第14話 団らんからの新情報

アヤネとユアはレベル上げを終えると今度こそ別行動になった。が、アヤネはログアウトして現実世界に戻ってきていた。




「今日、寝る前にもう一回しようかな。レベル15になったらどうなるのか気になるし。......今が7時だからご飯まではあと30分くらいかな。」




と言って茜はスマホを手に取り、漫画アプリを起動した。




「読みたかった漫画あったからそれ読んでたらちょうど良いくらいの時間になるかな。」




茜は漫画を読み始める。そしてちょうど読み終わったところで階下から母の声が聞こえた。




「茜ー、ご飯食べる準備してー。」




「はーい、今行くー。」




茜は下に降りると手際よく箸を机に並べ、炊飯器から茶碗にご飯を入れていく。母も味噌汁を茶碗に注ぎ、おかずも盛り付ける。それらを机に並べ、2人は椅子に座る。




「「いただきます。」」




「茜、勉強もちょっとはしときなさいよ?」




「うん、するよ。」




「あのVRゲームばっかりしてないで。」




「はい。明日からは勉強もします。」




茜は内心で「絶対、しないわ。」とか思っているがそんなことを言ってしまえば没収されかねないのできちんと答える。




「なら良いけど。それと高校に受かったからって調子に乗らないこと、分かった?」




「はい。分かりました。」




「ところで茜。」




「なーに?お母さん。」




「あのゲームはそんなに面白いの?」




「面白いよ!!」




「お母さんも買おうかしら。」




「良いじゃん!!」




「でも、若い人がするやつでしょ?」




「ゲームに歳は関係無いと思うけど。まあ、始めるなら言ってよ。色々とサポートするから。」




「まだ2日目で何を言ってるのよ。」




「私は素早さ特化のステータス、能力値だからフィールドを見て回るなんざお安い御用なのさ。」




「そうなの。でも買うとしても夏になりそうよね。」




「そうだね。6月下旬から店頭販売だもんね。」




「そうね。しかも数量が限られてるし。買えない可能性の方が高いわよね。」




「そうだね。聞いた話だと2月にあった第2回予約販売で予約できた人たちは4月に届くらしいからさらに人気になるかもね。」




「まあ、良いわ。それはそれとして茜。気を付けなさいよ?ゲームの中で個人情報を口にするのは。どこの誰が聞いてるか分からないんだから。」




「それはちゃんと気を付けてるよ。」




「それだけは必ず守るのよ?」




「分かってるよ。ただでさえ私と葵は初期装備じゃなくて目立ってるのにそんなことしないよ。」




「!茜、初期装備じゃないってどうして?」




「ダンジョンで見つけた。私以外には誰も持ってない装備だよ。」




「課金したのかと思った。」




「ああ。あれ?『FSO』って課金アイテムあるのかな?」




「ないの?」




「分からない。ゲーム内通貨でしか買い物をしてないから。」




「課金もしないでね。絶対に。」




「私にとってはゲームにお金をつぎ込むよりも漫画やアニメグッズにつぎ込む方が有意義。」




「茜は...そうね。そういうタイプだったわね。」




「そういうタイプってどういうタイプだよ!!」




「私とは違う世界の住人ってこと。」




「まあ、確かに私とお母さんは違う世界に住んでるね。」




「でしょう?」




「私は読んだり、遊んだりする側でお母さんは書く側だもんね。」




「まあ、そこそこお金も貰えてるし、良いわよ?こっちの世界も。」




「売れなきゃ生き残れないから却下。ごちそうさまでした。」




「もう沸いてると思うからお風呂入っちゃって。」




「はーい。」




茜は言われた通りにお風呂に入る。




「あー、やっぱり極振りなんてするんじゃなかったー。レベルを15目前まで上げたのにアカウントを作り直すとか考えたくもないし、っていうか絶対にイヤだし、.....あー、もうちょっとちゃんと考えてステータス設定すれば良かったー。はあ。」




茜は昨日の自分に対して数えきれないほどのため息をついていた。






◇◇◇


ユアはアヤネがログアウトしてから30分後にログアウトしてレベルが13になっていた。




「よしっ、茜に追い付いてきたぞ。」




現実世界に帰ってきたばっかりの葵に母が「ご飯食べるよ~。」と伝えに来る。葵はすぐにテーブルについて席に座る。




「「「いただきます。」」」




「葵、あのゲーム面白い?」




「面白いよ、お兄ちゃん。」




「そっか~、そりゃそうだよな~、VRだし。俺も電話すれば良かった。」




「6月のいつからか忘れたけど店頭販売始まるんだって。」




「マジで!?」




「マジで。」




「買おうかな、俺。」




「まあ、お兄ちゃんが買って始めたとしても私には追い付けないだろうけど。」




「まだ2日だろ。そんなに威張るもんじゃねーぞ。」




「それがたとえ、レベルが10を越えていたとしてもかい?」




「!!もう、越したのか?」




「越したよ。」




Vサインをしながら兄に威張る葵。




「だけどさ、茜の方が上なんだよね。」




「それは茜ちゃんの方がPSが高くてステータスを振り分けるのが上手いからじゃねーの?」




「茜はAGI極振りだよ。」




「はっ!?極振りでお前よりもレベル高ぇの?エグいな、茜ちゃん。」




「だよね!!エグいよね!!」




「PSが人の領域にない、とかか?強い理由。」




「体の使い方って茜は言うけどイマイチ、ピンと来ないんだ。」




ここでこれまで黙っていた母親が口を挟む。




「体の使い方っていうのはどれだけ少ない力でどれだけ合理的でどれだけ効果的に動くかってことじゃない?無駄な動きを無くして、無駄な力を抜いて、最も効果が高くなるように動けるか、体を動かせるかってことだと思うよ?」




葵はピンと来た。そして思い返す。茜、いや、アヤネの戦いを。葵は確かに無駄な動きが少ないかもと思った。




「ありがとう、お母さん。」




「今ので分かったなら良かったわ。」




「俺は......わからん。」




「あ、それと勉強はちゃんとしておきなさいよ?受験勉強に使った問題集に余ってるページがあるでしょう?」




「はい。明日からします。」




「なら、よろしい。」




「ごちそうさまでした。」




「早くね!?」




「葵、お風呂入っちゃって良いよ。」




「分かった。」










◇◇◇


1週間後、運営から『FSO』の新情報が発表された。そのニュースを見た茜は葵に電話をかけた。




「もしもし、葵?」




『そうだけど、どうしたー?』




「『FSO』の新情報、見た?」




『発表されたの?』




「されたよ。3月30日に第2層に行くためのダンジョンが現れるんだって。場所は南の森みたい。その日に一本の木が巨大化してるから場所は分かりやすいって。」




『それで、ボスは?』




「そんな情報出したら対策を考えられるでしょうに。」




『それもそうだね。』




「4月に参入する第2回予約販売で買えた人たちと合わさって1層がギュウギュウにならないようにだね。」




『どんなところかな。』




「じゃあ、どのプレイヤーよりも早く行ってみる?」




『!!待ってました!』




「なら29日は寝ないでね。最速で行くならそのくらいはしないと。」




『分かった。29日はオールする勢いで、だね。』




「じゃあ、そういうことで。」




『はーい。楽しみだねっ!』




「そうだね!」




「第2層かぁ。どんなところだろ。プレイヤー最速で攻略して一番最初に景色を見ようかな。」




茜はまだ見ぬ新たなフィールドに思いを馳せていた。


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