第10話 屈強な男 ザミヤ

冒険者ギルドでギルドカードの発行をしようとしたアリト達。

すると、ミラにわざとぶつかって来た輩が…正体はアリトが決闘をしたアークの兄貴分だった。

輩はミラに向かって攻撃を仕掛けてくるが、アリトが返り討ちにしてしまう。

騒動を見ていた周りの冒険者が歓声を上げる中、そこへ受付の奥から現れた大男の声で沈黙した。

    

                ――


そして現在…


アリト達は大男に言われるがまま、受付の奥へと向かった。

案内された部屋にはテーブルを挟んで向かい合うソファーが2つ。

片方に大男が座り対面にアリト達が座った。

そして大男が話し始める。


「わりぃな呼び出しちまって」

「騒がしいと思って見てたら気になる事が色々あってな」


「…あんた、誰だ?」


「おっと…俺の名前はザミヤ、ここのギルドマスターだ」


「…」

(ここのトップか…)


大男の名前はザミヤ、背丈は2m近くある巨漢。

スキンヘッドに引き締まった体、野太い声も特徴的だ。

ザミヤの貫禄に圧倒されるミラだが口を開く。



「ギ、ギルドマスターって何なの?」


「ん~ここらで一番強い奴だな」


「…」

(ん?まぁさっき冒険者達が沈黙したのはそれが理由だろう)


「そうなの⁉」


「あぁ、嘘じゃねぇ」

「それで、あの騒ぎはどうした?」


「えっと……」


「おっと待ってくれ俺は書かないと忘れちまうから…」


ペラッ

ザミヤは紙とペンを取り出し大きな手でメモを取り始めた。



「そんな事が…他にも悪さをしてるかもしれねぇな」

「あの野郎、目が覚めたら問い詰めてやるから任せとけ」


「お、お願いします!」


カタッ

ザミヤは事情聴取のメモを書き終え、ペンを置いた。


「あはは!気にすんな!」


「はい!」


「…それで、何故、冒険者ギルドに王女が居るんだ?」

そしてさっきまでとは雰囲気が変わり、落ち着いたトーンで喋る。


「…⁉なんで分かったの?」


驚いたミラは座ったまま体を前のめりにする。


「…」

(この街でミラをそう呼んだ人は初めてだったな)


「そりゃお前のガキの頃を知ってるからな」


「えっ⁉それって…」


「お前の親父とは知り合いなんだ…」


「昔のパパを知ってるの⁉」


そう聞かれたザミヤは少しうつむいた。


「あぁ…」

「まぁ詳しい事はいつか話してやる」


「そう…」


ミラは残念そうな顔をして、再びソファーにもたれ掛かった


「…」

(ザミヤ、知り合いの子供に会ってもなんだか素っ気ないな…)



「話を戻すぞ、なんでここに?」


「私達、冒険者になりたいの!」


「なるほどな、そういう事…か…」


ザミヤは何かを考えるかの様に顎に手を当てた。

そして、目線をアリトにやる。


「それで、お前がアリトだったか」


「あぁそうだ」


ゴソゴソッ


ザミヤは上着から手紙を取り出した。


「初めての事なんだが、質屋のリューから手紙が届いてな」


「…」

(リューさん…なんだろう)


「内容は『アリトという若者が四級の魔物を討伐した』と書いてある」


「どういう意味なんだ?」


「まぁ期待の新人が現れたっていう報告なんじゃねぇか?」

「俺にも良く分からないけどな!」


「そうか」


「四級を倒せる…だからか」

「お前が輩を返り討ちにした場面は見てたぞ」

「パンチ1発で気絶させちまうとは、若いのにパワーあるじゃねぇか」


「残念ながら1発じゃない」


「ん?ありゃ正拳突きだろ?」


「鼻、あご、みぞおちを1発ずつ殴った」


「一瞬で3発のパンチをしたってのか⁈」


「まぁな、強い痛みを与えなきゃ懲りない奴だと、判断したまでだ」


「ぷ…はっはっは――!」

「そうだったのか!その考え方は俺好みだ!」


「…」

(やはりこの男、脳筋だったか)


「俺が聞きたかった事は以上だ」

「そんで…冒険者になる話だったな、実は試験があるんだ」


「試験⁉それって難しい事をするの⁉」


ミラはすかさず聞いた。


「まぁ、魔物と戦う為に必要最低限な戦闘能力があるかを見るだけだ」

「内容は攻撃手段の威力と精度にその他、これを測る」


「…」

(試験は実技だけなのか)


「それと、アリトは試験免除になる」


「え⁈アリトだけズルい!」


ミラは頬を膨らます。


「四級の魔物を倒せて、あの攻撃手段を持つ」

「そんな奴に試験なんか必要無いからな、俺の保証付きだ」


「…そうか、どうも」


「私、魔物と戦った事も無いし、魔法だって…」

「何だか不安になって来たな…」


「そうだな…アリト、お前が戦い方を教えてやれ」


「えっ…?」


「アリトが⁉良いの⁉」


ミラは顔を近づけ、期待の込めた目でアリトを見る。


「……はぁ、分かったよ」

(ミラの戦闘方法を考えるか…)


「やった~!ありがとう!」


「話は以上だ」

「試験はいつでも受け付けてるからな」


「よし、アリト!早速特訓しましょ!」


「あぁ…」



こうしてアリトはギルドの試験の為、ミラに戦闘を教える事になった。



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