも人気のようだ。


「残念…分かりました」

「アリト行こ…」


「あぁ」


スタ…


「アリトさんっ」


ミラ達が立ち去ろうとした時、シロエはアリトを呼び止める。


「ん?」


「ミラちゃんをお願いしますね」


「…」

(あれは保護者の目…?)

「あぁ」


シロエの目から伝わるもの…それを感じたアリト。


スタスタスタ…



そして、ギルドカードを獲得した2人は建物から出るのだった。

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