第9話 初めての街:チルストラップ


王都を出発したアリト達は空飛ぶ布団で移動をする事に。

移動中、2人が振り返ると王国護衛騎士団が追って来ていた。

ミラを王城へ連れ戻す為にやって来た護衛騎士団……だったが。

彼らはミラの嘘によって王都へ帰される事に。

そして現在…



ヒュル~

 

「この辺で降りよう」


「ねぇアリト、街はもう見えてるけどー、ここで降りるの?」


「空飛ぶ布団は貴重な物。人に見られると騒ぎになると思う」

「だから街へ入る前にしまっておくよ」


シュッ



「確かに、こんな物宝物庫でも見た事なかったわね…」


「ミラ、ここからは歩いて行こう」


「うん!」




かくして、2人はチルストラップという街に到着した。


(この街は露店が賑わってるな)



スタスタスタ……



「んっ⁉良いニオイ~!アリト、お腹空かない?」


「そうだな、店でも探すか?」


「あっ…!あれにしましょ!」


タッタッタッ


「お、おい…!」


タッタッ



ミラは初めて王都以外の街を知り、まるで子供の様に駆ける。

アリトが追いつくと彼女は一軒の露店の前に居た。



「アリト、この焼き串食べてみたいわ」


「焼き串……?」

(串にこぶし大の肉が3連…焼き鳥か)

「何の肉なのか…まぁこの世界の食べ物は美味いし、いいか」


「この世界?」


「なんでもない。それにしようか」


「やった~!」

「この焼き串2本下さい!」


「毎度あり~!!」


「アリト、あそこのベンチで食べましょ!」


「はいはい」

(俺の決定権が…)




「ふぅ~美味かったけど焼き串1本で腹8分目……」


「私も、もうお腹いっぱいだわ」


「王女様の口に合うのか?」


「お城だと、いっつもテーブルマナーがあるから面倒なの…」

「こんな楽に食べられて美味しい物…毎日でもいいわよ!」


「毎日露店で食べたいところだけど…食べるのにも資金が必要だろ?」


「それもそうね…」


「稼ぎ場所としてギルドでクエストをこなす…冒険者になるなんてどうだ?」


「っ!私、冒険者には興味があったの!」


「よし、じゃあ早速向かおう」



スタスタスタ……



腹を満たした2人は街を散策しながらギルドを探した。





…スタスタ


「ここが冒険者ギルドかーー」


キィーー

バタンッ!


建物に入るとたくさんの紙が貼られた掲示板を見ている者や

複数人で会議のような会話してるグループもいる

皆それぞれ武器を持った冒険者が大勢いた。



「うわぁ~」

「皆、冒険者なのかしら」


「人の量が凄いな」

「えっと、ギルドカード発行は…」


「あそこね!並びましょ!」


タッタッタッ



「っ⁉ミラ、危ない…!」


ドンッ!


バタン!


「きゃっ、ごめんなさい!」


ミラは走った為、人とぶつかってしまう。

ぶつかり、尻もちをついた男性が開口一番に喋った。


「痛っ。あぁ折れた折れた~」

「…姉ちゃん、こりゃ治療費がたくさん要るな」


…タッタ


「待て、その必要は無い」


「ん?誰だ?」


「アリトっ!」


違和感を感じたアリトはミラの傍に立つ。


「転ぶ芝居が上手いな、芸者か?おっさん」

「それに…ミラの財布を返してもらおうか」


「…っ⁉ポケットに入れてた私のお財布…いつの間に…」


「ちっ…分かったよ」

「ほらっ!」


ジャリン…



ミラの財布は輩からアリトへ手渡された。


「もう悪い事はするなよ、おっさん」


「待て」

「アリト…つったか、じゃあてめぇがアークを…」


(アーク…玉座の間で決闘をしたあの…)

「あいつがどうした?」


「俺の弟分でな、アリトっていう奴にボコられたって聞いたからよ―」


「何が言いたい?」


「弟分がやられてるんだ、黙ってる奴がいるかよ!」

「それに“決闘”だと人は死なない…つまり今なら…おらっ!」


ダッ


アリトと会話していた輩は懐のナイフを取り出し、標的をミラに変えて突っ込んで来た。


「きゃあ――‼」

 


彼女は恐怖のあまり頭を抱え、座り込んでしまう。



ドンッ



…バタンッ‼



「えっ……」



鈍い音が聞こえ、ミラが顔を上げると…

輩は倒れ、アリトが立っていた。



「女性を狙って攻撃をするとはな…大丈夫か?」


「あ、ありが…」


「ヒューヒュー!」

「兄ちゃんすげーな!」

「俺とパーティー組まねえか⁈」


「俺様のとこに来てくれ!」


「私達のところも大歓迎よ!」


「強い男の人って魅力的よね~」



一連の騒動を見ていた周りの冒険者達は歓声を上げる。



ドスドスドス…



「おぅ!そこの2人、付いて来い!」


「……」



大きな声でその場が静かになる。

声のする方を見るとそれは受付の奥から現れた大男だった。

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