第8話 嘘


「王女殿下。ご機嫌麗しゅう」

「わたくしはアリトと申します」


「堅苦しいのはいらないわっ」

「それより…王都を出るんでしょ?」


「えぇそうですが」


「じゃあ、私も連れて行ってくれない⁈」



(チク…タク…チク…タク……)

(異世界で厄介そうな人には逆らわない方が良いな)

 


「良いですよ!」


「やった~!ありがとう!」


よほど嬉しかったのか王女は飛び跳ねて喜んだ。



「それで、目的地は決まってるの?」


「いえ、全く……」


「実は…部屋から持ってきた地図を持ってきたの!」


「これは…分かりやすいですね」


「ここの街なんてどうかしら?」


「良いですね。行きましょうか!」



ボンツ


「えっ!?」


「これで向かいましょうか!」


アリトが魔法で出した乗り物に開いた口が塞がらない王女。

そんな事は気にせずアリトはその乗り物に王女を乗せ、移動を始めた。





ヒュ~




「うわぁ!これは快適ね~」

「ね、アリト!これは何て乗り物なの⁉」


「名付けて……空飛ぶ布団です!」


「ふふふ…面白いわね、空飛ぶ布団って!」

「これは魔法で飛んでるの?」


「まぁ、そんなところですね」


「んー?こんな魔法あったかしら……」


「そ、それより殿下…」


「私の名前はミラ。そう呼んで!敬語も無くていいわ」


「そうか、分かった。ミラは何故俺が王都から出る事を…?」


「私は王女よ。情報はすぐに伝わる」

「特に王城を壊す様な人物の情報。アリト、あなたとかね」


「あはは……」

「でも何でそんな危険人物と行動を?」


「面白そうだったからよ、それに…」



ダダダッダダッダダッ

ヒヒーン



「殿下お待ち下さい‼」


「あっあなた達は護衛騎士団……」


 王女が声のする方へ振り返ると後方から王都からの使者が追ってきていた。



「私に何のようかしら」


「殿下を王城へ連れ帰るようにと…」


「一体誰の命令なの?」


「騎士団長です」


「ふーん、そう……まぁいいわ」

「あなた達だけで帰って結構よ」


「いや、しかし……」


「お父様とお母様は『アリトを私の側近にする事』を承諾してくれたの」

「玉座の間での決闘を見たでしょ。このアリトより強い人は?」


「し、しかし…その者が帝国の回し者の可能性があるかもしれません」


 

「…」

(俺、帝国の間者だと思われてるのか…。てか、この世界には王国と帝国があるんだな…)



「その言葉はもう聞き飽きたわ」



「だから私の護衛はアリトだけで十分」

「分かったら、早く王城へ帰りなさい」


「し、承知致しました」



ヒヒーン

ダダッダダッダダッ……




「あの――俺が側近という話は…?」


「えぇ、あれは嘘よ」


「え、え――」


「だって私、あの人達が嫌いなんだもん」

「騎士団は私が子供の頃から何をするにも監視をしていて…」

「だから王都を出たのは今日が初めてなの」


「俺をエサにしたのはそういう事ね……」

「ミラは良い性格してるな」


「あら、ありがとう!!!」


「……」

 


「それで、玉座の間で見た時から気になってたんだけど」

「アリト、その仮面は何なの?」


「あぁ、実は一生取れない魔法を掛けられたんだ……」


「ふーん、そう」


「聞かないのか?」


「聞いて欲しいなら聞くけど?」

「お互い、人には言えない事ってあるでしょ……」


「まあそうだな」


「ただ、アリトは人と話す時は大きな声を出さないとね」

「玉座の間で会話に入れてなかったでしょ」


「はっ…⁉しっかり見られてたってのか……」

(ただの王女だと思ったら、鋭いとこもあるんだな)


……


「おっ…見えてきた。あそこが新たな街か~」


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