第13話 お話からのレベル上げ

「じゃあ、2人は同じ高校に通うんだぁ。仲良いねぇ。」




アヤネが[サティ工房]に入ってきてからさらに話に花が咲いていた。




「サティさんはお仕事、何されてるんですか?」




「私ぃ?私はねぇ、先生。高校の理科教師してるの。だから名前も`サティ´なの。サイエンスティーチャーだから。」




「先生!?ホントに、先生ですか?」




「そうだよぉ。意外でしょ。よく言われるのよぉ。」




「喋り方が...なんか......バカっぽい?感じだから、その.....ごめんなさい。」




「良いのよぉ。周りの教師からもよく言われるの。喋り方がバカっぽいって。まあ、その学校は今年でおさらばでぇ、4月からは違う学校に異動なんだけどねぇ。」




「そうなんですね。お仕事、頑張ってくださいね。」




「うん、ありがとぉ。あなたたちも高校で勉強頑張ってねぇ。」




「「はい!!」」




「またねぇ。作って欲しいものができたらいつでも言ってねぇ。作るからぁ。あ、お金は貰うわよぉ。」




「はい、また来ます。ありがとうございました。」




「また来ます。ありがとうございました。」




カランカラン




「異動する高校であの子たちに会えたら良いなぁ。」




アヤネとユアが工房を出るとサティはそんな願いを洩らした。






◇◇◇


サティ工房を出た2人は一緒に行動することにした。




「アヤネ、サティさんが私たちの高校に来たらどうする?」




「え~?そうなったら嬉しいけど、そんな偶然起こる?」




「そっか、そうだよね。1万人だもんね。今、このゲームをしてる人。」




「あ、そういえば4月に届くんだって。第2回予約販売の購入者。」




「そうなんだ。じゃあ、もっと人が増えるんだね。楽しそう。」




「だからイベントとか欲しいよね。4月までに。それから人数が増えるから新しいフィールドとか。」




「あぁ、確かに。このままだと飽きちゃうもんね。」




「そう、まあ、まだ2日目だし、全然、大丈夫だけどね。」




「イベントかぁ。アヤネとは戦いたくないから対人戦じゃなければ良いんだけど。」




「対人戦だったらお手柔らかにね。」




「それはこっちの台詞だよ。でも新しいフイールドかぁ。どんなのかな?」




「うーん、海とか欲しいなぁ。」




「私は山が欲しいなぁ。」




「なんで山?登るの疲れない?」




「ゲーム内だからそこらへんは大丈夫!!」




「その理論でいくと海も大丈夫だよね?」




「海はダメ!!泳げないもん。それはゲームになっても変わらない。逆に海のどこが良いの?」




「リアルで海に行かなくても海に行った気分になれる。それから泳いだら気持ちいい。潮風も日焼けも気にしなくていい。最高じゃん。」




「日焼けは最高だけど、海は最悪。」




「ここらで泳ぎを克服しましょうよ、奥さん。」




「ご冗談はよしてください、奥様。」




突如として始まるアヤネとユアの2人だけの世界。それはいつだって唐突に終わりを告げる。




「じゃあ、楽しみが半分減るって思ったら克服できるんじゃない?」




「減らないもーん。元々、海を楽しみにしてないんだから。」




「私と比べたら?」




「それでも変わらない。」




「海に超強いスキルがあったら?」




「ぐっ、そ、それは、取りたい。けどそれなしで強くなってやる。」




「........これはもう手遅れだ。」








◇◇◇


2人がイベントや新しいフイールドについて想像を膨らませているとき、運営陣は頭を抱えていた。




「あー、予約販売せずに店頭販売を3月の頭にすれば良かった。そしたらイベントのタイミングも新フィールドの追加のタイミングもこんなに悩まなくて良かったのに。」




「そんなこと言っても仕方がありません。4月の前に第2層を追加する方向でいくように、と伝えられたでしょう?その調整をしますよ。」




愚痴を溢す男性に女性がため息混じりで仕事を促す。




「そうだな。このゲーム、注目度高いし、めちゃくちゃ人気出てるし、失敗したら国民が悲しむよな。」




「はあ、で?本音は?」




「失敗したら俺の首がとんで金がなくなるからな。頑張るしかねーだろ。」




「はいはい、そんなことだろうと思った。」




「2層の設定はだいたい出来てるんだろ?」




「プログラムもほとんど終わってるわよ。あとはバグの確認くらいよ。」




「いや~、頑張ったな~。もう一踏ん張りか。」




「ええ。とっとと終わらせてイベントの会議を始めなきゃ。」




「うひょー、一仕事終わったら一仕事増えるのか。忙しいな。」




「口を動かす暇があるなら手を動かしなさいよ。」




「動かしてますって。」




この2人はこの日、夜中までパソコンとにらめっこしていたのだった。








◇◇◇◇


アヤネとユアは[サティ工房]を出てから西の草原地帯に来て、寝転がって、ひなたぼっこをしていた。




「気持ちいいね~、アヤネ。」




「うん、たまに吹いてくる風がさらに心地良くさせるね~、ユア。」




「そうだね~。」




「「すぅぅ~、はぁぁ~。」」




2人は深呼吸をするとお互いを見る。




「クスッ、アハハハハハ。」




「何よ。」




「何でもない。ただ、面白くなっちゃった。」




「ユア、」




「なに?」




「モンスター来てる。」




「え?」




ユアは思わず、飛び起きるとそこにいたのは状態異常:睡眠を起こす粉を撒きながら飛ぶ蝶々型モンスターだった。




「これなら大丈夫だよ。ダメージ受けないし。何よりもカワイイ。」




「私は移動するよ。モンスターが来て、寝てる間にダメージ受けたくないから。」




そう言うとアヤネは寝転がったまま移動する。




「あ、アヤネ~、ズルい。待ってよ~。」




ユアは普通に走ってアヤネを追う。




50mほど移動するとまたひなたぼっこし始める。ユアもアヤネの隣に寝転ぶ。




「平和だね。ここは。」




「そうだね。」




平和とは言ってもそれは南の森を基準として、である。本来なら1時間もいれば戦闘が5回は起こるのだが起こってないのはアヤネが【忍術】をレベル3まで上げた時に手に入れた【気配感知】のおかげである。アヤネが、モンスターの気配を感知すると移動する、を繰り返すことで戦闘を回避しているのだ。




「そろそろモンスター倒す?」




「あと5分だけ。」




「アヤネ、それ、さっきも言ってたよ。ほら、行くよ。」




「仕方がない。行くか。」




「仕方がない、じゃないよ。最初の目的を思い出して。」




「え?ひなたぼっこじゃなかったっけ?」




「違うよ!!レベル上げだよ!!」




「そういえばそうだった気がしないこともない。」




「はぁ、しっかりしてよ。それでモンスター、いる?」




「うーんとね、この辺りにはいない。ちょっと移動すればいるんじゃない?」




「じゃあ、行くよ。」




「行ってらっしゃーい。」




「アーヤーネ?」




「はい、行きます!」




アヤネはユアのあのモード(わりとマジで腹が立ってるモード)はヤバいと知っているため跳ね起きた。




「よろしい、じゃあ、行こうか。」




「そう、だね。」




その後、3時間くらいモンスターを狩り続け、アヤネはレベル14と3分の2まで、ユアはレベル12と4分の3まで上がった。


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