第3話 新世界

時は数時間前。



「ここが新しい世界か」

「何も無くて草生え…」

「コホン」

「それじゃあ向かいますか―」


有人は光に包まれ広大な草原へ現れた。

そして目的地へ向かって歩き出す。





「森が見えてきたな」

「最短距離だから突っ切るか」


スタスタと軽快な足取りで進む。




…突然叫び声が聞こえてきた。


「だ、誰かー!助けてくれー!」


何者かに襲われているのか、必死な声。


「やばそうだな、急ごう!」


声のする方へ風の如く走る。



「見つけた!」

「あれは―、でかい…熊か?」


有人の目に入ったのは尻もちをついた男性と2.5メートルほどの熊だ。


「これで倒せるはず…」


有人が帯刀している得物に手をかけた瞬間…


パンッ!!


カチャ




…ドサッ‼


熊の頭が落ちた。




「おーい!大丈夫か―?」


「い、今のはあんたがやったのか⁈」


「そうだけど?」

「ほら、起きられるか」


有人はせかせかと駆け寄り、男性に手を貸す。

男性は驚いた表情のまま震えていた。




「俺の名前はアークだ」

「冒険者をしている」

「実は…」


冒険者のアークはギルドからの緊急招集によって魔物の討伐をしていた。

もっと稼ごうと欲をかき森のダンジョンの中心へ向かってしまい。

そこであの、アングデンスベアに目を付けられたのだと言う。



「先ほどは助かった!それであんたは?」


「俺はアリトだ」

「よろしく!」


「…?」


「えっと…俺はこの世界に来たばっかりなんだ」

「だから冒険者じゃないよ」



表情が曇ったアークだがスルーした。

だが説明し難いのも無理はない。


「あんなに強かったら…」

「とりあえず今は魔物が大量発生しているんだ!」

「場所を移動して討伐しよう!」


アリトはアークに言われるがまま、付いていく事にしたのだった。




そして、場所は再び玉座の間に戻る。


「何故こんな事に…」


アリトは決闘の真っ只中、肩を落とした。


「残念だったな」

「お前の化けの皮を剥がしてやる」


アークは余裕そうに会話をしようとする。



「恩を仇で返すとはこの事か」

「清々しいよアーク」


世の中には優しくない人も居る。

だが心の持ち方次第でそれは単純になる。

つまり三角形は底辺が無いと成り立たない。



「あ?」

「無力を認めて開き直ったのか」

「それじゃあ俺から行くぜ!」


アークは腰のショートソードを抜き、右手で握りしめる。

そして前傾姿勢になり突進して来た。


ザッ


ダッタッタッタ…

 


真っ向勝負で段々と迫ってくる。

そしてアリトの目前、護衛の1人が瞬きをした時…。


スッ…



アークが姿を消す。



「えっ…」


護衛達は気付いた。



「こっちだぜっ!」


なんとアリトの背後に姿を現す。

そして勝ちを確信したアークは意気揚々としている。


「っ…⁈」


アークは血の気が引いた。

それはピクリとも動かなかったアリトがそっと振り返っていたからだ。




カチャ



ゴンッ!!



パリンッ!


バンッ!

ガシャーン!!


轟音が響き、大量の煙が辺りを覆った。





静かになり煙が晴れると状況を見ていた護衛が絶句した。


それは防御結界が破れ、頑丈に作られた城の壁が粉々に砕け散った事。

そして意識を失って倒れるアークの姿。



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